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【番外編】アーサー殿下の愛は屋烏に及ぶ
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「街がすっかり元通りだ」
「ああ、全部アーサー殿下とジュリア様のおかげだな」
「間違いないな。あのお二人は本当に凄いよ」
あの地震から三ヶ月経過し、崩れた街はほぼ元通りになっていた。
「しかし、ジュリア様は可哀想なことだな」
「ああ……まだ外に出られないらしい」
「そうか。でも仕方がないさ」
街の民衆たちは助けてくれたジュリアのことを思い、心配そうな顔で王宮の方向を見つめていた。
♢♢♢
教会が崩落した時、ジュリアはその下敷きになった。
「ジュリアーーっ!」
いつも冷静なアーサーもこの時ばかりは取り乱し、必死に瓦礫をかき分けなんとか彼女を救い出した。
そこには気は失っているが、薄いバリアに守られた傷ひとつないジュリアの姿があった。
「ああ……良かった」
目を潤ませたアーサーは、大事に彼女を抱きかかえ王宮に戻った。
だが、ジュリアは目を覚さなかった。バリアに守られたまま、死んだように生きていた。
食事をとらないどころか、身動き一つしない。しかし、心臓はゆっくりと動いており体温も平熱より低いが一定の温度を保っていた。
「本当に彼女の身体に問題はないのか!」
普段穏やかなアーサーが珍しく声を荒げて、医師に詰め寄った。
「はい、問題はございません。しかし、私たちは魔法使いの方を診たことはないので……正直なんとも申し上げられません」
「そう……か。わかった。取り乱してすまなかった」
一向に目を覚まさないジュリアが心配で、アーサーは付きっきりで看病をした。
「ジュリア、君のおかげでたくさんの人が助かったんだ」
アーサーは優しく話しかけながら、ジュリアの髪を撫でた。
「お願いだから、早く目を覚まして欲しい。君がいない世界は色を失ったようだ」
見た目の変わらないジュリアに比べ、ろくに眠らず食事もほとんどとらないアーサーはだんだんとやつれていった。
「殿下。お辛いのはわかりますが……王太子妃殿下のためにも、もう少し食事を召し上がってください」
「わかっているが、食欲がない」
アーサーは毎回美味しそうにご飯を食べるジュリアの姿を思い出しながら、食事を半分以上残してカトラリーを置いた。
街の復興のため日中は休みなく仕事を続け、夜はジュリアのベッド横の椅子で座ったまま眠る。
側近のゲルトや臣下たちはアーサーの身体を心配したが、彼がジュリアの傍を離れることはなかった。
「ジュリア、そろそろ目を覚ましてくれないと困る」
アーサーの目から大粒の涙が零れ落ちた。王族は『人前で弱さをみせるな』と、幼少期からきつく言い聞かされてきたアーサーは物心がついた時から一滴も涙を流したことはなかった。
ジュリアの頬がアーサーの涙で濡れていく。それを見て、自分が泣いているのだと初めて気がついた。
「涙など……何年振りだろうか」
ポケットからジュリアに貰ったハンカチを出し、そっと頬を拭いた。
「私は君を失うことが何よりも恐ろしいんだ」
アーサーは死にそうになった時ですら、落ち着いていた。それなのに、今はジュリアという最愛の妻がこの世を去ったらと思うだけでガタガタと身体が震えてきた。
「愛してる」
ジュリアの唇にそっとキスをすると、彼女の瞼がゆっくりと開いた。
「ああ、全部アーサー殿下とジュリア様のおかげだな」
「間違いないな。あのお二人は本当に凄いよ」
あの地震から三ヶ月経過し、崩れた街はほぼ元通りになっていた。
「しかし、ジュリア様は可哀想なことだな」
「ああ……まだ外に出られないらしい」
「そうか。でも仕方がないさ」
街の民衆たちは助けてくれたジュリアのことを思い、心配そうな顔で王宮の方向を見つめていた。
♢♢♢
教会が崩落した時、ジュリアはその下敷きになった。
「ジュリアーーっ!」
いつも冷静なアーサーもこの時ばかりは取り乱し、必死に瓦礫をかき分けなんとか彼女を救い出した。
そこには気は失っているが、薄いバリアに守られた傷ひとつないジュリアの姿があった。
「ああ……良かった」
目を潤ませたアーサーは、大事に彼女を抱きかかえ王宮に戻った。
だが、ジュリアは目を覚さなかった。バリアに守られたまま、死んだように生きていた。
食事をとらないどころか、身動き一つしない。しかし、心臓はゆっくりと動いており体温も平熱より低いが一定の温度を保っていた。
「本当に彼女の身体に問題はないのか!」
普段穏やかなアーサーが珍しく声を荒げて、医師に詰め寄った。
「はい、問題はございません。しかし、私たちは魔法使いの方を診たことはないので……正直なんとも申し上げられません」
「そう……か。わかった。取り乱してすまなかった」
一向に目を覚まさないジュリアが心配で、アーサーは付きっきりで看病をした。
「ジュリア、君のおかげでたくさんの人が助かったんだ」
アーサーは優しく話しかけながら、ジュリアの髪を撫でた。
「お願いだから、早く目を覚まして欲しい。君がいない世界は色を失ったようだ」
見た目の変わらないジュリアに比べ、ろくに眠らず食事もほとんどとらないアーサーはだんだんとやつれていった。
「殿下。お辛いのはわかりますが……王太子妃殿下のためにも、もう少し食事を召し上がってください」
「わかっているが、食欲がない」
アーサーは毎回美味しそうにご飯を食べるジュリアの姿を思い出しながら、食事を半分以上残してカトラリーを置いた。
街の復興のため日中は休みなく仕事を続け、夜はジュリアのベッド横の椅子で座ったまま眠る。
側近のゲルトや臣下たちはアーサーの身体を心配したが、彼がジュリアの傍を離れることはなかった。
「ジュリア、そろそろ目を覚ましてくれないと困る」
アーサーの目から大粒の涙が零れ落ちた。王族は『人前で弱さをみせるな』と、幼少期からきつく言い聞かされてきたアーサーは物心がついた時から一滴も涙を流したことはなかった。
ジュリアの頬がアーサーの涙で濡れていく。それを見て、自分が泣いているのだと初めて気がついた。
「涙など……何年振りだろうか」
ポケットからジュリアに貰ったハンカチを出し、そっと頬を拭いた。
「私は君を失うことが何よりも恐ろしいんだ」
アーサーは死にそうになった時ですら、落ち着いていた。それなのに、今はジュリアという最愛の妻がこの世を去ったらと思うだけでガタガタと身体が震えてきた。
「愛してる」
ジュリアの唇にそっとキスをすると、彼女の瞼がゆっくりと開いた。
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