8 / 14
【番外編】アーサー殿下の愛は屋烏に及ぶ
1
しおりを挟む
★アーサーとジュリアの結婚後のお話です。
…………………
アーサーとジュリアは国をあげての盛大な結婚式を終え、二人は王宮で仲睦まじく暮らしていた。
「ジュリア、おはよう」
ベッドで片肘をついているアーサーは寝起きだとは思えない程整った顔でジュリアを覗き込み、眩しい程美しく微笑んだ。
「お、お、おはようございます」
何度一緒に朝を迎えても、この状況に慣れることはできず……ジュリアは毎回真っ赤に頬を染めてしまう。
「ふふ、いつになったら慣れてくれることやら」
アーサーは目を細めながら、ジュリアの髪を優しく撫でた後ちゅっとおでこにキスをした。
「うゔっ……一生慣れそうにありません」
ジュリアは顔をすっぽりと隠すようにシーツを上にあげた。
「照れている君も可愛いけれどね」
甘い声でそう囁き、シーツの上からジュリアを優しくぽんぽんと手で叩きながら慰めた。
「結婚翌日に比べたらましになったしね。あの日はジュリアと結婚したはずなのに、夢だったのかと思って驚いたんだから……くくっ……ははは」
アーサーはその日のことを思い出して、思わず吹き出した。
「もうっ! あれは忘れてくださいませ」
「ごめん、ごめん。あまりに衝撃的だったからさ」
ジュリアは子どものようにむっ、と唇を尖らせて拗ねる仕草を見せた。そんな彼女を、アーサーは蕩けるような瞳で見つめている。
結婚式を終えた夜、二人は正式な夫婦になった。ガチガチに緊張したジュリアを、アーサーの大きな愛で包み込みとても幸せな時間を過ごした。
そして、素晴らしい朝を迎えるはずだったのだが……アーサーの目が覚めると隣にジュリアの姿がなかった。
♢♢♢
「ジュリア? ジュリア、どこだ!?」
右を向いても左を向いてもジュリアはおらず、寝室中を必死に探し回ったがどこにも彼女は居なかった。
「まさか。全部私の夢だったんじゃないだろうな」
アーサーはジュリアが『最強の魔法使い』で『自分と結婚した』なんて全て都合の良い夢だったのではないかと不安になった。
だってアーサーが九死に一生を得た時はいつも、現実味を帯びていなかったのだから。
「……夢じゃありません」
蚊の鳴くような小さな愛おしい声を、アーサーが聞き逃すはずがなかった。
「ジュリア? そこにいるのか」
「……はい」
なんとジュリアは広いベッドの端に透明になって身を隠していた。
「どうして透明になっているんだい?」
「は、恥ずかしくて」
「はあ……居てくれて本当に良かった。お願いだから、姿を見せて欲しい」
アーサーの心配そうな顔を見て、透明だったジュリアはようやく姿を現した。
「ご、ごめんなさい」
「まさか消えているなんてね。ふふ、結婚初日からこんなサプライズがあるとは」
「どんな顔をしたらいいかわからなくてですね……その……すみません」
アーサーはそんなジュリアも可愛いらしいな、と思いぎゅっと強く抱き締めた。
「逃げられないように今日はずっとこうしていようかな」
「ええっ!」
「妻に逃げられた王太子だなんて格好がつかないからね。もう逃さないよ」
それからアーサーからキスの嵐を受け、時を止めて彼の腕からやっとの思いで抜け出して『ずるい』と彼から睨まれたことはつい最近の出来事だ。
♢♢♢
「最近は透明にならずに隣に居てくれるから、幸せだよ」
アーサーはにこり、と微笑み身体を起こした。王太子であるアーサーは毎日忙しい。二人でいつまでもゆっくりしているわけにはいかず、今日も分刻みのスケジュールが詰まっている。
「アーサー、無理だけはしないくださいね」
「ああ、ありがとう。ジュリアも今日は魔物の討伐だったね。私はどうしても一緒に行けないから、充分に気をつけて欲しい」
「全然平気です! 私の得意分野ですから任せてください」
ジュリアは得意げにそう言った。今日の彼女は、隣町の山奥で最近悪さをしているという魔物を退治する予定になっていた。
「君の力はわかってはいるが、心配くらいはさせてくれ」
「……はい。ありがとうございます」
アーサーはジュリアを抱き締めて、唇に甘いキスをした。
…………………
アーサーとジュリアは国をあげての盛大な結婚式を終え、二人は王宮で仲睦まじく暮らしていた。
「ジュリア、おはよう」
ベッドで片肘をついているアーサーは寝起きだとは思えない程整った顔でジュリアを覗き込み、眩しい程美しく微笑んだ。
「お、お、おはようございます」
何度一緒に朝を迎えても、この状況に慣れることはできず……ジュリアは毎回真っ赤に頬を染めてしまう。
「ふふ、いつになったら慣れてくれることやら」
アーサーは目を細めながら、ジュリアの髪を優しく撫でた後ちゅっとおでこにキスをした。
「うゔっ……一生慣れそうにありません」
ジュリアは顔をすっぽりと隠すようにシーツを上にあげた。
「照れている君も可愛いけれどね」
甘い声でそう囁き、シーツの上からジュリアを優しくぽんぽんと手で叩きながら慰めた。
「結婚翌日に比べたらましになったしね。あの日はジュリアと結婚したはずなのに、夢だったのかと思って驚いたんだから……くくっ……ははは」
アーサーはその日のことを思い出して、思わず吹き出した。
「もうっ! あれは忘れてくださいませ」
「ごめん、ごめん。あまりに衝撃的だったからさ」
ジュリアは子どものようにむっ、と唇を尖らせて拗ねる仕草を見せた。そんな彼女を、アーサーは蕩けるような瞳で見つめている。
結婚式を終えた夜、二人は正式な夫婦になった。ガチガチに緊張したジュリアを、アーサーの大きな愛で包み込みとても幸せな時間を過ごした。
そして、素晴らしい朝を迎えるはずだったのだが……アーサーの目が覚めると隣にジュリアの姿がなかった。
♢♢♢
「ジュリア? ジュリア、どこだ!?」
右を向いても左を向いてもジュリアはおらず、寝室中を必死に探し回ったがどこにも彼女は居なかった。
「まさか。全部私の夢だったんじゃないだろうな」
アーサーはジュリアが『最強の魔法使い』で『自分と結婚した』なんて全て都合の良い夢だったのではないかと不安になった。
だってアーサーが九死に一生を得た時はいつも、現実味を帯びていなかったのだから。
「……夢じゃありません」
蚊の鳴くような小さな愛おしい声を、アーサーが聞き逃すはずがなかった。
「ジュリア? そこにいるのか」
「……はい」
なんとジュリアは広いベッドの端に透明になって身を隠していた。
「どうして透明になっているんだい?」
「は、恥ずかしくて」
「はあ……居てくれて本当に良かった。お願いだから、姿を見せて欲しい」
アーサーの心配そうな顔を見て、透明だったジュリアはようやく姿を現した。
「ご、ごめんなさい」
「まさか消えているなんてね。ふふ、結婚初日からこんなサプライズがあるとは」
「どんな顔をしたらいいかわからなくてですね……その……すみません」
アーサーはそんなジュリアも可愛いらしいな、と思いぎゅっと強く抱き締めた。
「逃げられないように今日はずっとこうしていようかな」
「ええっ!」
「妻に逃げられた王太子だなんて格好がつかないからね。もう逃さないよ」
それからアーサーからキスの嵐を受け、時を止めて彼の腕からやっとの思いで抜け出して『ずるい』と彼から睨まれたことはつい最近の出来事だ。
♢♢♢
「最近は透明にならずに隣に居てくれるから、幸せだよ」
アーサーはにこり、と微笑み身体を起こした。王太子であるアーサーは毎日忙しい。二人でいつまでもゆっくりしているわけにはいかず、今日も分刻みのスケジュールが詰まっている。
「アーサー、無理だけはしないくださいね」
「ああ、ありがとう。ジュリアも今日は魔物の討伐だったね。私はどうしても一緒に行けないから、充分に気をつけて欲しい」
「全然平気です! 私の得意分野ですから任せてください」
ジュリアは得意げにそう言った。今日の彼女は、隣町の山奥で最近悪さをしているという魔物を退治する予定になっていた。
「君の力はわかってはいるが、心配くらいはさせてくれ」
「……はい。ありがとうございます」
アーサーはジュリアを抱き締めて、唇に甘いキスをした。
20
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。


【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。

婚約破棄を目指して
haruhana
恋愛
伯爵令嬢リーナには、幼い頃に親同士が決めた婚約者アレンがいる。美しいアレンはシスコンなのか?と疑わしいほど溺愛する血の繋がらない妹エリーヌがいて、いつもデートを邪魔され、どっちが婚約者なんだかと思うほどのイチャイチャぶりに、私の立場って一体?と悩み、婚約破棄したいなぁと思い始めるのでした。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。

麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる