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7 偽りの婚約者
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数日後に、新しい靴が届いた。それを足に入れるとピッタリで、本当に何時間レッスンをしても痛みはなかった。
「この靴すごいわ!ジルヴェスター、ありがとう」
あまりの快適さに感動して素直にお礼を言うと、彼は目を細めて優しく笑った。
「どれくらい上達したか試すぞ」
差し出された彼の手を取ると、グッとホールドされてかなり身体が密着する。先生なら平気だったのに、なんだか急に恥ずかしくなってきた。
「お前は何を習ったんだ?腰を引くな。私にすべて身を委ねろ」
そう言われて、彼とピッタリとくっつく。私ったら何緊張してるのよ。先生の時と同じよ、同じ!私は大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。
「そうだ……なんだ、割と上手いじゃないか」
「運動神経はいいの」
一度覚悟を決めて彼に体を預けると、驚くほど踊りやすかった。たぶんジルヴェスターがとてつもなくダンスが上手なんだと思う。
「これなら大丈夫そうだな。今度王家主催の舞踏会があるからついて来てくれ」
「え!?私も行くの?」
「当たり前だろう?私に婚約者が出来たことはもう噂になっているが、本当なのか疑っている奴等が多いらしくてな。みんなに見せつけるためには、舞踏会に行くのが手っ取り早い。女に纏わりつかれるのも終わりにしたいからな」
うわー……それって私は色んな女性から睨まれたり、意地悪されたりする役ってことよね。考えただけで気分が重たい。
「期待してるぞ。愛する婚約者殿」
ジルヴェスターは嫌そうな顔の私を見て、楽しそうにくっくっくと笑っていた。しかし、何かを思い出したようにすぐに表情を引き締めた。
「……その時は、ケントも来るはずだ。君の話が本当なら顔を合わせない方がいいだろう。その日は私の傍を離れないように」
ケントの名前を聞いて私は身体がガタガタ震えてきた。私を突き落として、美しいと笑ったあの男の気味の悪い顔を思い出してしまったからだ。
「大丈夫か?」
「ごめん……大丈夫」
「私がいる。何も怖がることはない」
ジルヴェスターは私の手を握り、真面目な顔でそう言ってくれた。
「……ありがとう」
「私は自分がした契約は守る。舞踏会は今週末だ。ドレスはこっちで用意しておく」
「わかったわ」
契約……そう、契約だものね。私を守ってくれるのは優しさからではない。彼は偽物の婚約者である私がいなくなったら困るのだから。
私もここでお世話になっている以上は、役に立たなくてはいけない。それに何があっても私は生き残るんだ!と本来の目的を思い出した。
♢♢♢
舞踏会当日。私は今信じられないくらい豪華なドレスを身に纏い、キラキラした宝石を耳や首につけている。美しい青で統一された装いは、ジルヴェスターの瞳の色を模しているらしい。つまりはこれも『ラブラブなカップル』の偽装工作だ。
「こ……これ、いくらするの?落としたらどうしよう」
私が青ざめていると、ニーナがくすくすと笑い出した。
「ふふ、落としたら旦那様に新しいのをおねだりになればよろしいですわ」
「……私達そういう関係じゃないから」
そういう関係じゃないし、そういう問題でもない。これだからお金持ちの家の人の感覚って理解できない。
「アンナ様は慎ましいですね。旦那様がお金を好きに使っても良いと仰ったのに、アンナ様は何も買われていないのでしょう?何か欲しいものはございませんか?」
ジルヴェスターは婚約者になる代わりに、自由なお金(……しかも大金らしい)を渡してくれているらしいが使い道がないのだ。
だってこの家には美味しいご飯やお菓子、綺麗な服があって生活に何も困らないのだから。
「別に困らないしね。ね、ニーナ!あなたは欲しいものないの?私が買ったことにして、あなたにあげるわ」
私がそう言うと、ニーナは困ったように微笑んだ。
「私は、旦那様とアンナ様のお子様が生まれることが一番の望みですわ。そしてそのお世話をさせていただきたいです」
お子様……おこさま……オコサマ!?ニーナはジルヴェスターと私が本物の夫婦になって欲しいってこと?
一瞬彼と口付けをする想像しかけて、私はぶんぶんと左右に首を勢いよく振った。
「二、ニーナっ!冗談はやめてよ!!」
「本気なんですけどね。いえ、使用人の分際で差し出がましいことを申しました」
この家の使用人達は、何故かみんなあの冷徹なジルヴェスターを慕っている。だからこそ本当の妻、本当の後継が欲しいのだろう。
「私との契約中でも、彼に好きな人が見つかったら別れるから。きっと肩書きだけじゃなく、本気でジルヴェスターのこと好きな女性だっているよ」
「別れるなど!そんなこと絶対にいけませんわっ!」
「ジルヴェスターが別れたいって言ったらよ。まあ、彼に好きな人ができなくてもそのうち出て行けとか言われそうだけどね」
私はケラケラと笑いながらそう伝えると、普段穏やかなニーナが「絶対にそんなことは言われません!」と大きな声を出したので少し驚いた。
「旦那様はアンナ様と出逢われてから、明るくなられました。使用人達一同、本当に感謝しております」
「明るく……あれで?」
信じられない。あれが明るいなら、ジルヴェスターは今までどれだけ暗かったのか。
「ええ、毎日楽しそうで私は嬉しいですわ。さあ、旦那様がお待ちです。行きましょう」
彼女に促されて玄関に行くと、普段より何倍も光り輝いているジルヴェスターが立っていた。物語から飛び出できた王子様としか言いようがないその完璧な佇まいに、つい感心してしまった。白いジャケットの中は黒いシャツを身につけている。
――こんなに白いジャケットが似合う人初めて見た。
好みじゃなくても、これは胸にくるものがあるわね。彼は私をジッと見つめてきた。そのあまりに美しい姿に、自然と胸が高鳴るのは仕方ないことだろう。
「化粧で上手く化けたな。さすが我が家の侍女は優秀だ。ほら、さっさと行くぞ」
とっても素敵な褒め言葉をいただき、一瞬でドキドキは消え去った。そう、この男はそういう奴だった。
「……はーい」
適当な返事をして、彼の背中に向けてあっかんべーと舌を出した。それを見ていた使用人達は、困ったように眉を下げながら「行ってらっしゃいませ」と送り出してくれた。
馬車に乗り込むとジルヴェスターは「今夜の私達は仲の良い恋人同士を演じねばならない」と言い出した。
「はいはい、わかってるって」
「不本意だが、私が君に一目惚れをしたことにする。シュバルツを助けてくれた際に怪我をしたアンナを、我が家で治療していく中で君も私に惹かれ……お互い運命を感じたので婚約したという設定だ。そうだな、君は遠い国から戦火を逃れてここまで逃げてきた天涯孤独の身だったことにしよう」
怪我なんかしていないけどね。戦火を逃れてっていうより、ケントのストーカーから逃げているだけだけど。大嘘の中にちょこっとだけ真実を混ぜるあたりが、この男の賢いところだ。全部嘘だとボロが出る。
「何が不本意よ!」
「お前が私に惚れたという設定にすると、入り込む隙間があると思う女が出てきて後々面倒なのでな。我慢してやる」
あまりにむかつくので、私はジルヴェスターのお腹にパンチをお見舞いした。したのだが……鍛え上げられた腹筋は硬くて、こちらの手の方が痛い。
――この男、細身に見えるけど筋肉質なのね。
そりゃそうか。騎士団長をしているくらいだものね。でもなんか悔しい。私は少し赤くなった手を押さえて、ギロッと彼を睨みつけた。
「やはりお前は面白いな。困ったことに私の愛しい婚約者は、とんだじゃじゃ馬のようだ」
彼はニッと笑って私の手を取り、赤くなった箇所にチュッとキスをした。
「うわぁっ!何すんのよ!!」
私は真っ赤になって慌てて手を引っ込めて、キスされたところをゴシゴシと拭いた。
「くっくっく……変な顔だな。しかしこれくらいで動揺してどうする?仲の良い振りをしてもらわねば困るのだが」
「……っ!」
何よ、この男!女嫌いなんて言いながら、手慣れているではないか。しかも性格の悪いこの男は、困っている私を揶揄っているのだろう。
「アン、今夜は楽しもう」
ジルヴェスターは私の頬をするりと撫でて、甘い声を出しながら美しい顔をキスができるほど近くに寄せてきた。
「は、離れなさいよ。しかもアンって何!」
「恋人同士は愛称で呼び合うらしい。私のことはジルと呼べ」
「はぁ!?」
「さあ、早くこの可愛い唇で私の名を呼んでみてくれ」
ツンツンと私の唇を優しく指で触れ、歯の浮くような言葉を言うジルヴェスターに私は全身真っ赤になった。
気障な男は本来嫌いなはずなのに、この男は本物の王子様のように輝いていて恥ずかしい台詞も似合っているのが困ったものだ。
固まった私を見て、彼は「これくらいの演技で照れるとは初心だな。きちんと契約分働け」と冷たい顔をして鼻で笑い身体を離した。
いつものジルヴェスターに戻ったことで、私も正気に戻った。
「ば、馬鹿にしないでよ!これくらい余裕よ。あんたこそちゃんと恋人っぽくしなさいよ!!」
「そうか。お手並み拝見だな」
良かった……いつも通りだ。普段の嫌なジルヴェスターの方が接しやすい。私はこの恋人役をやり遂げると、気合を入れ直した。
「この靴すごいわ!ジルヴェスター、ありがとう」
あまりの快適さに感動して素直にお礼を言うと、彼は目を細めて優しく笑った。
「どれくらい上達したか試すぞ」
差し出された彼の手を取ると、グッとホールドされてかなり身体が密着する。先生なら平気だったのに、なんだか急に恥ずかしくなってきた。
「お前は何を習ったんだ?腰を引くな。私にすべて身を委ねろ」
そう言われて、彼とピッタリとくっつく。私ったら何緊張してるのよ。先生の時と同じよ、同じ!私は大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。
「そうだ……なんだ、割と上手いじゃないか」
「運動神経はいいの」
一度覚悟を決めて彼に体を預けると、驚くほど踊りやすかった。たぶんジルヴェスターがとてつもなくダンスが上手なんだと思う。
「これなら大丈夫そうだな。今度王家主催の舞踏会があるからついて来てくれ」
「え!?私も行くの?」
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うわー……それって私は色んな女性から睨まれたり、意地悪されたりする役ってことよね。考えただけで気分が重たい。
「期待してるぞ。愛する婚約者殿」
ジルヴェスターは嫌そうな顔の私を見て、楽しそうにくっくっくと笑っていた。しかし、何かを思い出したようにすぐに表情を引き締めた。
「……その時は、ケントも来るはずだ。君の話が本当なら顔を合わせない方がいいだろう。その日は私の傍を離れないように」
ケントの名前を聞いて私は身体がガタガタ震えてきた。私を突き落として、美しいと笑ったあの男の気味の悪い顔を思い出してしまったからだ。
「大丈夫か?」
「ごめん……大丈夫」
「私がいる。何も怖がることはない」
ジルヴェスターは私の手を握り、真面目な顔でそう言ってくれた。
「……ありがとう」
「私は自分がした契約は守る。舞踏会は今週末だ。ドレスはこっちで用意しておく」
「わかったわ」
契約……そう、契約だものね。私を守ってくれるのは優しさからではない。彼は偽物の婚約者である私がいなくなったら困るのだから。
私もここでお世話になっている以上は、役に立たなくてはいけない。それに何があっても私は生き残るんだ!と本来の目的を思い出した。
♢♢♢
舞踏会当日。私は今信じられないくらい豪華なドレスを身に纏い、キラキラした宝石を耳や首につけている。美しい青で統一された装いは、ジルヴェスターの瞳の色を模しているらしい。つまりはこれも『ラブラブなカップル』の偽装工作だ。
「こ……これ、いくらするの?落としたらどうしよう」
私が青ざめていると、ニーナがくすくすと笑い出した。
「ふふ、落としたら旦那様に新しいのをおねだりになればよろしいですわ」
「……私達そういう関係じゃないから」
そういう関係じゃないし、そういう問題でもない。これだからお金持ちの家の人の感覚って理解できない。
「アンナ様は慎ましいですね。旦那様がお金を好きに使っても良いと仰ったのに、アンナ様は何も買われていないのでしょう?何か欲しいものはございませんか?」
ジルヴェスターは婚約者になる代わりに、自由なお金(……しかも大金らしい)を渡してくれているらしいが使い道がないのだ。
だってこの家には美味しいご飯やお菓子、綺麗な服があって生活に何も困らないのだから。
「別に困らないしね。ね、ニーナ!あなたは欲しいものないの?私が買ったことにして、あなたにあげるわ」
私がそう言うと、ニーナは困ったように微笑んだ。
「私は、旦那様とアンナ様のお子様が生まれることが一番の望みですわ。そしてそのお世話をさせていただきたいです」
お子様……おこさま……オコサマ!?ニーナはジルヴェスターと私が本物の夫婦になって欲しいってこと?
一瞬彼と口付けをする想像しかけて、私はぶんぶんと左右に首を勢いよく振った。
「二、ニーナっ!冗談はやめてよ!!」
「本気なんですけどね。いえ、使用人の分際で差し出がましいことを申しました」
この家の使用人達は、何故かみんなあの冷徹なジルヴェスターを慕っている。だからこそ本当の妻、本当の後継が欲しいのだろう。
「私との契約中でも、彼に好きな人が見つかったら別れるから。きっと肩書きだけじゃなく、本気でジルヴェスターのこと好きな女性だっているよ」
「別れるなど!そんなこと絶対にいけませんわっ!」
「ジルヴェスターが別れたいって言ったらよ。まあ、彼に好きな人ができなくてもそのうち出て行けとか言われそうだけどね」
私はケラケラと笑いながらそう伝えると、普段穏やかなニーナが「絶対にそんなことは言われません!」と大きな声を出したので少し驚いた。
「旦那様はアンナ様と出逢われてから、明るくなられました。使用人達一同、本当に感謝しております」
「明るく……あれで?」
信じられない。あれが明るいなら、ジルヴェスターは今までどれだけ暗かったのか。
「ええ、毎日楽しそうで私は嬉しいですわ。さあ、旦那様がお待ちです。行きましょう」
彼女に促されて玄関に行くと、普段より何倍も光り輝いているジルヴェスターが立っていた。物語から飛び出できた王子様としか言いようがないその完璧な佇まいに、つい感心してしまった。白いジャケットの中は黒いシャツを身につけている。
――こんなに白いジャケットが似合う人初めて見た。
好みじゃなくても、これは胸にくるものがあるわね。彼は私をジッと見つめてきた。そのあまりに美しい姿に、自然と胸が高鳴るのは仕方ないことだろう。
「化粧で上手く化けたな。さすが我が家の侍女は優秀だ。ほら、さっさと行くぞ」
とっても素敵な褒め言葉をいただき、一瞬でドキドキは消え去った。そう、この男はそういう奴だった。
「……はーい」
適当な返事をして、彼の背中に向けてあっかんべーと舌を出した。それを見ていた使用人達は、困ったように眉を下げながら「行ってらっしゃいませ」と送り出してくれた。
馬車に乗り込むとジルヴェスターは「今夜の私達は仲の良い恋人同士を演じねばならない」と言い出した。
「はいはい、わかってるって」
「不本意だが、私が君に一目惚れをしたことにする。シュバルツを助けてくれた際に怪我をしたアンナを、我が家で治療していく中で君も私に惹かれ……お互い運命を感じたので婚約したという設定だ。そうだな、君は遠い国から戦火を逃れてここまで逃げてきた天涯孤独の身だったことにしよう」
怪我なんかしていないけどね。戦火を逃れてっていうより、ケントのストーカーから逃げているだけだけど。大嘘の中にちょこっとだけ真実を混ぜるあたりが、この男の賢いところだ。全部嘘だとボロが出る。
「何が不本意よ!」
「お前が私に惚れたという設定にすると、入り込む隙間があると思う女が出てきて後々面倒なのでな。我慢してやる」
あまりにむかつくので、私はジルヴェスターのお腹にパンチをお見舞いした。したのだが……鍛え上げられた腹筋は硬くて、こちらの手の方が痛い。
――この男、細身に見えるけど筋肉質なのね。
そりゃそうか。騎士団長をしているくらいだものね。でもなんか悔しい。私は少し赤くなった手を押さえて、ギロッと彼を睨みつけた。
「やはりお前は面白いな。困ったことに私の愛しい婚約者は、とんだじゃじゃ馬のようだ」
彼はニッと笑って私の手を取り、赤くなった箇所にチュッとキスをした。
「うわぁっ!何すんのよ!!」
私は真っ赤になって慌てて手を引っ込めて、キスされたところをゴシゴシと拭いた。
「くっくっく……変な顔だな。しかしこれくらいで動揺してどうする?仲の良い振りをしてもらわねば困るのだが」
「……っ!」
何よ、この男!女嫌いなんて言いながら、手慣れているではないか。しかも性格の悪いこの男は、困っている私を揶揄っているのだろう。
「アン、今夜は楽しもう」
ジルヴェスターは私の頬をするりと撫でて、甘い声を出しながら美しい顔をキスができるほど近くに寄せてきた。
「は、離れなさいよ。しかもアンって何!」
「恋人同士は愛称で呼び合うらしい。私のことはジルと呼べ」
「はぁ!?」
「さあ、早くこの可愛い唇で私の名を呼んでみてくれ」
ツンツンと私の唇を優しく指で触れ、歯の浮くような言葉を言うジルヴェスターに私は全身真っ赤になった。
気障な男は本来嫌いなはずなのに、この男は本物の王子様のように輝いていて恥ずかしい台詞も似合っているのが困ったものだ。
固まった私を見て、彼は「これくらいの演技で照れるとは初心だな。きちんと契約分働け」と冷たい顔をして鼻で笑い身体を離した。
いつものジルヴェスターに戻ったことで、私も正気に戻った。
「ば、馬鹿にしないでよ!これくらい余裕よ。あんたこそちゃんと恋人っぽくしなさいよ!!」
「そうか。お手並み拝見だな」
良かった……いつも通りだ。普段の嫌なジルヴェスターの方が接しやすい。私はこの恋人役をやり遂げると、気合を入れ直した。
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