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本編
10 趣味
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カーテンからの明るい光が眩しくて、ふと目が覚めた。なんだか身体がずしっと重たくて、まだまだ眠たい。あたたかいお布団で、このままゆっくり眠りたいなと寝返りをうった。
ん? なんか硬い物が隣にある。私の隣はふわふわのうさぎさんのぬいぐるみ達のはずなのに。
寝ぼけたままぺたぺたとその硬い物を触っていると、私の手をそっと掴まれた。
「クリスティン、朝から積極的だね」
そのセクシーな低い声に、一瞬で目が覚めた。パチリと目を開くと、半裸のエルベルト様が片肘をついて私を見つめていた。
「きゃあっ!」
驚いて急いで彼から身体を離した。そうだ。私は……私達は昨日結ばれて本当の夫婦になったんだった。そして、なんと私は彼の鍛え上げられた分厚い胸板をぺたぺたと触っていたのだ。
「はは、おはよう。身体は痛くないか?」
「お……おはようございます。少し……重たいです……」
「そうか、すまない。今日は二人でゆっくりしよう」
エルベルト様はちゅっと、私の頬に口付けた。
「あの、お仕事は?」
「部下に任せた。三日間完全に休みだ。君とずっと一緒にいる」
そう言って、私を抱き締めた。忙しいのに、彼はお休みをとってくれたのだと嬉しくなった。
「明日はどこか出掛けようか?」
「いいのですか?」
「ああ、もちろん。ずっと君とデートしたいと思っていた」
「エルベルト様、ありがとうございます」
私がニコリと微笑むと、彼も嬉しそうに微笑んだ後に……急に真剣な顔になった。
「君にお願いがあるんだ」
「なんですか?」
「……俺のこと愛称で呼んで欲しい。そして君のこともクリスと呼びたい」
愛称で呼ぶ。それはとても親しい関係の証だ。
「どうぞクリスと呼んでくださいませ。しかし、あなたを愛称でお呼びするのは不敬ではないかしら?」
「そんなことはない。是非エルと呼んで欲しい」
「エル……様」
「様なんていらない」
「じゃあ……エ、エル?」
年上の旦那様を愛称で敬称もなしで呼ぶなんて、少しくすぐったい気がする。彼は私がエルと呼ぶと、ベッドに「ああっ!」と奇声をあげながらうずくまった。
「どうしたんですか!?」
「いや、嬉しすぎて困っている」
顔を真っ赤にしながら、ガンガンと頭を打ち付けているのでちょっと心配になる。
「エル? 危ないのでやめてください。あの、これからは何度でも呼びますから」
私が彼の頭をよしよしと撫でるとガバリと起き上がり、潤んだ目でじーっと私を見つめた。
「エル?」
「……俺の妻が可愛すぎて辛い」
「は?」
「よしよしとか幸せ過ぎる。好きだ、大好きだ。ずっと一緒ににいたい」
ガバリと抱きつかれ頬をすりすりされ、ちゅっちゅっちゅーとキスの嵐を受けた。なんだか大型犬に懐かれた気分だ。
そして彼の私を好きっぷりは凄まじいもので、想像以上だった。彼の部屋からは隠してあった私へのプレゼントが山程出てきて驚いた。
ドレスや宝石、ティーカップに文房具にぬいぐるみ……そしてなんだかセクシーな夜着も。とてもセンスの良い物から、少し謎なセンスの物までいろいろだ。
「何ですか? これ」
私はプレゼントだらけのクローゼットを見て叫んだ。そう、執事のオリバーから『もう入れるところがないので、奥様どうにかしてください』と泣きつかれたのだ。秘密のクローゼットの存在をバラされたエルはかなり焦っていた。
「君を好きになってから、贈りたいものを勝手に買っていて……その……俺の趣味というか」
「趣味!?」
「ああ。だからその……今の君には合わないものもある」
彼は気まずそうに下を向いていた。確かに、中には少女趣味で今の私には似合わない物もある。結婚した十八歳の女には……可愛すぎるのだ。それらはきっと彼が私に出逢った当時に買ったもの。
私が最初にいただいたぬいぐるみ達は、本当は十五歳の時に渡したかった物だったらしい。なるほど、納得だ。
「……全部出してください」
「え?」
「出してください! 勿体ない。使えるものは全部私が使います。そして使えないものは処分です」
「え、使ってくれるのか?」
彼は嬉しそうにパァッと喜んだ。こんな沢山のプレゼントは嫌がられると思い言い出せなかったらしい。しかし私はニヤけた顔の彼をギロリと睨む。エルの妻としてしっかりせねば。
「今後一切、勝手に私の物を買わないでください!」
「それは嫌だ。そんな……俺の趣味が無くなる」
エルは哀しそうな顔で、私に縋り付いている。しかし、私は鬼になった。
「ダメです」
「どうして? せっかく堂々と君にプレゼントを贈れるようになったのに」
「私は沢山の贈り物なんていりません。私にはあなたがいればいいのですから」
彼は私を見つめたままフリーズした。あれ?どうしたのだろうか。おーい、と手を振ってみるが反応がない。
「旦那様、お気を確かに」
オリバーが耳元でそう呟くと、彼はハッと正気に戻った。顔が真っ赤になり、ワナワナと震えている。
「ク、クリスがそんな嬉しいことを。俺は今……幸せすぎて死にそうだ」
彼はまたちゅっちゅ、と私の頬にキスをしている。私は抵抗しても離してもらえないとわかっているので、なされるがままだ。
「でも買いたい。愛する君が可愛い服を着たり、俺の贈った物を使っている姿を見たい。そのために仕事をしてると言っても過言ではない」
これは言うことを聞かない気だわ。うーん、どうしようかと首を捻っていい案はないか考える。
「そうだ! では、一緒に買いに行きましょう。それならデートにもなりますよ」
「デート……? それはいいな。クリスと出掛けられて、プレゼントもできて一石二鳥だ。君は天才だ」
とりあえずこれ以上勝手に贈り物が増えないようにできたわ。よかった。
そしてとりあえず使えそうな物を整理していると、厳重に包んだ袋を見つけた。
これは何なのだろうか?こんなに隠してあるということは、きっとエルが見られたくないものだ。見ない方が良いと思うが……好奇心が勝った。
ニヤリ。十歳年上の旦那様が隠し持っているもの……怖いけど単純に興味がある。彼は気が付いていないしちょっとだけ。すぐに戻せばいいし。
――そして、開けた瞬間後悔した。
やはり旦那様の物を勝手に見てはいけないということがわかった。私はその袋を覗いたまま、固まっていた。
ん? なんか硬い物が隣にある。私の隣はふわふわのうさぎさんのぬいぐるみ達のはずなのに。
寝ぼけたままぺたぺたとその硬い物を触っていると、私の手をそっと掴まれた。
「クリスティン、朝から積極的だね」
そのセクシーな低い声に、一瞬で目が覚めた。パチリと目を開くと、半裸のエルベルト様が片肘をついて私を見つめていた。
「きゃあっ!」
驚いて急いで彼から身体を離した。そうだ。私は……私達は昨日結ばれて本当の夫婦になったんだった。そして、なんと私は彼の鍛え上げられた分厚い胸板をぺたぺたと触っていたのだ。
「はは、おはよう。身体は痛くないか?」
「お……おはようございます。少し……重たいです……」
「そうか、すまない。今日は二人でゆっくりしよう」
エルベルト様はちゅっと、私の頬に口付けた。
「あの、お仕事は?」
「部下に任せた。三日間完全に休みだ。君とずっと一緒にいる」
そう言って、私を抱き締めた。忙しいのに、彼はお休みをとってくれたのだと嬉しくなった。
「明日はどこか出掛けようか?」
「いいのですか?」
「ああ、もちろん。ずっと君とデートしたいと思っていた」
「エルベルト様、ありがとうございます」
私がニコリと微笑むと、彼も嬉しそうに微笑んだ後に……急に真剣な顔になった。
「君にお願いがあるんだ」
「なんですか?」
「……俺のこと愛称で呼んで欲しい。そして君のこともクリスと呼びたい」
愛称で呼ぶ。それはとても親しい関係の証だ。
「どうぞクリスと呼んでくださいませ。しかし、あなたを愛称でお呼びするのは不敬ではないかしら?」
「そんなことはない。是非エルと呼んで欲しい」
「エル……様」
「様なんていらない」
「じゃあ……エ、エル?」
年上の旦那様を愛称で敬称もなしで呼ぶなんて、少しくすぐったい気がする。彼は私がエルと呼ぶと、ベッドに「ああっ!」と奇声をあげながらうずくまった。
「どうしたんですか!?」
「いや、嬉しすぎて困っている」
顔を真っ赤にしながら、ガンガンと頭を打ち付けているのでちょっと心配になる。
「エル? 危ないのでやめてください。あの、これからは何度でも呼びますから」
私が彼の頭をよしよしと撫でるとガバリと起き上がり、潤んだ目でじーっと私を見つめた。
「エル?」
「……俺の妻が可愛すぎて辛い」
「は?」
「よしよしとか幸せ過ぎる。好きだ、大好きだ。ずっと一緒ににいたい」
ガバリと抱きつかれ頬をすりすりされ、ちゅっちゅっちゅーとキスの嵐を受けた。なんだか大型犬に懐かれた気分だ。
そして彼の私を好きっぷりは凄まじいもので、想像以上だった。彼の部屋からは隠してあった私へのプレゼントが山程出てきて驚いた。
ドレスや宝石、ティーカップに文房具にぬいぐるみ……そしてなんだかセクシーな夜着も。とてもセンスの良い物から、少し謎なセンスの物までいろいろだ。
「何ですか? これ」
私はプレゼントだらけのクローゼットを見て叫んだ。そう、執事のオリバーから『もう入れるところがないので、奥様どうにかしてください』と泣きつかれたのだ。秘密のクローゼットの存在をバラされたエルはかなり焦っていた。
「君を好きになってから、贈りたいものを勝手に買っていて……その……俺の趣味というか」
「趣味!?」
「ああ。だからその……今の君には合わないものもある」
彼は気まずそうに下を向いていた。確かに、中には少女趣味で今の私には似合わない物もある。結婚した十八歳の女には……可愛すぎるのだ。それらはきっと彼が私に出逢った当時に買ったもの。
私が最初にいただいたぬいぐるみ達は、本当は十五歳の時に渡したかった物だったらしい。なるほど、納得だ。
「……全部出してください」
「え?」
「出してください! 勿体ない。使えるものは全部私が使います。そして使えないものは処分です」
「え、使ってくれるのか?」
彼は嬉しそうにパァッと喜んだ。こんな沢山のプレゼントは嫌がられると思い言い出せなかったらしい。しかし私はニヤけた顔の彼をギロリと睨む。エルの妻としてしっかりせねば。
「今後一切、勝手に私の物を買わないでください!」
「それは嫌だ。そんな……俺の趣味が無くなる」
エルは哀しそうな顔で、私に縋り付いている。しかし、私は鬼になった。
「ダメです」
「どうして? せっかく堂々と君にプレゼントを贈れるようになったのに」
「私は沢山の贈り物なんていりません。私にはあなたがいればいいのですから」
彼は私を見つめたままフリーズした。あれ?どうしたのだろうか。おーい、と手を振ってみるが反応がない。
「旦那様、お気を確かに」
オリバーが耳元でそう呟くと、彼はハッと正気に戻った。顔が真っ赤になり、ワナワナと震えている。
「ク、クリスがそんな嬉しいことを。俺は今……幸せすぎて死にそうだ」
彼はまたちゅっちゅ、と私の頬にキスをしている。私は抵抗しても離してもらえないとわかっているので、なされるがままだ。
「でも買いたい。愛する君が可愛い服を着たり、俺の贈った物を使っている姿を見たい。そのために仕事をしてると言っても過言ではない」
これは言うことを聞かない気だわ。うーん、どうしようかと首を捻っていい案はないか考える。
「そうだ! では、一緒に買いに行きましょう。それならデートにもなりますよ」
「デート……? それはいいな。クリスと出掛けられて、プレゼントもできて一石二鳥だ。君は天才だ」
とりあえずこれ以上勝手に贈り物が増えないようにできたわ。よかった。
そしてとりあえず使えそうな物を整理していると、厳重に包んだ袋を見つけた。
これは何なのだろうか?こんなに隠してあるということは、きっとエルが見られたくないものだ。見ない方が良いと思うが……好奇心が勝った。
ニヤリ。十歳年上の旦那様が隠し持っているもの……怖いけど単純に興味がある。彼は気が付いていないしちょっとだけ。すぐに戻せばいいし。
――そして、開けた瞬間後悔した。
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