上 下
9 / 32
本編

9 ※ひとつに②

しおりを挟む
 楽しかった宴は終わり、私は夫婦の寝室にいる。身体を磨き上げ、髪には香油を塗り可愛い夜着も着たので完璧だ。

 扉がノックされ、少し緊張したエルベルト様の声が聞こえてきた。

「……俺だ。入ってもいいか?」

 ――来た! その声に身体が跳ねる程驚いたが、なるべく冷静を取り繕った。

「は、はい」

 この状況は何もなかった初夜と全く同じだと気が付いて、私はまたガチガチに緊張してしまった。駄目なのに……同じ間違いを繰り返したくないのに。そう思えば思うほど、体は強張った。

 エルベルト様は私の隣にふわりと座り、肩をそっと抱き寄せた。彼は初夜の時とは全く別人のように優しかった。

「パーティー楽しかったか?」
「は、はい。皆さんにお祝いしていただけて嬉しかったです」
「よかった。俺も楽しかったし、君のドレス姿とても綺麗だった」

 彼は目を細め、私の髪をそっと撫でながら頬やおでこに軽いキスを沢山された。すると自然と身体の力が抜けてきた。

「でも今夜の君が一番美しい」
「……っ!」
「そして……可愛い」

 彼は私にちゅっと唇にキスをして、優しくベッドに寝かせた。熱っぽい彼の瞳に見下ろされて、胸がドキドキとうるさく音を立てる。

「クリスティン、愛してる。君の嫌がることは決してしないから」
「はい」
「好きだ……大好きだ」

 そのまま深く濃厚なキスを何度もされ、ふわふわしてきたところで夜着の上から身体をなぞられた。

「ひゃあ……ん」
「可愛い。この夜着も似合ってる」
「は……恥ずかしいです」
「恥ずかしくない。綺麗だ。全部見せて」

 ちゅっちゅ、とキスをされながらあっという間に脱がされてしまった。無骨なようで彼は指先が器用らしい。

 ずっと話しかけてくれていたのに、急に彼の声が聞こえなくなった。私は不安になってそっと目を開けた。すると彼は私をジッと眺めたまま……固まっていた。

 今の私は一糸纏わぬ姿なのだ。それを見下ろされているということに、恥ずかしくなって全身が真っ赤に染まる。

「や……そんなに見ないでください」

 私が両手で胸を隠すと、ハッと彼の意識が戻った。彼の頬も赤く染まっている。

「綺麗すぎて見惚れた」
「え……?」
「柔らかい胸も細い腰も、そしてピンクに染まった白い肌もどれも美しい」

 その褒め言葉を受け止めるには、初心者の私にはキャパオーバーだった。だって、まるで恋愛小説の台詞だ。

「ずっと君に触れたかった」
「可愛い」
「好きだ」

 私はそのまま彼に身を任せ、全身愛された。気持ち良くて、恥ずかしくて……嬉しいのに苦しい。エルベルト様の熱が私にも伝染して、おかしくなりそうだ。

「怖……い」

 初めての感覚に、恐怖心が出てくる。私はまた怖いと言ってしまったと慌てて口を手で塞いだ。しかし、彼は私の手を握って優しく落ち着かせてくれた。

「大丈夫だ、俺に任せて。けど、本当に嫌ならやめる」
「嫌……じゃないの。変な感じがして怖いだけ。こんな……怖がってばかりで……子どもでごめんなさい」

 私の目からポロリと涙が溢れた。彼は涙を指でそっと拭い優しく微笑んだ。

「君は子どもなんかじゃない。初めてが怖いのは当たり前だ」
「エルベルト様……」
「でもこれからすることは、幸せなことだ。言葉だけじゃ足りないんだ。君に愛を伝えさせて欲しい」

 私はもう怖くなくなっていたので、愛おしい彼に自分の全てを任せた。

「ここも……愛したい」

 エルベルト様は私の足を開いて、秘部に顔を埋めて熱い舌で舐め続けた。

「やぁっ……! そんなところいけませんっ……ああんっ」
「どうして? ちゅっ……じゅる……濡れてて……ピンクですごく綺麗」
「綺麗なんかじゃ……な……」
「……綺麗だよ。そのまま気持ちよくなってくれ」

 長い時間かけてとろとろに蕩けさせられ、太くて長い指を三本受け入れた後に、やっと一つになれた。

「エルベルトさまぁ……!」
「ああ、クリスティン……クリスティン!」

 もちろん痛みはあったが、それも彼から与えられたものだと思うと幸せだった。

「愛してる。俺達、ひとつになれたよ」
「はい。よかっ……た。私も……あなたを愛しています」
「ああ、嬉しくて泣きそうだ」

 一つになったまま、彼は私をギュッと抱きしめた。私も彼の背中に手をまわした。

「クリスティン、もうそろそろ限界だ。くっ……すまない」

 何が限界なのだろうか? 私がきょとんとすると、エルベルト様の瞳が飢えた獣のようにギラッと光った。

「愛してる」

 その瞬間に噛み付くように濃厚な口付けをされ、身体に強い衝撃がきた。そのままエルベルト様は、激しく腰を打ちつけた。

「んん……っ!」
「愛してる」
「あっ……エル……ベルトさま……っ」
「ずっとこうしたかった」

 目の前がチカチカして、ピクンと身体が跳ねる。そのまま彼からのたくさんの激しい熱と愛を受け……私はくったりと力が抜けた。

「クリスティン、愛してる」
「クリスティン……クリス……クリスっ……」

 何度も名前を呼ぶ甘い声が聞こえたような気がするが、私は反応できぬまま意識を失った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

【R18】夫の子を身籠ったと相談されても困ります【完結】

迷い人
恋愛
 卒業式の日、公開プロポーズ受けた私ジェシカは、1か月後にはマーティン・ブライトの妻となった。  夫であるマーティンは、結婚と共に騎士として任地へと向かい、新婚後すぐに私は妻としては放置状態。  それでも私は幸福だった。  夫の家族は私にとても優しかったから。  就職先に後ろ盾があると言う事は、幸運でしかない。  なんて、恵まれているのでしょう!!  そう思っていた。  マーティンが浮気をしている。  そんな話を耳にするまでは……。  ※後編からはR18描写が入ります。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【R18】王と王妃は側妃をご所望です。

とらやよい
恋愛
王太子妃になるべく厳しく育てられた侯爵令嬢イエリンだったが、努力の甲斐なく彼女が王太子妃選ばれることはなかった。 十代で夢破れ第二の人生に踏み出しても、見合いすら断られ続け結婚もできず六年が経過した。立派な行き遅れとなったイエリンにとって酒場で酒を飲むことが唯一の鬱憤の捌け口になっていた。 鬱々とした日々の中、ひょんなことから酒場で出会い飲み友になったアーロン。彼の存在だけが彼女の救いだった。 そんな或日、国王となったトビアスからイエリンを側妃に迎えたいと強い申し入れが。 王妃になれなかった彼女は皮肉にも国王トビアスの側妃となることになったのだが…。 ★R18話には※をつけてあります。苦手な方はご注意下さい。

ハズレ令嬢の私を腹黒貴公子が毎夜求めて離さない

扇 レンナ
恋愛
旧題:買われた娘は毎晩飛ぶほど愛されています!? セレニアは由緒あるライアンズ侯爵家の次女。 姉アビゲイルは才色兼備と称され、周囲からの期待を一身に受けてきたものの、セレニアは実の両親からも放置気味。将来に期待されることなどなかった。 だが、そんな日々が変わったのは父親が投資詐欺に引っ掛かり多額の借金を作ってきたことがきっかけだった。 ――このままでは、アビゲイルの将来が危うい。 そう思った父はセレニアに「成金男爵家に嫁いで来い」と命じた。曰く、相手の男爵家は爵位が上の貴族とのつながりを求めていると。コネをつなぐ代わりに借金を肩代わりしてもらうと。 その結果、セレニアは新進気鋭の男爵家メイウェザー家の若き当主ジュードと結婚することになる。 ジュードは一代で巨大な富を築き爵位を買った男性。セレニアは彼を仕事人間だとイメージしたものの、実際のジュードはほんわかとした真逆のタイプ。しかし、彼が求めているのは所詮コネ。 そう決めつけ、セレニアはジュードとかかわる際は一線を引こうとしていたのだが、彼はセレニアを強く求め毎日のように抱いてくる。 しかも、彼との行為はいつも一度では済まず、セレニアは毎晩のように意識が飛ぶほど愛されてしまって――……!? おっとりとした絶倫実業家と見放されてきた令嬢の新婚ラブ! ◇hotランキング 3位ありがとうございます! ―― ◇掲載先→アルファポリス(先行公開)、ムーンライトノベルズ

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち
恋愛
★初恋のスパダリ年上騎士様に貧乏令嬢が溺愛される、ロマンチック・歳の差ラブストーリー♡ ★貧乏令嬢のシャーロットは、幼い頃からオリヴァーという騎士に恋をしている。猟犬騎士と呼ばれる彼は公爵で、イケメンで、さらに次期騎士団長として名高い。 ある日シャーロットは、ひょんなことから彼に逆プロポーズしてしまう。オリヴァーはそれを受け入れ、二人は電撃婚約することになる。婚約者となった彼は、シャーロットに甘々で――?! ★R18シーンは第二章の後半からです。その描写がある回はアスタリスク(*)がつきます ★ムーンライトノベルズ様では第二章まで公開中。(旧タイトル『初恋の猟犬騎士様にずっと片想いしていた貧乏令嬢が、逆プロポーズして電撃婚約し、溺愛される話。』) ★エブリスタ様では【エブリスタ版】を公開しています。 ★「面白そう」と思われた女神様は、毎日更新していきますので、ぜひ毎日読んで下さい! その際は、画面下の【お気に入り☆】ボタンをポチッとしておくと便利です。 いつも読んで下さる貴女が大好きです♡応援ありがとうございます!

【R18】婚約破棄されたおかげで、幸せな結婚ができました

ほづみ
恋愛
内向的な性格なのに、年齢と家格から王太子ジョエルの婚約者に選ばれた侯爵令嬢のサラ。完璧な王子様であるジョエルに不満を持たれないよう妃教育を頑張っていたある日、ジョエルから「婚約を破棄しよう」と提案される。理由を聞くと「好きな人がいるから」と……。 すれ違いから婚約破棄に至った、不器用な二人の初恋が実るまでのお話。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...