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11 学校へ行こう
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あの最悪な舞踏会から一週間後、私はやっと学校へ通えるまで元気に回復した。
ずっと引きこもっていたためアイザックが助けに来てくれた後、体調を整えるのに時間がかかってしまったのだ。両親も無理することない、ゆっくり休めば良いと言ってくれたので甘えることにした。
♢♢♢
私は休んでいる間にお父様とお母様に、引きこもっていた理由をきちんと話すことにした。
「あの日、舞踏会でサムは別に好きな女性がいるみたいだとわかったの。私は彼をずっと好きだったからショックで塞ぎ込んでしまったの。彼は妹のように私を可愛がってくれていただけなのに、私は勘違いしてしまっていて……」
「そうか」
「そうだったのね」
「あ! でもサムが悪いわけではないから……その……責めたりしないでね」
振られた私がサムを庇うのもなんだかおかしな話だが、彼が何も悪くないことは明らかだ。
両親は軽い相槌をうちながら静かに私の話を聞いてくれている。彼らはこの話を聞いても少しも驚いた顔はしていなかった。恐らくいつかは私の恋が終わることを予感していたのだろう。
「次に恋するなら、私のことを一番に好きになってくれる人がいいの。だからお見合いも……してみたい」
「わかった。見合いといっても、相手が嫌だったら断れるような気軽なものをセッティングしよう」
「はい」
「だが、気にいる男がいなければ我が家にずっといればいい。私はエヴァと君を一生養う甲斐性くらいあるつもりだよ。妻と娘がずっと傍にいるなんて幸せじゃないか」
お父様は私の頬にキスをして、そんなことを真顔で言った。
「まあ、お父様ったらそんなことを言って。でもアーサーは?」
「あいつは息子だから、大人になったら自分で稼いで来てもらう」
「くすくす、息子には厳しいわね」
私はそんなことを言うお父様につい笑ってしまった。
「リリー、隠さずに話してくれてありがとう。じゃあ……私は部屋で仕事をしてくるよ」
そう言ってチラッとお母様にアイコンタクトをしたお父様は部屋を去っていく。それを見届けると、お母様は私をギュッと抱きしめてくれた。
「リリー、辛かったわね」
「はい……好きな人に選んでもらえないってこんなに辛いんですね」
私はお母様の胸でぐすぐすとまた泣いてしまう。
「そうね。でもリリーと気持ちの通じ合う人がきっと現れるわ。今回はたまたまサムさんが運命の相手ではなかっただけの話よ」
「そうかしら」
「そうよ、リリーはとっても魅力的ですもの。自信を持ちなさい。だって貴方は私の娘なのよ?」
「ふふ、そうですね。お母様がお父様と出会ったみたいに私も愛する人を見つけます」
「ええ。きっと見つかるわ」
♢♢♢
「リリーっ! 良かった。ずっと学校に来ないから心配していたわ」
教室に着くと涙目のエミリーが私にギュッと抱きついてきたので、私はなんとか踏みとどまり抱きしめる。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫よ」
他の生徒たちも口々にもう元気なのか?と心配の声をかけてくれる。私はみんなを笑顔で対応し、いつも通りだとアピールする。
「舞踏会の日……実は大変だったんだから」
エミリーが私に耳打ちをする。確かに大変だったが、彼女は私が振られたことをもう知っているのだろうか。もしや……噂になっているとか?
みんなの大丈夫っていうのは振られたのに元気なのという意味だったのだろうかと頭が痛くなる。
「何が大変だったの?」
「アイザックよ! 貴方に声をかけたウェイターを見つけ出して殴りかかったんだから」
「ええ!?」
「ボッコボコにして、誰に指示されてリリーに近付いたのかってブチ切れてた。アイザックは途中で警備兵に止められたけど、ウェイターはすでに意識失ってたらしいわ。派手に騒ぎを起こしたのに殴った理由を言わないから……アイツは現在謹慎中」
「そうなの!?」
「まあ、今週中には出てくるって噂だけど」
「どうしてそんなことになってるのよ……」
アイザックは私のことが嫌いではなかったのか? あのウェイターを殴るなど……私のため以外の理由は考えられない。私はとても混乱していた。
ずっと引きこもっていたためアイザックが助けに来てくれた後、体調を整えるのに時間がかかってしまったのだ。両親も無理することない、ゆっくり休めば良いと言ってくれたので甘えることにした。
♢♢♢
私は休んでいる間にお父様とお母様に、引きこもっていた理由をきちんと話すことにした。
「あの日、舞踏会でサムは別に好きな女性がいるみたいだとわかったの。私は彼をずっと好きだったからショックで塞ぎ込んでしまったの。彼は妹のように私を可愛がってくれていただけなのに、私は勘違いしてしまっていて……」
「そうか」
「そうだったのね」
「あ! でもサムが悪いわけではないから……その……責めたりしないでね」
振られた私がサムを庇うのもなんだかおかしな話だが、彼が何も悪くないことは明らかだ。
両親は軽い相槌をうちながら静かに私の話を聞いてくれている。彼らはこの話を聞いても少しも驚いた顔はしていなかった。恐らくいつかは私の恋が終わることを予感していたのだろう。
「次に恋するなら、私のことを一番に好きになってくれる人がいいの。だからお見合いも……してみたい」
「わかった。見合いといっても、相手が嫌だったら断れるような気軽なものをセッティングしよう」
「はい」
「だが、気にいる男がいなければ我が家にずっといればいい。私はエヴァと君を一生養う甲斐性くらいあるつもりだよ。妻と娘がずっと傍にいるなんて幸せじゃないか」
お父様は私の頬にキスをして、そんなことを真顔で言った。
「まあ、お父様ったらそんなことを言って。でもアーサーは?」
「あいつは息子だから、大人になったら自分で稼いで来てもらう」
「くすくす、息子には厳しいわね」
私はそんなことを言うお父様につい笑ってしまった。
「リリー、隠さずに話してくれてありがとう。じゃあ……私は部屋で仕事をしてくるよ」
そう言ってチラッとお母様にアイコンタクトをしたお父様は部屋を去っていく。それを見届けると、お母様は私をギュッと抱きしめてくれた。
「リリー、辛かったわね」
「はい……好きな人に選んでもらえないってこんなに辛いんですね」
私はお母様の胸でぐすぐすとまた泣いてしまう。
「そうね。でもリリーと気持ちの通じ合う人がきっと現れるわ。今回はたまたまサムさんが運命の相手ではなかっただけの話よ」
「そうかしら」
「そうよ、リリーはとっても魅力的ですもの。自信を持ちなさい。だって貴方は私の娘なのよ?」
「ふふ、そうですね。お母様がお父様と出会ったみたいに私も愛する人を見つけます」
「ええ。きっと見つかるわ」
♢♢♢
「リリーっ! 良かった。ずっと学校に来ないから心配していたわ」
教室に着くと涙目のエミリーが私にギュッと抱きついてきたので、私はなんとか踏みとどまり抱きしめる。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫よ」
他の生徒たちも口々にもう元気なのか?と心配の声をかけてくれる。私はみんなを笑顔で対応し、いつも通りだとアピールする。
「舞踏会の日……実は大変だったんだから」
エミリーが私に耳打ちをする。確かに大変だったが、彼女は私が振られたことをもう知っているのだろうか。もしや……噂になっているとか?
みんなの大丈夫っていうのは振られたのに元気なのという意味だったのだろうかと頭が痛くなる。
「何が大変だったの?」
「アイザックよ! 貴方に声をかけたウェイターを見つけ出して殴りかかったんだから」
「ええ!?」
「ボッコボコにして、誰に指示されてリリーに近付いたのかってブチ切れてた。アイザックは途中で警備兵に止められたけど、ウェイターはすでに意識失ってたらしいわ。派手に騒ぎを起こしたのに殴った理由を言わないから……アイツは現在謹慎中」
「そうなの!?」
「まあ、今週中には出てくるって噂だけど」
「どうしてそんなことになってるのよ……」
アイザックは私のことが嫌いではなかったのか? あのウェイターを殴るなど……私のため以外の理由は考えられない。私はとても混乱していた。
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