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7 誕生日会①

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 そして誕生日会当日。私は花の刺繍がされ、レースの装飾が美しいブルーのドレスに身を包んでおり、髪もアップにまとめ、サファイアのついたバレッタを付けた。最後に薄く化粧をして淡いピンクのルージュをつけてもらった。

「お嬢様、本日はお誕生日おめでとうございます。とてもお綺麗ですよ」

 マリアがそう言ってくれたので私はリビングまでご機嫌で降りて行く。

「おや、私の可愛い天使がいつの間にか美しい女神に変身したようだ。とても綺麗だよ」

 私を溺愛しているお父様は、私を褒めたたえながら目の前に跪き私の手の甲にキスをした。

「ありがとう」
「お誕生日おめでとう。だけどリリー、お願いだからそんなに早く成長しないでおくれ……寂しいから」

 そう言って私をぎゅっと抱きしめた。お父様は誘拐事件があってから私にとても過保護になり、より溺愛するようになった。あんなことがあって不安なのか、たまに哀しいような切ないような目で私を見つめている。

「ふふ、お父様ったら相変わらず私が好きね」

 私はわざと明るく返事を返す。

「リリー、今日はおめでとう。そのドレスにして正解だったわね。とっても素敵よ」
「お母様と一緒に考えたおかげです。ありがとうございます」

 お母様からもお褒めの言葉をいただき、とても嬉しくなる。

「お誕生日おめでとうございます。今日のお姉様は絵本のお姫様みたい!」
「まぁ、アーサーったら。褒めるのが上手ね。嬉しいわ」

 正装した可愛い弟も私にくっつきながら褒めてくれる。伯爵家の令息として女性を褒めるスキルは幼い頃からつけておくべきだ。アーサーも立派に育っているなと感心した。

♢♢♢

 わいわいとすでに賑わっている会場に私は足を踏み入れる。その瞬間、みんなの視線がこちらにバッと向けられる。私は真っ直ぐ前を向き、お父様にエスコートされて歩いて行く。

「本日は、我が娘のためにお越しいただきありがとうございます。さあ、リリーご挨拶を」

 私が挨拶カーテシーをすると、周囲から「おおっ」「美しい」「本当に十歳か?」と声が上がる。

「皆さま、今日はありがとうございます。大勢の方に祝っていただけてこんなに嬉しいことはございません。楽しんで帰ってくださいませ」

 私は微笑み頭を下げた。周囲からはパチパチと拍手が鳴り響く。

 お父様と私の周りに人が押し寄せる。高位貴族やお父様のお仕事関係の方がほとんどだ。

「噂以上に美しいお嬢さんで驚きました。ああ、我が家にはリリー様に似合う年齢の息子がいるのですよ」
「親の私が言うのはどうかとは思いますが、我が息子はとても優秀でして……」

 お父様と関係を持ちたい貴族達が代わる代わる、私の婚約者としてどうかと御令息方をすすめてくる。私にはサムがいるのでどの人を見ても魅力的には感じないし、むしろ子供っぽく見えてしまう。

「恥ずかしながら私は娘を溺愛しておりまして。まだ手放したくないので婚約者などとんでもない」

 ははは、と笑いながら話をかわすお父様は流石だ。恐らくここには父のお眼鏡に適う御令息はいないのだろう。残念そうにみんなが去って行く。

「よお、デューク! リリーも今日は誕生日おめでとう」

 アルファードおじ様が声を掛けてくれる。その後ろにおば様とアイザックの姿も見える。

「おじ様っ! 来てくださったのね。嬉しいっ」

 私はおじ様の立派な腕に飛びつくと、ふわっと上に持ち上げぐるっと回してくれる。それにキャッキャと私が笑う。これは小さな頃からおじ様と私が会うと必ずしてもらうことだ。

「おやおや、君はやっぱりお転婆だ。今日はあまりに綺麗で大人になっているから、俺の知っているリリーとは違うお嬢さんかと思っていたんだ」
「うふふ、おじ様ったらお上手ね」
「リリーは俺の娘って言っても過言じゃないからな。とびっきりのプレゼント持ってきたぜ」
「わーい。楽しみっ!」

「いや、娘だから」

 お父様が冷たい目で「いい加減離せ」とおじ様を睨むので肩に抱いた私をゆっくり降ろした。

「デューク様、申し訳ないわ。この人ずっと娘が欲しかったものだから、リリーちゃんが可愛くて仕方がないの」

 おば様が眉を下げながら謝っている。

「いいのよ。お二人とも娘を可愛がってくださって私達はとても嬉しいわ。ね?あなた」

 母同士も仲良しなのでみんなでわいわいと楽しそうに話している。

「アイザック、お前リリーに何か言うことあるだろ?」

 おじ様が後ろにいるアイザックの頭をわしわし撫でた。

「リリー、いつも素敵だけど、今日の君は……なんて言うか……言葉にならないくらい綺麗だよ」

 アイザックは頬を真っ赤に染めて、もじもじしながら褒めてくれた。

「アイザック、ありがとうね」

 私は彼の手をぎゅっと握った。

「あ、あとでプレゼント渡したいんだ」
「ええ? おじ様達とは別にくれるの?」
「もちろんだよ」

「うふふ、楽しみにしておく。あっ!」

 その時、私は会場にサムが入ってくるのが見えた。彼は仕事で遅れると言っていたが、来てくれたのだ。


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