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6 お嫁さんにして
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それからしばらくすると、学校にアイザックが来なくなった。体調でも悪いのかと心配になり、お父様に尋ねた。
「彼の魔力量が急に増えたらしい。まだ扱い方に慣れていないから少々力が暴走するようだね。アルファードの親戚の家にこもって訓練してるみたいだよ」
「魔力量が急に増えた? そんなことがあるんですね。でも、彼は魔力が少ないととても気にしていたからとても嬉しいことだわ」
「途中で才能が開花することはとても珍しいことだが、なくはない」
私はこの話を聞いて素直に喜んだ。アイザックに会えないのは寂しいけれど、彼の将来のためには確実に良いことだ。アイザックのお父様であるアルファードおじ様もさぞ喜んでいらっしゃるだろう。
「リリー……アイザックに何かした?」
お父様が難しい顔をしたまま私を真っ直ぐ見つめる。何かとはなんだろうか? 普通に友達として過ごしていただけだ。特に喧嘩もしていないし。
「別に変わったことは何も。幼馴染として仲良く遊んでいただけです」
「そうだよね。ごめん、変なことを聞いたね」
お父様はいつもの優しい笑顔になり、私の頭を撫でた。
♢♢♢
それから約半年後、私が十歳の誕生日を迎える少し前にアイザックは学校に復帰した。
「リリー、ただいま。ずっと会いたかった」
「おかえりなさい。貴方、魔力量が増えたんだって? 驚いたわ」
「うん、僕もあまり突然で驚いたんだ。リリーに何も言わずに離れてしまったこと気にしてた」
「お父様から話は聞いていたわ。訓練よく頑張ったわね」
私はアイザックの頭をよしよしと撫でると、彼は照れたように笑った。
「僕、今はとても魔力が多いらしい。きっとこのまま訓練続けたら父様みたいに魔法騎士団で働けるって!」
彼は興奮気味に私にそう言った。魔法騎士団で働くということはエリートの証拠であり、とても名誉なことなのだ。
「よかったわね」
「だ、だからさ。僕……今度のリリーの誕生日に伝えたいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「もちろんよ。美味しいケーキ用意してるから!誕生日会楽しみにしててね」
何の話かはよくわからないが、弟のような彼がこんなに嬉しそうなので気にしないでおく。アイザックはこの半年で背も伸びて、私より少し大きくなった。以前よりも弱々しさも減って男の子らしくなったなと思う。
そして、私は日に日にサムを好きになっていた。彼は護身術だけではなく、馬の乗り方を教えてくれたり、こっそりと街中に行き屋台の買い物の仕方を教えてくれたり、道端に自然に咲いている花の名前を教えてくれたり……本当に色々なことをしてくれた。
普通の伯爵令嬢の教育では習わないことを彼から教わり、とっても楽しかった。
「私、サムのこと大好き」
私は意を決して彼に告白した。サムの腕にギュッと抱きつく。彼は穏やかな表情で私を見つめ、頭をポンポンと撫でてくれる。
「俺もリリーが好きだよ。可愛くて仕方がない」
そう言われて私は頬が真っ赤になった。まさか、サムも私を好きでいてくれたなんて。嬉しすぎる。
「ありがとう。私が大人になったらお嫁さんにしてね」
私はサムの頬にチュッとキスをした。彼は私の言動に一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに優しく笑い「はははっ、可愛い君にそう言ってもらえるとは。嬉しいよ」と言った。
それから彼はお嫁さんにするとも、しないとも言ってはくれなかった。これは私が子どもだからはぐらかされたのだと哀しい気持ちになった。でも、せっかく好きと言ってもらえたのだから頑張らないと。
♢♢♢
「お母様、誕生日会のドレスは少し大人っぽくしたいの」
「大人っぽく? 可愛いリボンをつけなくていいの?」
「いいの! サムに似合う女性になりたいから」
「まぁ……リリーはサムさんが好きなの?」
「ええ、サムのことが大好き。お母様、いいでしょ? もう十歳だし少し大人びたものでも」
お母様は少しだけ困ったような顔をした後に微笑んで、そうね……ではデザインと色を選びましょうねと一緒に考えてくれた。
お母様はとてもセンスが良く、少しだけ背伸びをしているが無理はしていないお洒落なドレスが仕上がった。
私は侍女のマリアにもお願いをしておく。
「マリア! お誕生日当日は少しでも大人に見える髪型とお化粧にしてね」
「お嬢様はそのままが一番可愛らしくて魅力的ですよ。肌もすべすべですから」
「嫌なの。濃いお化粧は嫌だけど雰囲気を変えたいの。サムに見せたいし……」
私は頬を染めてそうお願いする。サムを好きなことはマリアにはずっと前から言っている。私の恋の相談相手だ。
「お嬢様は本当にサム様がお好きですね。わかりました。お任せください」
こうして私の誕生日会に向けての下準備は整った。
「彼の魔力量が急に増えたらしい。まだ扱い方に慣れていないから少々力が暴走するようだね。アルファードの親戚の家にこもって訓練してるみたいだよ」
「魔力量が急に増えた? そんなことがあるんですね。でも、彼は魔力が少ないととても気にしていたからとても嬉しいことだわ」
「途中で才能が開花することはとても珍しいことだが、なくはない」
私はこの話を聞いて素直に喜んだ。アイザックに会えないのは寂しいけれど、彼の将来のためには確実に良いことだ。アイザックのお父様であるアルファードおじ様もさぞ喜んでいらっしゃるだろう。
「リリー……アイザックに何かした?」
お父様が難しい顔をしたまま私を真っ直ぐ見つめる。何かとはなんだろうか? 普通に友達として過ごしていただけだ。特に喧嘩もしていないし。
「別に変わったことは何も。幼馴染として仲良く遊んでいただけです」
「そうだよね。ごめん、変なことを聞いたね」
お父様はいつもの優しい笑顔になり、私の頭を撫でた。
♢♢♢
それから約半年後、私が十歳の誕生日を迎える少し前にアイザックは学校に復帰した。
「リリー、ただいま。ずっと会いたかった」
「おかえりなさい。貴方、魔力量が増えたんだって? 驚いたわ」
「うん、僕もあまり突然で驚いたんだ。リリーに何も言わずに離れてしまったこと気にしてた」
「お父様から話は聞いていたわ。訓練よく頑張ったわね」
私はアイザックの頭をよしよしと撫でると、彼は照れたように笑った。
「僕、今はとても魔力が多いらしい。きっとこのまま訓練続けたら父様みたいに魔法騎士団で働けるって!」
彼は興奮気味に私にそう言った。魔法騎士団で働くということはエリートの証拠であり、とても名誉なことなのだ。
「よかったわね」
「だ、だからさ。僕……今度のリリーの誕生日に伝えたいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「もちろんよ。美味しいケーキ用意してるから!誕生日会楽しみにしててね」
何の話かはよくわからないが、弟のような彼がこんなに嬉しそうなので気にしないでおく。アイザックはこの半年で背も伸びて、私より少し大きくなった。以前よりも弱々しさも減って男の子らしくなったなと思う。
そして、私は日に日にサムを好きになっていた。彼は護身術だけではなく、馬の乗り方を教えてくれたり、こっそりと街中に行き屋台の買い物の仕方を教えてくれたり、道端に自然に咲いている花の名前を教えてくれたり……本当に色々なことをしてくれた。
普通の伯爵令嬢の教育では習わないことを彼から教わり、とっても楽しかった。
「私、サムのこと大好き」
私は意を決して彼に告白した。サムの腕にギュッと抱きつく。彼は穏やかな表情で私を見つめ、頭をポンポンと撫でてくれる。
「俺もリリーが好きだよ。可愛くて仕方がない」
そう言われて私は頬が真っ赤になった。まさか、サムも私を好きでいてくれたなんて。嬉しすぎる。
「ありがとう。私が大人になったらお嫁さんにしてね」
私はサムの頬にチュッとキスをした。彼は私の言動に一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに優しく笑い「はははっ、可愛い君にそう言ってもらえるとは。嬉しいよ」と言った。
それから彼はお嫁さんにするとも、しないとも言ってはくれなかった。これは私が子どもだからはぐらかされたのだと哀しい気持ちになった。でも、せっかく好きと言ってもらえたのだから頑張らないと。
♢♢♢
「お母様、誕生日会のドレスは少し大人っぽくしたいの」
「大人っぽく? 可愛いリボンをつけなくていいの?」
「いいの! サムに似合う女性になりたいから」
「まぁ……リリーはサムさんが好きなの?」
「ええ、サムのことが大好き。お母様、いいでしょ? もう十歳だし少し大人びたものでも」
お母様は少しだけ困ったような顔をした後に微笑んで、そうね……ではデザインと色を選びましょうねと一緒に考えてくれた。
お母様はとてもセンスが良く、少しだけ背伸びをしているが無理はしていないお洒落なドレスが仕上がった。
私は侍女のマリアにもお願いをしておく。
「マリア! お誕生日当日は少しでも大人に見える髪型とお化粧にしてね」
「お嬢様はそのままが一番可愛らしくて魅力的ですよ。肌もすべすべですから」
「嫌なの。濃いお化粧は嫌だけど雰囲気を変えたいの。サムに見せたいし……」
私は頬を染めてそうお願いする。サムを好きなことはマリアにはずっと前から言っている。私の恋の相談相手だ。
「お嬢様は本当にサム様がお好きですね。わかりました。お任せください」
こうして私の誕生日会に向けての下準備は整った。
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