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本編
23 プレゼント
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それからの彼は初めての私を怖がらせないように「大丈夫」「怖くない」と囁きながら、全身に優しいキスをしてくれた。ランディ様に触れられると、どこもかしこも気持ち良くて蕩けそうになる。
「んっ……ふっ……」
「すごく綺麗だ。俺に全部見せてくれ」
ちゅっちゅ……もう何度甘い口付けを受けたのかわからない。私は頭も身体ももういっぱいいっぱいで、クラクラする。
「可愛い」「好きだ」「愛してる」「綺麗」
彼はひたすらその言葉を繰り返していた。体格差もあるし初めてなので痛みもあったけれど、ランディ様はゆっくり丁寧に触れてくださり……なんとか一つになることができた。
初めてなのでかなり時間はかかったが、やっと彼を受け入れることができてとても幸せだった。
「ランディ……さま……」
「ヴィヴィ、ありがとう。ひとつになれたよ。愛してる」
「私も愛して……ます。あなたの……本当の妻になれて嬉しい」
私は自然に涙が溢れてきた。それは過ぎた願いだとずっと思っていたから。
「俺も君の夫になれて幸せだ。君が俺と結婚してくれたこと自体が……人生最高のプレゼントだ」
ランディ様が嬉しそうに笑っているのが見えた。彼に軽く触れるだけのキスをされたのを最後に、私は深い眠りについてしまった。
♢♢♢
「ヴィヴィ、おはよう」
彼に頭を撫でられながら目が覚めた。身体が重たいけれど、温かい手が心地が良い。
「ランディ様、おはようございます」
なんだか照れくさくて私は少し目を伏せた。なんとも言えない甘い空気が流れてソワソワしてしまう。
「昨夜は無理をさせた。今日はゆっくりしよう」
そう言われて彼に丸一日、せっせとお世話をされた。ランディ様は、好きなものはとことん愛でたいらしく……私の髪をといたり、ご飯を食べさせたりと楽しそうだった。
「あの、自分でできます」
「俺が君にしたいんだ。ヴィヴィ、好きだよ」
そんな甘いことを言いながら優しい目でこちらを見てくるので、恥ずかしくてしょうがない。
「ずっとヴィヴィへの気持ちを隠してきたから。好きな人に好きだと素直に伝えられることが、こんなに嬉しいことだと思わなかったんだ」
「ランディ様……」
「俺に幸せをくれてありがとう。君と出逢わなかったら、こんな気持ち今も知らずに生きていただろう」
私だってそうだ。ランディ様と結婚していなかったら、こんなに激しい恋も愛も知らなかったはずだ。
「二人でずっと幸せな夫婦でいましょう」
「ああ。約束だ」
それからの毎日は、とても幸せに穏やかに過ぎていった。世間一般の夫婦と比べ、かなり仲の良い夫婦になれていると思う。彼からの愛は、時間が経っても尽きることはないようだから。もちろん……私も。
♢♢♢
あっという間に時は過ぎて、今日は結婚一年の記念日だ。
ちなみにその前にあった私の誕生日はそれはもう盛大なお祝いをしてもらい、海の見える街まで二泊の旅行に連れて行ってもらった。ランディ様は私のために、無理矢理休みをもぎ取ってきたのだ。
レストランでたらふく美味しいものを食べ『俺の代わりとして持っていてくれ』とアメジストのネックレスとイヤリングを贈られた。その美しい紫はまるで彼の瞳と同じで、とても嬉しかった。
『……真実の愛を守ってくれる石らしい』
彼は頬を染めながら、ボソリとそう言った。想いが通じ合ってから知ったこと。それは、ランディ様はなかなかにロマンチストだということだ。
『お守りにして大事にしますね。とっても嬉しいです』
アクセサリーをつけた私を見て、彼は満足そうに微笑んだ。それからはホテルでたっぷり愛されて……一番幸せで嬉しい誕生日を迎えることができた。
その時に結婚記念日も二人でたくさん祝おう、と約束していたのだがどうやらそれが叶いそうもない。私は朝起きた時から身体がなんか変だな、とは思っていた。
「ゔっ……気持ち悪い」
私は朝ご飯を一口食べた瞬間に、口を手で押さえて吐き気をなんとか堪えた。ガシャンとカトラリーを床に落としてしまった。
「ヴィヴィっ!?」
「ごめ……なさい。落として……」
一体なんなのだろうか?私は元気が取り柄で、体調を崩すことなんて滅多にないのに。こんな大事な日に急に身体がおかしくなってしまった。
青ざめて震える私を見て、ランディ様は驚いた顔で近づいて来てくれた。
「ヴィヴィ、大丈夫か?テッド!すぐに医者を呼んでくれ!!」
「はい」
彼は私を横抱きに抱え上げて、優しくベッドに運んでくれた。
「ごめ……なさい」
「謝るな。気持ち悪かったらこのまま吐いてもいいから。ヴィヴィは何も気にするんじゃない。俺はここにいるから」
不安気なランディ様は私の手をぎゅっと握った。自分が彼をこんな顔にしているんだと思うと、胸が苦しくなる。
「大丈夫……少し疲れただけだと思います。でも……せっかくの記念日なのに。ごめんなさい」
「何を言ってるんだ!そんなのまた後日すればいい。ヴィヴィより大事なものなんてないのだから」
優しい彼の言葉に、私は涙が出てきた。なんだか……今日は情緒も不安定になっているようだ。彼はそんな私の頭をずっと撫で続けてくれた。
「旦那様、お医者様が来られました」
「入ってもらえ」
すぐにお医者様が入ってきて、失礼しますと私の身体に聴診器を当てながら診てくださった。
「ふむ……昨日までは体調はよろしかったんですね?」
「はい。問題ありませんでした」
「なるほど。失礼ですが、奥様。月のものは最後にいつきましたか?」
――月のもの。そうか、これはまさか。
「一ヶ月半ほど……きておりません」
「身体に悪いところはなさそうですから、十中八九ご懐妊でしょう。おめでとうございます」
お医者様はニコリと微笑みながら、そう言った。私もランディ様も……周囲の使用人達も驚いて何も言葉を出すことができなかった。
私の体調を私より詳しいミアだけは「もしかして」と気が付いていたようで、驚かずにニッコリと微笑んでいた。
「ランディ様……私のお腹に……赤ちゃんがいるそうです」
私は自分のお腹をそっと撫でた。この吐き気は悪阻だったのか。それならばこんなに嬉しいことはない。
「ほ、本当なのか……?本当に……俺達の」
「ええ、嬉しいですね!」
「ああ。結婚記念日にこんな素晴らしいことがあるなんて!ありがとう、ヴィヴィ」
彼は私をぎゅっと抱き締めてくれた。それからの使用人達の喜びようも凄かった。お医者様に注意すべきことや今後のことを聞いて診察は終わった。
すると私はまた気持ちが悪くなってきた。嬉しい気持ちと体調は別なのが苦しい。
「ヴィヴィ、大丈夫か!?妊娠はそんなに苦しいのか……可哀想に。どうしたらいいんだ」
さっきの喜びから一変、オロオロと困るランディ様を見て目を細めた。
「大丈夫です。苦しいのも赤ちゃんがいるからだと思えば、喜びですから」
それから彼は、自ら果実を絞った水を用意して飲ませてくれた。
「医者からこれが酸っぱくて飲みやすいと聞いたから」
私はそれをゆっくり飲むと、スッとして少し気分が良くなった。
「美味しいです。ありがとうございます」
ちゃんと飲めたことを確認して、ランディ様はホッと微笑んだ。それからも甲斐甲斐しくお世話をされ、次の日には「ヴィヴィがこんなにしんどいのに、放置して仕事になど行けない!」なんて言う彼をなんとか宥めるのが大変だった。
「病気ではないのですから、大丈夫です。この子のためにも、頑張って来てくださいませ」
「……わかった!すぐに仕事を片付けて帰る」
ランディ様にちゅっ、とキスをされベッドの中でお見送りをした。
ありがたいことに一ヶ月ほどで酷い悪阻は落ち着いて、ほとんど普段の生活ができるようになった。そして日を追うごとにお腹が大きくなっていった。最近は赤ちゃんが、トントンと蹴るように動くこともある。
「今日も元気だな!ああ、早く逢いたい」
妊娠してからも彼と同じ寝室で休んでいる。最近のランディ様は嬉しそうにお腹を撫でて、その膨らみに愛おしそうにちゅっちゅとキスをする。
「なかなか、やんちゃみたいです。最近はよく動くんですよ。男の子かしら?」
「いや、君に似たお転婆な女の子かもしれないよ?困ったな」
揶揄うようにそんなことを言うランディ様を、拗ねた顔でポカポカと叩くと彼はケラケラと笑った。
「完全にランディ様似です!」
「はは……冗談だ。動いているのは元気な証拠で嬉しい。そろそろ寝ようか?ヴィヴィ、愛してる」
「私も愛しています」
優しい彼に頭を撫でられながら、眠りにつくのが最近の私の日常だ。
「……っ!ラン……ディさ……ま……痛い……」
そして急にその瞬間は訪れた。あまりの痛みに汗が吹き出し彼のシャツをぎゅっと握ると、すぐに起きてくれた。
「ヴィヴィ!待っていてくれ」
これはきっと陣痛だ。彼がバタバタとしながら部屋を出ていく姿が見えた。
――どうか無事に生まれて。
それだけを祈りながら、私は意識が飛びそうになる痛みに耐えていた。
「んっ……ふっ……」
「すごく綺麗だ。俺に全部見せてくれ」
ちゅっちゅ……もう何度甘い口付けを受けたのかわからない。私は頭も身体ももういっぱいいっぱいで、クラクラする。
「可愛い」「好きだ」「愛してる」「綺麗」
彼はひたすらその言葉を繰り返していた。体格差もあるし初めてなので痛みもあったけれど、ランディ様はゆっくり丁寧に触れてくださり……なんとか一つになることができた。
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「ランディ……さま……」
「ヴィヴィ、ありがとう。ひとつになれたよ。愛してる」
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ランディ様が嬉しそうに笑っているのが見えた。彼に軽く触れるだけのキスをされたのを最後に、私は深い眠りについてしまった。
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「ヴィヴィ、おはよう」
彼に頭を撫でられながら目が覚めた。身体が重たいけれど、温かい手が心地が良い。
「ランディ様、おはようございます」
なんだか照れくさくて私は少し目を伏せた。なんとも言えない甘い空気が流れてソワソワしてしまう。
「昨夜は無理をさせた。今日はゆっくりしよう」
そう言われて彼に丸一日、せっせとお世話をされた。ランディ様は、好きなものはとことん愛でたいらしく……私の髪をといたり、ご飯を食べさせたりと楽しそうだった。
「あの、自分でできます」
「俺が君にしたいんだ。ヴィヴィ、好きだよ」
そんな甘いことを言いながら優しい目でこちらを見てくるので、恥ずかしくてしょうがない。
「ずっとヴィヴィへの気持ちを隠してきたから。好きな人に好きだと素直に伝えられることが、こんなに嬉しいことだと思わなかったんだ」
「ランディ様……」
「俺に幸せをくれてありがとう。君と出逢わなかったら、こんな気持ち今も知らずに生きていただろう」
私だってそうだ。ランディ様と結婚していなかったら、こんなに激しい恋も愛も知らなかったはずだ。
「二人でずっと幸せな夫婦でいましょう」
「ああ。約束だ」
それからの毎日は、とても幸せに穏やかに過ぎていった。世間一般の夫婦と比べ、かなり仲の良い夫婦になれていると思う。彼からの愛は、時間が経っても尽きることはないようだから。もちろん……私も。
♢♢♢
あっという間に時は過ぎて、今日は結婚一年の記念日だ。
ちなみにその前にあった私の誕生日はそれはもう盛大なお祝いをしてもらい、海の見える街まで二泊の旅行に連れて行ってもらった。ランディ様は私のために、無理矢理休みをもぎ取ってきたのだ。
レストランでたらふく美味しいものを食べ『俺の代わりとして持っていてくれ』とアメジストのネックレスとイヤリングを贈られた。その美しい紫はまるで彼の瞳と同じで、とても嬉しかった。
『……真実の愛を守ってくれる石らしい』
彼は頬を染めながら、ボソリとそう言った。想いが通じ合ってから知ったこと。それは、ランディ様はなかなかにロマンチストだということだ。
『お守りにして大事にしますね。とっても嬉しいです』
アクセサリーをつけた私を見て、彼は満足そうに微笑んだ。それからはホテルでたっぷり愛されて……一番幸せで嬉しい誕生日を迎えることができた。
その時に結婚記念日も二人でたくさん祝おう、と約束していたのだがどうやらそれが叶いそうもない。私は朝起きた時から身体がなんか変だな、とは思っていた。
「ゔっ……気持ち悪い」
私は朝ご飯を一口食べた瞬間に、口を手で押さえて吐き気をなんとか堪えた。ガシャンとカトラリーを床に落としてしまった。
「ヴィヴィっ!?」
「ごめ……なさい。落として……」
一体なんなのだろうか?私は元気が取り柄で、体調を崩すことなんて滅多にないのに。こんな大事な日に急に身体がおかしくなってしまった。
青ざめて震える私を見て、ランディ様は驚いた顔で近づいて来てくれた。
「ヴィヴィ、大丈夫か?テッド!すぐに医者を呼んでくれ!!」
「はい」
彼は私を横抱きに抱え上げて、優しくベッドに運んでくれた。
「ごめ……なさい」
「謝るな。気持ち悪かったらこのまま吐いてもいいから。ヴィヴィは何も気にするんじゃない。俺はここにいるから」
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「大丈夫……少し疲れただけだと思います。でも……せっかくの記念日なのに。ごめんなさい」
「何を言ってるんだ!そんなのまた後日すればいい。ヴィヴィより大事なものなんてないのだから」
優しい彼の言葉に、私は涙が出てきた。なんだか……今日は情緒も不安定になっているようだ。彼はそんな私の頭をずっと撫で続けてくれた。
「旦那様、お医者様が来られました」
「入ってもらえ」
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「はい。問題ありませんでした」
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お医者様はニコリと微笑みながら、そう言った。私もランディ様も……周囲の使用人達も驚いて何も言葉を出すことができなかった。
私の体調を私より詳しいミアだけは「もしかして」と気が付いていたようで、驚かずにニッコリと微笑んでいた。
「ランディ様……私のお腹に……赤ちゃんがいるそうです」
私は自分のお腹をそっと撫でた。この吐き気は悪阻だったのか。それならばこんなに嬉しいことはない。
「ほ、本当なのか……?本当に……俺達の」
「ええ、嬉しいですね!」
「ああ。結婚記念日にこんな素晴らしいことがあるなんて!ありがとう、ヴィヴィ」
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それから彼は、自ら果実を絞った水を用意して飲ませてくれた。
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私はそれをゆっくり飲むと、スッとして少し気分が良くなった。
「美味しいです。ありがとうございます」
ちゃんと飲めたことを確認して、ランディ様はホッと微笑んだ。それからも甲斐甲斐しくお世話をされ、次の日には「ヴィヴィがこんなにしんどいのに、放置して仕事になど行けない!」なんて言う彼をなんとか宥めるのが大変だった。
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「今日も元気だな!ああ、早く逢いたい」
妊娠してからも彼と同じ寝室で休んでいる。最近のランディ様は嬉しそうにお腹を撫でて、その膨らみに愛おしそうにちゅっちゅとキスをする。
「なかなか、やんちゃみたいです。最近はよく動くんですよ。男の子かしら?」
「いや、君に似たお転婆な女の子かもしれないよ?困ったな」
揶揄うようにそんなことを言うランディ様を、拗ねた顔でポカポカと叩くと彼はケラケラと笑った。
「完全にランディ様似です!」
「はは……冗談だ。動いているのは元気な証拠で嬉しい。そろそろ寝ようか?ヴィヴィ、愛してる」
「私も愛しています」
優しい彼に頭を撫でられながら、眠りにつくのが最近の私の日常だ。
「……っ!ラン……ディさ……ま……痛い……」
そして急にその瞬間は訪れた。あまりの痛みに汗が吹き出し彼のシャツをぎゅっと握ると、すぐに起きてくれた。
「ヴィヴィ!待っていてくれ」
これはきっと陣痛だ。彼がバタバタとしながら部屋を出ていく姿が見えた。
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