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本編
17 近付く二人
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なんとか甘々なモーニングを終えた後、いつものようにお見送りをするために玄関に向かった。
「ランディ様、行ってらっしゃいませ」
「出来るだけ早く戻るから待っててくれ」
彼は私の髪をサラリと撫でて、ちゅっと唇にキスをした。私は驚いて唇を手でおさえた。
「行ってくる」
そのままご機嫌に彼は出て行った。ミアやテッド、他の使用人達もいるのに……唇にキスされてしまった。そりゃあ、前までは『夫婦なんだしキスくらいしてくれならいいのに!』なんて思っていたけれど、実際されたら恥ずかしい。
みんなはあえて見て見ぬふりをしてくれている。うゔ……なんだか照れる。
そして、仕事から帰ってきた彼はさらに甘かった。約束通り早めに戻って来られ「お帰りなさいませ」と言い切る前に抱きしめられた。
「ただいま。早くヴィヴィに逢いたかった」
ちゅっちゅとキスをして、頭を撫で……真っ赤になっている私に「可愛い」と目を細めて家の中に入って行った。
うわーっ!あの人は誰なの!?私の知っているランディ様はこんな人じゃなかったのに。いや、このランディ様も素敵だけれど。
戸惑う私にミアが「あれが本当の旦那様ですよ」と教えてくれた。
そしてディナーを食べながら、ランディ様と色々なことを話した。彼は仕事の合間に私の両親に今回の事件の説明とお詫びに行ってくださったらしい。
「ヴィヴィをとても心配されていたから、時間のある時に一度帰るといい」
「はい、そうさせていただきます。ありがとうございました」
「でも……お願いだから、ちゃんとここに帰って来てくれよ」
ランディ様は少し不安そうに私を見つめてながらそう呟いた。私はくすっ、と笑った。
「私はあなた様の妻ですよ?この家以外に帰るところなんてありませんわ」
「そうか……そうだよな!」
急にご機嫌にパクパクと食事を取り出す姿が、なんだか可愛らしい。
「そう言えば、今週末にまた孤児院へ行ってこようと思います」
「そうか。今週末……よければ俺も一緒にいってもいいか?休みがあるから」
「え!お休みなのにいいのですか?嬉しいです」
「……もちろん。俺も嬉しい」
孤児院へ行くだけだけど、なんだかデートみたいで嬉しい。子ども達がランディ様を好きになってくれたらいいな。
そしてまた夜が来た。露出は少ないが、ミアに選んでもらった可愛らしい夜着を着て……一応身体も普段より丁寧に洗って夫婦の寝室に入った。
うーん……ドキドキする。ゆっくり夫婦になりたいと言ってくださったので、きっと今夜結ばれることはないのだろう。でも、緊張はしてしまう。どこで待つべきか悩んだが、とりあえずベッドに腰掛けた。
「ヴィヴィ、入っていいか?」
「ど、どうぞ」
彼の声がして、心臓がさっきより早く動いているのがわかる。ちょっと吃ってしまった。ランディ様が私の隣にゆっくりと座ると、マットレスが少し沈んだ。
「……そんなに緊張しないでくれ。襲ったりしないから」
「はい」
「その夜着やっぱり似合っているな。ヴィヴィに合うと思ったんだ」
そう言われて私は驚いた。これはランディ様が選んでくださった物だったのか。
「これはランディ様が選んでくださったのですか?知りませんでした。ありがとうございます」
彼はポリポリと頬を指でかいて、少し気まずそうに目線を逸らした。
「ヴィヴィのクローゼットの中の服は、全部俺が選んでいるから」
「ええっ!?」
あれもこれもそれも!?まさかランディ様が自ら選んでいたというのか。
「……い、嫌だったか?すまない、今までは秘密にしていた」
「いえ。どれも私に似合うものばかりです。ありがとうございます」
ランディ様が可愛い物が好きなのは本当らしい。しかしまさか全部選んでくださっていたとは驚きだ。
「ヴィヴィの服を選ぶのは本当に楽しい。ヴィヴィが着たら、どの服も可愛くなるから堪らないな」
「あのー……ランディ様、もしかして……その……下着もですか?」
私は不安に思ったことを、勇気を出して聞いてみた。下着は結構セクシーなのも入っていた気がする。まさか……それも……いや、でも彼はセクシーなのは好きじゃないんだっけ?
「ち、違う!それは侍女に全て任せている。あ、あ、当たり前だろう」
「あー……そうですよね。よ、良かったです」
ああ、焦ったわ。それならば安心だ。もしかしてそれも全て選んでいらっしゃったらどうしようかと思ったわ。
「そう言えば、初夜の時に夜着が『似合わない』と言われて傷つきましたわ。じゃあ……あれはランディ様のチョイスではないということですよね?」
私は唇を尖らせてわざと拗ねたようにそう言った。あの時泣いてしまったことをランディ様が気にしていらっしゃる気がしたので、あえて冗談っぽく言おうと思ったのだ。
「最初はヴィヴィの好みがわからないから、侍女達に色んな物を頼んでいたんだ。あれはもっと君に合う服があるのに、と思ってつい言ってしまった。でも言い方が最悪だったし、傷付けて悪かった」
「あなたがセクシーなのがお好きだと思っていましたから、あんなものを初めて着たんですよ。まあ、自分で見ても似合っていませんでしたが」
「……すまない」
「もういいです。許してあげますわ」
「ありがとう」
彼とのわだかまりも解けたところで「そろそろ寝ようか」という話になった。
大きなベッドに二人並んで横になる。前にも一緒に寝たことがあったけれど、あの時は寝落ちして意識がなかったから大丈夫だった。今は……はっきりと意識があるのでどうしたらいいものか。
「ヴィヴィ……抱きしめていいか?」
「ど、どうぞ」
彼に優しく抱きしめられて、胸がドキドキする。ランディ様は温かくて気持ちがいい。
「ヴィヴィは柔らかくて癒されるな。それに甘くていい匂いがする」
ランディ様は私の首筋に顔を埋めながら話すので、なんかこそばゆい。
「ふふ……くすぐったい。ランディ様は筋肉がすごいですね!」
私は憧れの眼差しで彼を見つめた。鍛え上げられた胸筋がすごい。騎士の身体ってすごいんだなと感心して、ついペタペタと触る。同じ人間じゃないみたい。
「こら、じっとしていなさい」
彼は何故か少し不機嫌そうに大きなため息をついて、私が動けないように再度抱きしめた。
「困りました、これではドキドキして寝れません」
「そうだな。確かにハグしたままはハードルが高い。でももう寝よう……これから一緒に寝るんだから慣れないと。おやすみ」
ランディ様にちゅっとおやすみのキスをされて、ハグは諦め……二人並んだ状態で寝ることになった。触れるか触れないかの距離の手がなんだかもどかしい。
隣に好きな人がいるなんて、寝れるわけない。寝れるわけがない……と思っていたのに、気が付いたら朝だった。何故?自分の神経の図太さが嫌になる。
「おはよう。くくくっ……ぐっすり眠れたようだな」
ランディ様は私の頬をツンツンと突きながら、揶揄うようにそう言った。
「……おはようございます」
「ドキドキして寝れないって言ってたのに、ヴィヴィは嘘つきだな」
「うゔっ、すみません」
「すやすや寝る無防備なところも、可愛くて好きだよ。でも俺のことは男だと常に意識していてくれ」
そう言って甘く唇を吸われ、私は朝っぱらからとろんと蕩けさせられた。
「もちろん意識……してます」
「ならいいけれど」
それからもランディ様に、優しく起こされる日々が続いた。日を追うごとに一緒に眠るのも段々と慣れてきて、手を繋いだり……腕枕をしてもらいながら寝たりと二人の距離は近付いていった。
忙しい彼とベッドの中で、話せる時間があるのも嬉しかった。ああ、幸せだな。私は今夜も彼の温もりを感じながら深い眠りに落ちていった。
「ランディ様、行ってらっしゃいませ」
「出来るだけ早く戻るから待っててくれ」
彼は私の髪をサラリと撫でて、ちゅっと唇にキスをした。私は驚いて唇を手でおさえた。
「行ってくる」
そのままご機嫌に彼は出て行った。ミアやテッド、他の使用人達もいるのに……唇にキスされてしまった。そりゃあ、前までは『夫婦なんだしキスくらいしてくれならいいのに!』なんて思っていたけれど、実際されたら恥ずかしい。
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そして、仕事から帰ってきた彼はさらに甘かった。約束通り早めに戻って来られ「お帰りなさいませ」と言い切る前に抱きしめられた。
「ただいま。早くヴィヴィに逢いたかった」
ちゅっちゅとキスをして、頭を撫で……真っ赤になっている私に「可愛い」と目を細めて家の中に入って行った。
うわーっ!あの人は誰なの!?私の知っているランディ様はこんな人じゃなかったのに。いや、このランディ様も素敵だけれど。
戸惑う私にミアが「あれが本当の旦那様ですよ」と教えてくれた。
そしてディナーを食べながら、ランディ様と色々なことを話した。彼は仕事の合間に私の両親に今回の事件の説明とお詫びに行ってくださったらしい。
「ヴィヴィをとても心配されていたから、時間のある時に一度帰るといい」
「はい、そうさせていただきます。ありがとうございました」
「でも……お願いだから、ちゃんとここに帰って来てくれよ」
ランディ様は少し不安そうに私を見つめてながらそう呟いた。私はくすっ、と笑った。
「私はあなた様の妻ですよ?この家以外に帰るところなんてありませんわ」
「そうか……そうだよな!」
急にご機嫌にパクパクと食事を取り出す姿が、なんだか可愛らしい。
「そう言えば、今週末にまた孤児院へ行ってこようと思います」
「そうか。今週末……よければ俺も一緒にいってもいいか?休みがあるから」
「え!お休みなのにいいのですか?嬉しいです」
「……もちろん。俺も嬉しい」
孤児院へ行くだけだけど、なんだかデートみたいで嬉しい。子ども達がランディ様を好きになってくれたらいいな。
そしてまた夜が来た。露出は少ないが、ミアに選んでもらった可愛らしい夜着を着て……一応身体も普段より丁寧に洗って夫婦の寝室に入った。
うーん……ドキドキする。ゆっくり夫婦になりたいと言ってくださったので、きっと今夜結ばれることはないのだろう。でも、緊張はしてしまう。どこで待つべきか悩んだが、とりあえずベッドに腰掛けた。
「ヴィヴィ、入っていいか?」
「ど、どうぞ」
彼の声がして、心臓がさっきより早く動いているのがわかる。ちょっと吃ってしまった。ランディ様が私の隣にゆっくりと座ると、マットレスが少し沈んだ。
「……そんなに緊張しないでくれ。襲ったりしないから」
「はい」
「その夜着やっぱり似合っているな。ヴィヴィに合うと思ったんだ」
そう言われて私は驚いた。これはランディ様が選んでくださった物だったのか。
「これはランディ様が選んでくださったのですか?知りませんでした。ありがとうございます」
彼はポリポリと頬を指でかいて、少し気まずそうに目線を逸らした。
「ヴィヴィのクローゼットの中の服は、全部俺が選んでいるから」
「ええっ!?」
あれもこれもそれも!?まさかランディ様が自ら選んでいたというのか。
「……い、嫌だったか?すまない、今までは秘密にしていた」
「いえ。どれも私に似合うものばかりです。ありがとうございます」
ランディ様が可愛い物が好きなのは本当らしい。しかしまさか全部選んでくださっていたとは驚きだ。
「ヴィヴィの服を選ぶのは本当に楽しい。ヴィヴィが着たら、どの服も可愛くなるから堪らないな」
「あのー……ランディ様、もしかして……その……下着もですか?」
私は不安に思ったことを、勇気を出して聞いてみた。下着は結構セクシーなのも入っていた気がする。まさか……それも……いや、でも彼はセクシーなのは好きじゃないんだっけ?
「ち、違う!それは侍女に全て任せている。あ、あ、当たり前だろう」
「あー……そうですよね。よ、良かったです」
ああ、焦ったわ。それならば安心だ。もしかしてそれも全て選んでいらっしゃったらどうしようかと思ったわ。
「そう言えば、初夜の時に夜着が『似合わない』と言われて傷つきましたわ。じゃあ……あれはランディ様のチョイスではないということですよね?」
私は唇を尖らせてわざと拗ねたようにそう言った。あの時泣いてしまったことをランディ様が気にしていらっしゃる気がしたので、あえて冗談っぽく言おうと思ったのだ。
「最初はヴィヴィの好みがわからないから、侍女達に色んな物を頼んでいたんだ。あれはもっと君に合う服があるのに、と思ってつい言ってしまった。でも言い方が最悪だったし、傷付けて悪かった」
「あなたがセクシーなのがお好きだと思っていましたから、あんなものを初めて着たんですよ。まあ、自分で見ても似合っていませんでしたが」
「……すまない」
「もういいです。許してあげますわ」
「ありがとう」
彼とのわだかまりも解けたところで「そろそろ寝ようか」という話になった。
大きなベッドに二人並んで横になる。前にも一緒に寝たことがあったけれど、あの時は寝落ちして意識がなかったから大丈夫だった。今は……はっきりと意識があるのでどうしたらいいものか。
「ヴィヴィ……抱きしめていいか?」
「ど、どうぞ」
彼に優しく抱きしめられて、胸がドキドキする。ランディ様は温かくて気持ちがいい。
「ヴィヴィは柔らかくて癒されるな。それに甘くていい匂いがする」
ランディ様は私の首筋に顔を埋めながら話すので、なんかこそばゆい。
「ふふ……くすぐったい。ランディ様は筋肉がすごいですね!」
私は憧れの眼差しで彼を見つめた。鍛え上げられた胸筋がすごい。騎士の身体ってすごいんだなと感心して、ついペタペタと触る。同じ人間じゃないみたい。
「こら、じっとしていなさい」
彼は何故か少し不機嫌そうに大きなため息をついて、私が動けないように再度抱きしめた。
「困りました、これではドキドキして寝れません」
「そうだな。確かにハグしたままはハードルが高い。でももう寝よう……これから一緒に寝るんだから慣れないと。おやすみ」
ランディ様にちゅっとおやすみのキスをされて、ハグは諦め……二人並んだ状態で寝ることになった。触れるか触れないかの距離の手がなんだかもどかしい。
隣に好きな人がいるなんて、寝れるわけない。寝れるわけがない……と思っていたのに、気が付いたら朝だった。何故?自分の神経の図太さが嫌になる。
「おはよう。くくくっ……ぐっすり眠れたようだな」
ランディ様は私の頬をツンツンと突きながら、揶揄うようにそう言った。
「……おはようございます」
「ドキドキして寝れないって言ってたのに、ヴィヴィは嘘つきだな」
「うゔっ、すみません」
「すやすや寝る無防備なところも、可愛くて好きだよ。でも俺のことは男だと常に意識していてくれ」
そう言って甘く唇を吸われ、私は朝っぱらからとろんと蕩けさせられた。
「もちろん意識……してます」
「ならいいけれど」
それからもランディ様に、優しく起こされる日々が続いた。日を追うごとに一緒に眠るのも段々と慣れてきて、手を繋いだり……腕枕をしてもらいながら寝たりと二人の距離は近付いていった。
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