26 / 26
番外編
20歳の誕生日④
しおりを挟む
そこそこご飯を食べ終わり、お母さんが切り分けた誕生日ケーキを配ってくれている時だった。
「弘成くん」と、真面目な顔でお父さんが口を開いた。
弘成さんは「はい」と答えて、姿勢を正す。
お父さんはお酒を飲んでたけど、あんまり酔っ払ってないように見えた。
ちなみに、弘成さんはノンアルコールしか飲んでいない。
「君が挨拶に訪れた二年前から、娘はどんどん明るくなって友だちもできた。この子がこんな風に笑っているのは君のおかげなんだと思っている。娘をこれからもよろしく頼む」
弘成さんの建前みたいに、お父さんは一息でそう言って頭を下げた。
事前に考えてたんだろうか。
弘成さんが「ありがとうございます」と頭を下げ返すと、お父さんはリビングを出ていった。
泣いてた気が、しなくもない。
それはまるで、
「まるで結婚の挨拶みたいね」
考えてたことと全く同じことをお母さんが言ってくれた。
あれ、さっき、お付き合いすることの挨拶だって、言ったよね・・・?
ケーキを食べ終わるとお別れの時間が来てしまう。
家の前でのお見送りが少し寂しい。
「泊まっていけばいいのに」
思わず不満が口から漏れた。
そういうことはダメだったとしても、せっかく彼女になれたのにもうバイバイしないといけないなんて切ない。
できることならもっと一緒にいたいのに。
「そういうこと言わないの。付き合ってるんだから」
弘成さんの手が頭を撫でて、そのまま引き寄せられると唇を奪われた。
もう1回、と離れていく唇を追いかけようとして、邪魔された。
邪魔してくれた弘成さんの手には、小さな箱が握られていて、プレゼントだとすぐに気づく。
受け取って、開けてみた。
シンプルだけど大人っぽいネックレスが、小ぎれいな箱の中にキチンと収まっていた。
安いものじゃないというのがひと目で分かる。
「木札が取れたら着けな」
「これ・・・」
いつから用意してたんだろう?
手土産と違ってそんなに直ぐに買ってこれるものじゃないはずだ。
私が今日告白しに来ることを分かっていて、それにオッケーするつもりで、前々から用意していてくれてたということか。
好き。凄く、凄く好き。
もう我慢の限界で、弘成さんに思い切り抱きついた。
思いを口にする代わりに、力いっぱい抱きしめた。
途方もないくらい長い2年だったけど、寂しさから諦めそうになったこともあったけど、ずっとこの人を好きでいて良かった。
本当に、本当に良かった。
「風邪ひくといけないから、戻りなさい」
弘成さんの優しい声が降ってきて、嫌だったけど仕方なく体を引き剥がす。
「来週末遊びに行っていい?」
「あぁ、待ってる」
そう言って微笑んだ弘成さんは、私の口でなくおでこにキスをして帰って行った。
弘成さんのくれたネックレスには小さな宝石が付いていて、それの正体がムーンストーンだと気づくのはもう少し後になってからだった。
「弘成くん」と、真面目な顔でお父さんが口を開いた。
弘成さんは「はい」と答えて、姿勢を正す。
お父さんはお酒を飲んでたけど、あんまり酔っ払ってないように見えた。
ちなみに、弘成さんはノンアルコールしか飲んでいない。
「君が挨拶に訪れた二年前から、娘はどんどん明るくなって友だちもできた。この子がこんな風に笑っているのは君のおかげなんだと思っている。娘をこれからもよろしく頼む」
弘成さんの建前みたいに、お父さんは一息でそう言って頭を下げた。
事前に考えてたんだろうか。
弘成さんが「ありがとうございます」と頭を下げ返すと、お父さんはリビングを出ていった。
泣いてた気が、しなくもない。
それはまるで、
「まるで結婚の挨拶みたいね」
考えてたことと全く同じことをお母さんが言ってくれた。
あれ、さっき、お付き合いすることの挨拶だって、言ったよね・・・?
ケーキを食べ終わるとお別れの時間が来てしまう。
家の前でのお見送りが少し寂しい。
「泊まっていけばいいのに」
思わず不満が口から漏れた。
そういうことはダメだったとしても、せっかく彼女になれたのにもうバイバイしないといけないなんて切ない。
できることならもっと一緒にいたいのに。
「そういうこと言わないの。付き合ってるんだから」
弘成さんの手が頭を撫でて、そのまま引き寄せられると唇を奪われた。
もう1回、と離れていく唇を追いかけようとして、邪魔された。
邪魔してくれた弘成さんの手には、小さな箱が握られていて、プレゼントだとすぐに気づく。
受け取って、開けてみた。
シンプルだけど大人っぽいネックレスが、小ぎれいな箱の中にキチンと収まっていた。
安いものじゃないというのがひと目で分かる。
「木札が取れたら着けな」
「これ・・・」
いつから用意してたんだろう?
手土産と違ってそんなに直ぐに買ってこれるものじゃないはずだ。
私が今日告白しに来ることを分かっていて、それにオッケーするつもりで、前々から用意していてくれてたということか。
好き。凄く、凄く好き。
もう我慢の限界で、弘成さんに思い切り抱きついた。
思いを口にする代わりに、力いっぱい抱きしめた。
途方もないくらい長い2年だったけど、寂しさから諦めそうになったこともあったけど、ずっとこの人を好きでいて良かった。
本当に、本当に良かった。
「風邪ひくといけないから、戻りなさい」
弘成さんの優しい声が降ってきて、嫌だったけど仕方なく体を引き剥がす。
「来週末遊びに行っていい?」
「あぁ、待ってる」
そう言って微笑んだ弘成さんは、私の口でなくおでこにキスをして帰って行った。
弘成さんのくれたネックレスには小さな宝石が付いていて、それの正体がムーンストーンだと気づくのはもう少し後になってからだった。
13
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
空気感 世界観が好みです
二年後が 楽しみですね❣️