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番外編
花火デート④
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「木札を首から下げたいです」
家に帰るとおじさんにメッセージを送る。
意外にもすぐに返事が帰ってきた。
「考えときます」
また保留かと、ムッとする。
おじさんにも何か考えがあるのかもしれない。だが、引き下がる気はなかった。
「手首だと目立つので友だちに変に思われるかもしれないです」
怒り顔のスタンプと共に送り付けてやった。
おじさんは結構押しに弱い。そして私に少し引け目を感じているらしい。
それを存分に利用してやるのだ。
数秒待った。返事は来ないかと思って、スマホから目を逸らそうとした時だった。
「土曜日に来なさい」
そう画面に表示され、初めてのお呼ばれに思わず「やった!」と小さくガッツポーズを作った。
友だちが出来ると平日はあっという間で、もう金曜日。
今日もまこまことしーちゃんと一緒にお昼ご飯を食べ、食べた後の女子会中だった。
初耳だったのだが、うちの学校で「花火デートは鉄板」らしく、カップルは必ず花火デートをするものらしい。
「良いよねー私も彼氏ほしー」
「私はまこまこと美菜月ちゃんと3人で行きたいけど」
「もー!しーちゃん!愛してるー!」
幼なじみの2人の会話に入れてもらえるのは嬉しいが、少しだけ気後れしてしまう時がある。
「美菜月ちゃんも愛してるよ!」
こういうまこまこのストレートな愛情表現だ。
しーちゃんみたいに「はいはい」と受け流すことも出来ず、抱きつかれるとどうしていいか分からなくなってしまう。
おじさんもこんな気持ちだったのかな・・・。
遠慮がちにまこまこの背中をぽんぽんと叩くと、満面の笑みを向けてくれて、彼女の可愛さにほっこりした。
「まこまこー」
そう声をかけてきたのは、同じクラスの男子だった。
帰りのHRが終わり帰り支度をしていたまこまこは、その男子の元へと向かう。
彼女のあの分け隔てなくみんなと仲良くできるところは凄いと思う。私にはとても無理だ。
少し話をして、何やらニコニコしながら戻ってくるまこまこ。
しーちゃんは少し嫌そうな顔をしていているから、あの表情から何か感じとっているのかもしれない。
その想像通りだったかどうか分からないが、まこまこは私たちのところに来てこう言った。
「日曜日の花火、男子も一緒に行きたいんだって」
男子?と先ほどまこまこに声をかけてた男子を見る。
よく見ると3人の男子が固まってこちらの様子を伺っていて、そのうち1人と目が合った。
「私そういうのめんどいからパス」
「えー、お願いしーちゃん!今年だけだからー!」
しーちゃんは物凄く嫌そうな顔をしているが、まこまこは乗り気のようで「しーちゃん様」と拝んでいる。
私は正直どうでも良かった。ただおじさんと一緒に花火を見たいだけだったから。
だから、「美菜月ちゃんはいいよね!」というまこまこに思わず頷いてしまったのだ。
土曜日。私は朝早くから曲尾神社に来ていた。
夏休みですら涼しかった境内は9月にもなれば肌寒くて、薄い上着を羽織っている。
特に意味はなかったが、なんとなく、お賽銭を入れて手を合わせてみた。
私に呪いを授けた水神様。この神社がいつも涼しいのはあの神様の力のせいなのだろうか。
「嬢ちゃん、早えな」
おじさんの声がして、振り返る。
早起きなくせに寝癖のついた髪の毛が風に揺れている。今日は、タバコを吸っていなかった。
家に帰るとおじさんにメッセージを送る。
意外にもすぐに返事が帰ってきた。
「考えときます」
また保留かと、ムッとする。
おじさんにも何か考えがあるのかもしれない。だが、引き下がる気はなかった。
「手首だと目立つので友だちに変に思われるかもしれないです」
怒り顔のスタンプと共に送り付けてやった。
おじさんは結構押しに弱い。そして私に少し引け目を感じているらしい。
それを存分に利用してやるのだ。
数秒待った。返事は来ないかと思って、スマホから目を逸らそうとした時だった。
「土曜日に来なさい」
そう画面に表示され、初めてのお呼ばれに思わず「やった!」と小さくガッツポーズを作った。
友だちが出来ると平日はあっという間で、もう金曜日。
今日もまこまことしーちゃんと一緒にお昼ご飯を食べ、食べた後の女子会中だった。
初耳だったのだが、うちの学校で「花火デートは鉄板」らしく、カップルは必ず花火デートをするものらしい。
「良いよねー私も彼氏ほしー」
「私はまこまこと美菜月ちゃんと3人で行きたいけど」
「もー!しーちゃん!愛してるー!」
幼なじみの2人の会話に入れてもらえるのは嬉しいが、少しだけ気後れしてしまう時がある。
「美菜月ちゃんも愛してるよ!」
こういうまこまこのストレートな愛情表現だ。
しーちゃんみたいに「はいはい」と受け流すことも出来ず、抱きつかれるとどうしていいか分からなくなってしまう。
おじさんもこんな気持ちだったのかな・・・。
遠慮がちにまこまこの背中をぽんぽんと叩くと、満面の笑みを向けてくれて、彼女の可愛さにほっこりした。
「まこまこー」
そう声をかけてきたのは、同じクラスの男子だった。
帰りのHRが終わり帰り支度をしていたまこまこは、その男子の元へと向かう。
彼女のあの分け隔てなくみんなと仲良くできるところは凄いと思う。私にはとても無理だ。
少し話をして、何やらニコニコしながら戻ってくるまこまこ。
しーちゃんは少し嫌そうな顔をしていているから、あの表情から何か感じとっているのかもしれない。
その想像通りだったかどうか分からないが、まこまこは私たちのところに来てこう言った。
「日曜日の花火、男子も一緒に行きたいんだって」
男子?と先ほどまこまこに声をかけてた男子を見る。
よく見ると3人の男子が固まってこちらの様子を伺っていて、そのうち1人と目が合った。
「私そういうのめんどいからパス」
「えー、お願いしーちゃん!今年だけだからー!」
しーちゃんは物凄く嫌そうな顔をしているが、まこまこは乗り気のようで「しーちゃん様」と拝んでいる。
私は正直どうでも良かった。ただおじさんと一緒に花火を見たいだけだったから。
だから、「美菜月ちゃんはいいよね!」というまこまこに思わず頷いてしまったのだ。
土曜日。私は朝早くから曲尾神社に来ていた。
夏休みですら涼しかった境内は9月にもなれば肌寒くて、薄い上着を羽織っている。
特に意味はなかったが、なんとなく、お賽銭を入れて手を合わせてみた。
私に呪いを授けた水神様。この神社がいつも涼しいのはあの神様の力のせいなのだろうか。
「嬢ちゃん、早えな」
おじさんの声がして、振り返る。
早起きなくせに寝癖のついた髪の毛が風に揺れている。今日は、タバコを吸っていなかった。
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