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本編
第1話 おじさんと縁切り神社
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マジで最悪。
心の中で今日何度目か分からない悪態をつく。
手と足は包帯でグルグル巻きで満身創痍だというのに、私は掃除をさせられていた。
「ほらほら、ここまだ汚れてるぞー」
させているのはもちろんあのおじさんだ。
タバコをふかしながら、見張りのようにずっとこちらを見ている。
あの後、怪我をした幼気な女子高生に、あのおじさんはなんと労働しろと言ってきたのだ。
まぁ、手当をしてくれた事だけは感謝している。だがそれにしても、あんなボロい祠を弁償しろなんて当たり屋みたいな話だ。
しかもあれはどう考えても事故で、むしろあんな危ない場所を放置していたこのおじさんに慰謝料を払って欲しいくらいなのに。
弁償できないなら労働なんて、いつの時代だ。
「手が止まってるぞー」
自分は何もしないくせに、さっきから偉そうに指示を出してくるのがほんとにムカつく。
このおじさんしかいないという神社は無駄に広くて、箒をかけるだけでも大変だ。
「おじさんもやれば早く終わるんじゃないの」
「おじさんはさっきまで肉体労働してたから疲れてんの」
肉体労働とは多分、私が壊してしまった祠の片付けのことだろう。
絶対あれよりこっちの方が大変なのに。
自分がサボりたいがためにひと回り以上年下の女の子を働かせているのだ、このおじさんは。
ムッとしながらも、とりあえず手を動かす。
体で払えと言われた時はなんてヤクザなんだと思ったが、掃除だけですむなら親にも学校にもバレない。
下手に大ごとにされるよりはマシだった。
おじさんに鬱陶しく見張られながら、黙々と掃除をする。
一通りの掃除が終わった頃にはお昼のチャイムが聞こえてきた。
「ねぇ、おじさん」
「お腹すいたんだけど」と言おうとおじさんを探したが、いつの間にかその人の姿は消えていた。
逃げるチャンスかもしれない。でも、お腹がすいてるし、それにどこからかいい匂いがしてくる。
もしあのおじさんが私のお昼ご飯を作ってくれてるとしたら、帰るのはもったいない気もする。
・・・いったん様子だけ見に行って見ようかな。
匂いを辿ると、小さな家のような建物があった。この匂いは・・・ラーメン?
「お、嬢ちゃん、昼飯できてるぞ」
ちょうど建物から出てきたおじさんに見つかってしまう。
おじさんの手料理。
抵抗はあったが、匂いからして美味しくないということはなさそうだ。
おいでおいでと手招きさる子ども扱いが物凄く不服ではあったが、食べ物には罪は無い。
おじさんの後に続いて建物に入る。
家と言うよりは宿泊施設みたいで、広い土間にダイニングキッチンがあった。
年季の入ったテーブルの上にはラーメン丼が2つ。
お店のように美味しそうなラーメンにお腹がグーと鳴ってしまう。
「こっちは請求しねぇから遠慮なく食えよ」
おじさんが席に着く。
私の席は端向かいになっていて、見た目の割に女子に気を使えるおじさんらしい。
席に着いて手を合わせる。恐る恐る一口だけ口に入れて、私のこのおじさんへの好感度が一気に上がることになる。
信じられないくらい美味しいラーメンだったのだ。
労働の後に絶品のラーメンをお腹いっぱい食べて、私は小さな幸せを感じていた。
食器は洗わなくていいと言われたし、少し休憩していろと言われて、ラーメンの余韻を味わいながら外を眺める。
この神社、曲尾神社は地元では有名な縁切り神社なのだが、実は有名というのは悪い意味で、参拝すると縁は切れるが参拝した本人にも必ず悪いことが起こるといういわくがあるのだ。
それでもと思い覚悟して来たにも関わらず、来てみれば普通の神社で、いたのはタバコ臭いが料理上手なおじさん1人だけ。
境内はのどかだし、木々に囲まれているからか空気はひんやりしていて別世界みたいだし。
「ん?何あれ?」
窓からはよく見えなかったが、なにか大きくて黒いものが一瞬だけ見えた気がした。
もしかして、熊?いやでもいくら田舎とはいえこの辺りに熊はいないか。
猪とか、猿?何だったとしても野生動物だったとしたら危ない。
「お待たせー」
ちょうどいいタイミングでおじさんが戻ってきた。
「おじさん、ここ危ない生き物いる?」
「危ない生き物?あータヌキは出るかも」
おじさんは窓の外を見ながら答える。
しっかりと見てないとはいえ、あのサイズのタヌキはありえない。見間違いだったんだろうか。
「嬢ちゃん手出して」
「いや」
胃袋を掴まれたとはいえ、おじさんはおじさんだ。スキンシップなんてNGだと、思い切り顔を顰めて見せてやる。
「えぇ~」
困った顔で頬を掻くおじさん。でもあまりに困っていそうだったので、話だけなら聞いてあげてもいいかなと思った。
心の中で今日何度目か分からない悪態をつく。
手と足は包帯でグルグル巻きで満身創痍だというのに、私は掃除をさせられていた。
「ほらほら、ここまだ汚れてるぞー」
させているのはもちろんあのおじさんだ。
タバコをふかしながら、見張りのようにずっとこちらを見ている。
あの後、怪我をした幼気な女子高生に、あのおじさんはなんと労働しろと言ってきたのだ。
まぁ、手当をしてくれた事だけは感謝している。だがそれにしても、あんなボロい祠を弁償しろなんて当たり屋みたいな話だ。
しかもあれはどう考えても事故で、むしろあんな危ない場所を放置していたこのおじさんに慰謝料を払って欲しいくらいなのに。
弁償できないなら労働なんて、いつの時代だ。
「手が止まってるぞー」
自分は何もしないくせに、さっきから偉そうに指示を出してくるのがほんとにムカつく。
このおじさんしかいないという神社は無駄に広くて、箒をかけるだけでも大変だ。
「おじさんもやれば早く終わるんじゃないの」
「おじさんはさっきまで肉体労働してたから疲れてんの」
肉体労働とは多分、私が壊してしまった祠の片付けのことだろう。
絶対あれよりこっちの方が大変なのに。
自分がサボりたいがためにひと回り以上年下の女の子を働かせているのだ、このおじさんは。
ムッとしながらも、とりあえず手を動かす。
体で払えと言われた時はなんてヤクザなんだと思ったが、掃除だけですむなら親にも学校にもバレない。
下手に大ごとにされるよりはマシだった。
おじさんに鬱陶しく見張られながら、黙々と掃除をする。
一通りの掃除が終わった頃にはお昼のチャイムが聞こえてきた。
「ねぇ、おじさん」
「お腹すいたんだけど」と言おうとおじさんを探したが、いつの間にかその人の姿は消えていた。
逃げるチャンスかもしれない。でも、お腹がすいてるし、それにどこからかいい匂いがしてくる。
もしあのおじさんが私のお昼ご飯を作ってくれてるとしたら、帰るのはもったいない気もする。
・・・いったん様子だけ見に行って見ようかな。
匂いを辿ると、小さな家のような建物があった。この匂いは・・・ラーメン?
「お、嬢ちゃん、昼飯できてるぞ」
ちょうど建物から出てきたおじさんに見つかってしまう。
おじさんの手料理。
抵抗はあったが、匂いからして美味しくないということはなさそうだ。
おいでおいでと手招きさる子ども扱いが物凄く不服ではあったが、食べ物には罪は無い。
おじさんの後に続いて建物に入る。
家と言うよりは宿泊施設みたいで、広い土間にダイニングキッチンがあった。
年季の入ったテーブルの上にはラーメン丼が2つ。
お店のように美味しそうなラーメンにお腹がグーと鳴ってしまう。
「こっちは請求しねぇから遠慮なく食えよ」
おじさんが席に着く。
私の席は端向かいになっていて、見た目の割に女子に気を使えるおじさんらしい。
席に着いて手を合わせる。恐る恐る一口だけ口に入れて、私のこのおじさんへの好感度が一気に上がることになる。
信じられないくらい美味しいラーメンだったのだ。
労働の後に絶品のラーメンをお腹いっぱい食べて、私は小さな幸せを感じていた。
食器は洗わなくていいと言われたし、少し休憩していろと言われて、ラーメンの余韻を味わいながら外を眺める。
この神社、曲尾神社は地元では有名な縁切り神社なのだが、実は有名というのは悪い意味で、参拝すると縁は切れるが参拝した本人にも必ず悪いことが起こるといういわくがあるのだ。
それでもと思い覚悟して来たにも関わらず、来てみれば普通の神社で、いたのはタバコ臭いが料理上手なおじさん1人だけ。
境内はのどかだし、木々に囲まれているからか空気はひんやりしていて別世界みたいだし。
「ん?何あれ?」
窓からはよく見えなかったが、なにか大きくて黒いものが一瞬だけ見えた気がした。
もしかして、熊?いやでもいくら田舎とはいえこの辺りに熊はいないか。
猪とか、猿?何だったとしても野生動物だったとしたら危ない。
「お待たせー」
ちょうどいいタイミングでおじさんが戻ってきた。
「おじさん、ここ危ない生き物いる?」
「危ない生き物?あータヌキは出るかも」
おじさんは窓の外を見ながら答える。
しっかりと見てないとはいえ、あのサイズのタヌキはありえない。見間違いだったんだろうか。
「嬢ちゃん手出して」
「いや」
胃袋を掴まれたとはいえ、おじさんはおじさんだ。スキンシップなんてNGだと、思い切り顔を顰めて見せてやる。
「えぇ~」
困った顔で頬を掻くおじさん。でもあまりに困っていそうだったので、話だけなら聞いてあげてもいいかなと思った。
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