タバコと木札

藤ノ千里

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導入

過去作SS

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※読み飛ばし可。
ーーー
 初恋の相手は猫だった。
 小学五年生くらいだったと思う。
 放課後、近所の公園で、母が帰ってくるまでの少しの時間を慰めてくれた、大きなサビ猫。
 交際期間は5ヶ月間。
 ある日突然、会えなくなった。
 1ヶ月後にひょっこりと現れた彼の首には、かわいいハートのついた首輪があった。
 丸っこい字で「かさぶた」と書いてあった。
 私のにゃん太なのに。
 首輪だって全然似合ってないのに。
 私の方が絶対好きなのに。
 それなのににゃん太は、その日以来二度と私に会いに来てはくれなかった。

 次に好きになったのは、ふわふわのゴールデンレトリバー。
 中学校への通学路の途中に住んでた、人懐こい男の子。
 こっちはすごく短くて、1ヶ月未満の恋だった。
 高校生のお姉さんに尻尾を降っているところを目撃してしまったのだ。
 誰にでもあの甘えた声を出すのかと思ったら、一緒にいられる自信がなくなった。
 そもそもお付き合いをしていたかと言われると微妙なところだったけれど。

 次は、高校で飼育していたうさぎさん。
 あまり人懐こくない子だったけど、半年の片想いの後ついに手からキャベツを食べてくれた。
 けれど、交際し始めた次の日、別のうさぎと仲良くしてる現場に遭遇してしまった。
 メスだというのは先に教えて欲しかった。

 そして4度目。
 高校三年になった春に、桜とともに訪れた40歳既婚子ありの社会科教師。
 愛嬌のある寝癖と、くたびれた服。
 月曜日にはちゃんとしてるのに、2~3日で面倒くさくなって金曜日には無精髭になっちゃうダメな大人。
 ひと月で恋に落ちた。

 荻野先生、あなたが好きです。
 私とお付き合いをしていただけませんか?
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