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第二章 道明様との共謀
第十三話 心を読む力の悪用方法
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お話というのは、お坊様方を把握するために自己紹介をして欲しいという建前にした。
まずやって来たのは、起こす前から起きてたうちの3人。
助三さん34歳。松五郎さん25歳。喜三郎21歳だ。
比較的イケメンの部類に入る3人組。驚いたのは助三さん以外は修行をしたことが無いということか。松五郎さんは実家のゴリ押しだったらしいが、喜三郎は師匠が「良い」と言ったかららしい。
彼の師匠は源助さん。と、言うことは源助さんも警戒する必要があるのか。
にこやかな雰囲気のまま一通り話を終え、解散となる。
「喜三郎様はお残りください」
にっこりと言う私を、喜三郎は全く警戒していないように見えた。
助三さんと松五郎さんが退席すると部屋には三人だけになる。
道明様に向き合って座る喜三郎と、道明様の隣に座る私。
チラチラと私にばかり視線を向けてくるヤツは、鼻の下が伸びているようにも見えた。
男装しているとはいえ、女の私は華奢で可愛らしく見えるのだろう。正面の絶世の美人より組み敷きやすい方を本能的に選んでいるのだ。本当にクソ野郎だ。
そう、この喜三郎。こいつは年少者に暴行しているクソ野郎のうちの1人だった。
「呼び止めてすまぬな」
「いえ、何なりと」
喋りは道明様に任せて、私は喜三郎に意識を集中させた。案の定私に性欲を向けてやがって反吐が出そうになる。
「私は、この光来寺での折檻を禁じようと思うているのだが、お主はどう思う?」
動揺が走ると共に、喜三郎の脳裏に非道な行いの数々が浮かぶ。本当に最低だ、本当に気持ちが悪い。
「どう、と言われましても・・・」
「お主はどのような折檻が行われているか知っておるか?」
道明様の言葉にその前後のやりとりも浮かぶ。どう見てもいちゃもんをつけているのに、開き直りのような感情があるのが腹立たしい。
あ、でも、これは・・・。
「し、知りませぬ」
今、見えたのが源助さんか。「暇では無い」と文句を言っていたおじさんだ。
道明様の方を向くと、目が合った。小さく頷いてみせると、彼はまた喜三郎に笑顔を向けた。
「では、最後にお主の隠し事を聞いておこうか」
息を飲む喜三郎は、笑ってしまうくらい簡単に隠し事を思い起こしていた。
だが、ひとつひとつが小物のそれでしかない。まだこれじゃあ弱すぎる。
「犯罪でも戒律破りでもなんでも良い。お主が最も知られたくないことを、私に告白するが良い」
無害にしか見えない笑顔で詰め寄る道明様がよほど怖かったのだろう。喜三郎の頭の中は畏怖の感情で占められていて、だがしかし確実に罪の全てを私に教えてくれた。
息を大きく吐きながら、意識を散らして心を読むのを終わらせる。
見たくもないものを沢山見せられて、知りたくないことを沢山知ってしまって、まるで泥水を大量に飲まされたかのような気持ち悪さがあった。
「な、何も、何もございませぬ・・・」
真っ青な顔で首を横に振る喜三郎の姿が、今となっては滑稽に映った。よくもまあそんな事が言えるものだ。
「喜三郎様は子どもをさらって来ております」
青い顔のままの喜三郎がゆっくりとこちらを向く。微笑んであげる余裕はなかった。
「俗世では幼い娘に暴行を加えたこともあるようです」
「何故知っておるのだ・・・!」
私に掴みかかろうとした喜三郎を、道明様が手を上げて制した。そのお顔にはもう笑顔は浮かんでいなかった。
「懲罰房よりは奉行所の方が良いようだの」
「奉行所でしたら喜三郎様のお仲間もお連れした方が良いかと」
力が抜けたようにへたり込む喜三郎に、もう抵抗する意思は残っていない。まずは一人目。
クソ野郎を一人追放出来る事に達成感を感じつつ、あと四人もこんな面倒くさいことをしてやらないといけないことに、また苛立たしい気持ちが沸き起こってきていた。
ちらほらと本堂に現れるお坊様方へ建前で対応しつつ、クソ野郎が現れればその度に弱みを握って脅しをかけていく。
朝ご飯とお昼ご飯を挟んで対応したが、クソ野郎4人を含む10人とのお話が終わってもまだ夕方には早い時間だった。
気持ち悪い記憶と感情ばかりを立て続けに見せられて、叫び出したいくらい最悪な気分だった。でも、まだ終わっていない。
まだ、音を上げる訳には行かない。
開け放たれた戸の向こうに人影が見える。「来たか!」と身構えたが、姿を現したのは一松さんだった。
彼は申し訳なさそうな顔でやってくると、道明様の前に膝を着いた。
「源助様と中吉様は応じそうにありません」
源助さんはともかく、クソ野郎の一人中吉もか!
できることならば今日のうちに全員脅しをかけておきたかったのに、嗅覚が鋭いのか単なる反発心か、どちらにせよ腹が立つ・・・!
「良い、そやつらは追って対処しよう」
「乗り込まないんですか?」
我ながら物騒な提案が口から飛び出した。それほどまでに、私は怒っているのだ。
「小太郎は私と共に来なさい。一松は田助を見張っておれ」
「承知いたしました」
一松さんが駆け足で本堂から出て行く。それを見届けてから、道明様は立ち上がり、私に手を差し伸べてくれた。
「来なさい」
困ったような微笑みは、小太郎ではなくすみれに向けたものだった。
まずやって来たのは、起こす前から起きてたうちの3人。
助三さん34歳。松五郎さん25歳。喜三郎21歳だ。
比較的イケメンの部類に入る3人組。驚いたのは助三さん以外は修行をしたことが無いということか。松五郎さんは実家のゴリ押しだったらしいが、喜三郎は師匠が「良い」と言ったかららしい。
彼の師匠は源助さん。と、言うことは源助さんも警戒する必要があるのか。
にこやかな雰囲気のまま一通り話を終え、解散となる。
「喜三郎様はお残りください」
にっこりと言う私を、喜三郎は全く警戒していないように見えた。
助三さんと松五郎さんが退席すると部屋には三人だけになる。
道明様に向き合って座る喜三郎と、道明様の隣に座る私。
チラチラと私にばかり視線を向けてくるヤツは、鼻の下が伸びているようにも見えた。
男装しているとはいえ、女の私は華奢で可愛らしく見えるのだろう。正面の絶世の美人より組み敷きやすい方を本能的に選んでいるのだ。本当にクソ野郎だ。
そう、この喜三郎。こいつは年少者に暴行しているクソ野郎のうちの1人だった。
「呼び止めてすまぬな」
「いえ、何なりと」
喋りは道明様に任せて、私は喜三郎に意識を集中させた。案の定私に性欲を向けてやがって反吐が出そうになる。
「私は、この光来寺での折檻を禁じようと思うているのだが、お主はどう思う?」
動揺が走ると共に、喜三郎の脳裏に非道な行いの数々が浮かぶ。本当に最低だ、本当に気持ちが悪い。
「どう、と言われましても・・・」
「お主はどのような折檻が行われているか知っておるか?」
道明様の言葉にその前後のやりとりも浮かぶ。どう見てもいちゃもんをつけているのに、開き直りのような感情があるのが腹立たしい。
あ、でも、これは・・・。
「し、知りませぬ」
今、見えたのが源助さんか。「暇では無い」と文句を言っていたおじさんだ。
道明様の方を向くと、目が合った。小さく頷いてみせると、彼はまた喜三郎に笑顔を向けた。
「では、最後にお主の隠し事を聞いておこうか」
息を飲む喜三郎は、笑ってしまうくらい簡単に隠し事を思い起こしていた。
だが、ひとつひとつが小物のそれでしかない。まだこれじゃあ弱すぎる。
「犯罪でも戒律破りでもなんでも良い。お主が最も知られたくないことを、私に告白するが良い」
無害にしか見えない笑顔で詰め寄る道明様がよほど怖かったのだろう。喜三郎の頭の中は畏怖の感情で占められていて、だがしかし確実に罪の全てを私に教えてくれた。
息を大きく吐きながら、意識を散らして心を読むのを終わらせる。
見たくもないものを沢山見せられて、知りたくないことを沢山知ってしまって、まるで泥水を大量に飲まされたかのような気持ち悪さがあった。
「な、何も、何もございませぬ・・・」
真っ青な顔で首を横に振る喜三郎の姿が、今となっては滑稽に映った。よくもまあそんな事が言えるものだ。
「喜三郎様は子どもをさらって来ております」
青い顔のままの喜三郎がゆっくりとこちらを向く。微笑んであげる余裕はなかった。
「俗世では幼い娘に暴行を加えたこともあるようです」
「何故知っておるのだ・・・!」
私に掴みかかろうとした喜三郎を、道明様が手を上げて制した。そのお顔にはもう笑顔は浮かんでいなかった。
「懲罰房よりは奉行所の方が良いようだの」
「奉行所でしたら喜三郎様のお仲間もお連れした方が良いかと」
力が抜けたようにへたり込む喜三郎に、もう抵抗する意思は残っていない。まずは一人目。
クソ野郎を一人追放出来る事に達成感を感じつつ、あと四人もこんな面倒くさいことをしてやらないといけないことに、また苛立たしい気持ちが沸き起こってきていた。
ちらほらと本堂に現れるお坊様方へ建前で対応しつつ、クソ野郎が現れればその度に弱みを握って脅しをかけていく。
朝ご飯とお昼ご飯を挟んで対応したが、クソ野郎4人を含む10人とのお話が終わってもまだ夕方には早い時間だった。
気持ち悪い記憶と感情ばかりを立て続けに見せられて、叫び出したいくらい最悪な気分だった。でも、まだ終わっていない。
まだ、音を上げる訳には行かない。
開け放たれた戸の向こうに人影が見える。「来たか!」と身構えたが、姿を現したのは一松さんだった。
彼は申し訳なさそうな顔でやってくると、道明様の前に膝を着いた。
「源助様と中吉様は応じそうにありません」
源助さんはともかく、クソ野郎の一人中吉もか!
できることならば今日のうちに全員脅しをかけておきたかったのに、嗅覚が鋭いのか単なる反発心か、どちらにせよ腹が立つ・・・!
「良い、そやつらは追って対処しよう」
「乗り込まないんですか?」
我ながら物騒な提案が口から飛び出した。それほどまでに、私は怒っているのだ。
「小太郎は私と共に来なさい。一松は田助を見張っておれ」
「承知いたしました」
一松さんが駆け足で本堂から出て行く。それを見届けてから、道明様は立ち上がり、私に手を差し伸べてくれた。
「来なさい」
困ったような微笑みは、小太郎ではなくすみれに向けたものだった。
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