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第一章 聖女転生
第五話 木村先生
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お福さんのお店の手伝いをしながら、噂を聞きつけて1日1~2人訪ねてくる人を治すという生活は、思ったよりも楽しかった。
お福さんは最初私の人を治す力に驚いていた。が、(とても心苦しかったが)自分でもよく分からないのだと言うと、「本当に早く思い出すといいね」と店内を使うことも快諾してくれた。本っ当にいい人だ。
1週間も経つと近くに住む人にはこの力のことはすっかり知れ渡っていて、「仏さま」と呼ぶ代わりに「聖女さま」と呼ばれるようになっていた。
ご飯を食べに来る人も噂の聖女様を見に来る人がほとんどで、店内は老若男女で歩けないほど賑わうようになった。
なんだか申し訳ない気もしたのだが、お客さんがバケツリレーをしてくれるおかげで逆に接客が楽になったと、お福さんが笑っていたので良しとしよう。
私の力、周りに命名された「聖女の術」の解明は、ほんの少しだけ進んだ。
最も、お腹を下しているのを治せると、熱中症のような状態を治せるというのと、吐き気があるが原因が分からない人は治せないということだけだ。
お金を渡されるのはトラブルになりそうなので受け取っていない。代わりにお福さんの店に来てね!ということをしているからお福さんのお店が暇になる日はもう永遠に来ないかもしれない。
ーーー
「お福の店とやらはこちらか?」
仕込み中のお店に入ってきたその男性は、白髪は多いが背筋が真っ直ぐで、新品のように綺麗な服を着ていた。
番所の人のようにキリッとしていたが、雰囲気はとても柔らかで、正に品がいいという言葉がピッタリなおじいちゃんだった。
「はい、まだ仕込み中ですけど」
最近のお福の店は仕入れもしてないのにスーパー並にどんどん食材が集まってくる。人徳と言いたいが、聖女徳だ。
今も店内のほとんど全ての机を占拠した食材を、お福さんが料理に変えていっているところだった。
そのイケおじいちゃんは店内をぐるりと見渡してから、私の目を真っ直ぐに見て言った。
「聖女というのは君ですね」
「・・・そう、呼ばれてはいますね」
言われ慣れてきた呼び名でも、改めて呼ばれると恥ずかしいもの。
やましい事がある訳ではなくても、緊張から体に力が入るのを感じた。
「聖女の業が使えるのですね」
使えるのか?とか、使えるのですね?ではなく、既に分かっていることを改めて確認するかのようにイケおじいちゃんは言う。
(この人、お医者様だ)
直感的にそう思った。
この地を治めるお殿様は医療に力を入れているらしく、城の近くには医療所というものがあることはお福さんに聞いていたが、町の外れにあるこの近辺に医師が来ることはまずない。
何となく医師は白衣のイメージだったので、ついまじまじとイケおじいちゃんの全身を眺めてしまった。
「私が何者であるか、お分かりになりますか?聖女殿」
「あ、すいません」
慌てて目を逸らしたのを肯定と取ったのか、イケおじいちゃんはため息をつくように笑った。
「お分かりかもしれませぬが、念の為名乗らせていただきたい。私は医療所に務める筆頭医師、木村 玄燈と申します」
この世界のことはよく知らない。
だから、筆頭医師というものが凄い人だと言うのは何となく分かっても、どのくらい凄い人なのかは知らなかった。
昔いたエセ医師たちを追い払ったのが今の医療所の医師であるならば、この人はそれこそ追い出すのも筆頭だっただろう。
そう考えながらも怖い感じがしなかったのは、やましいところがないからか、それとも木村さんが祖父に少し似ていたからか。
「私に何かご用でしょうか?」
この力を初めて使ったその時に、いつかはこうなるだろうと腹は括っていたのだ。
改めて真正面から目を見返すと、木村さんはやっぱり祖父に似ている顔で微笑んだ。
お福さんは最初私の人を治す力に驚いていた。が、(とても心苦しかったが)自分でもよく分からないのだと言うと、「本当に早く思い出すといいね」と店内を使うことも快諾してくれた。本っ当にいい人だ。
1週間も経つと近くに住む人にはこの力のことはすっかり知れ渡っていて、「仏さま」と呼ぶ代わりに「聖女さま」と呼ばれるようになっていた。
ご飯を食べに来る人も噂の聖女様を見に来る人がほとんどで、店内は老若男女で歩けないほど賑わうようになった。
なんだか申し訳ない気もしたのだが、お客さんがバケツリレーをしてくれるおかげで逆に接客が楽になったと、お福さんが笑っていたので良しとしよう。
私の力、周りに命名された「聖女の術」の解明は、ほんの少しだけ進んだ。
最も、お腹を下しているのを治せると、熱中症のような状態を治せるというのと、吐き気があるが原因が分からない人は治せないということだけだ。
お金を渡されるのはトラブルになりそうなので受け取っていない。代わりにお福さんの店に来てね!ということをしているからお福さんのお店が暇になる日はもう永遠に来ないかもしれない。
ーーー
「お福の店とやらはこちらか?」
仕込み中のお店に入ってきたその男性は、白髪は多いが背筋が真っ直ぐで、新品のように綺麗な服を着ていた。
番所の人のようにキリッとしていたが、雰囲気はとても柔らかで、正に品がいいという言葉がピッタリなおじいちゃんだった。
「はい、まだ仕込み中ですけど」
最近のお福の店は仕入れもしてないのにスーパー並にどんどん食材が集まってくる。人徳と言いたいが、聖女徳だ。
今も店内のほとんど全ての机を占拠した食材を、お福さんが料理に変えていっているところだった。
そのイケおじいちゃんは店内をぐるりと見渡してから、私の目を真っ直ぐに見て言った。
「聖女というのは君ですね」
「・・・そう、呼ばれてはいますね」
言われ慣れてきた呼び名でも、改めて呼ばれると恥ずかしいもの。
やましい事がある訳ではなくても、緊張から体に力が入るのを感じた。
「聖女の業が使えるのですね」
使えるのか?とか、使えるのですね?ではなく、既に分かっていることを改めて確認するかのようにイケおじいちゃんは言う。
(この人、お医者様だ)
直感的にそう思った。
この地を治めるお殿様は医療に力を入れているらしく、城の近くには医療所というものがあることはお福さんに聞いていたが、町の外れにあるこの近辺に医師が来ることはまずない。
何となく医師は白衣のイメージだったので、ついまじまじとイケおじいちゃんの全身を眺めてしまった。
「私が何者であるか、お分かりになりますか?聖女殿」
「あ、すいません」
慌てて目を逸らしたのを肯定と取ったのか、イケおじいちゃんはため息をつくように笑った。
「お分かりかもしれませぬが、念の為名乗らせていただきたい。私は医療所に務める筆頭医師、木村 玄燈と申します」
この世界のことはよく知らない。
だから、筆頭医師というものが凄い人だと言うのは何となく分かっても、どのくらい凄い人なのかは知らなかった。
昔いたエセ医師たちを追い払ったのが今の医療所の医師であるならば、この人はそれこそ追い出すのも筆頭だっただろう。
そう考えながらも怖い感じがしなかったのは、やましいところがないからか、それとも木村さんが祖父に少し似ていたからか。
「私に何かご用でしょうか?」
この力を初めて使ったその時に、いつかはこうなるだろうと腹は括っていたのだ。
改めて真正面から目を見返すと、木村さんはやっぱり祖父に似ている顔で微笑んだ。
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