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長かったようで、あっという間に終わった夢のような1日。

あれから、突然クレアのお宅に帰宅してしまい、クレアには驚かれましたが、私が一人で泣きそうな顔をしていたからかもしれません。

ただ一言「ありがとう。」と言って、何も聞かずに迎え入れてくれました。


その後帰宅されたアーデル様には当初予定していた通りに行動出来なかったことを謝罪しましたが、

「これで、肩の荷が降りた。ゆっくり休むといい。」

とそれだけを言われ、自室に入っていかれてしまいました。


私はガーネット家の方々の優しさに触れて、久しぶりにベットの中で声を押し殺してたくさん泣きました。



彼に対して、あのダンスの中だけで、好きという感情が芽生えたわけではなかったと思います。
そもそも、私は恋をしたことがないのですから、この気持ちがなんなのかまだわからないのです。
ですが、気になった彼の好意をこうして蔑ろにしてしまった罪悪感。
好きになったとしても、一緒になることは決してないという絶望感。

何より。
なぜ、私は一般市民なのだろうという悲壮感で私の心はいっぱいになってしまいました。



せっかく没落貴族と言われた辛い時期から抜け出せたのに。


好きな花に囲まれて、ゆったりと仕事をして、今が幸せだったはずなのに。



このたった一夜で、また自分の価値観が変わってしまった。


あの一夜をとびきり素敵な一生の思い出に心に秘めて、今まで通りの日常に戻れると。平凡だけれど、幸福感に満たされた日常を送れるとそう思っていたのに。


でも、そんな日常には、もう、戻れない。


あの日の後悔で、胸がいっぱいになってしまった。


それでも、時間は止まってはくれない。
後悔をしていても、戻ることは出来ないのだから。


たくさん泣いて、心を落ち着かせて、後悔ではなく、次に繋げる悔しさに変えて、乗り越えていこう。



彼からもらった白いカサブランカの花が風でふわりとゆれた。

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