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第1章
酒に任せて
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俺は会社近くの居酒屋で高校のときからのダチと呑んでいた。
「もう我慢の限界だっ…!なんだよアイツぅっ…!完璧イケメンだからって持て囃されてっ…!あぁ!そんなに俺をバカにするのが楽しいか⁉︎そうかっ!本当ヤな奴だなぁっ!なぁ?お前もそう思うだろっ⁉︎」
俺は必死に自分の不幸を嘆いていた。
グビッ
俺はジョッキを一気に傾けた。愚痴は酒がよく進む。
「ちょっ…お前落ち着け…今何杯目だよ。」
「そんなの知るかよ。…なぁ。」
俺は酒に酔いながらも緩んだ表情をキュッと引き締め、真剣な話を切り出した。
「なんだよ?イヤに真剣そーな顔しちやってさ。」
佑太が少し戸惑ったように言った。
「佑太、お前ンとこの会社って俺みたいな奴の中途採用枠あるのか?」
「え?久しぶりの呑みかと思ったら愚痴と転職の話だけかよ…。まぁ、あると思うけど。」
「本当か⁉︎」
「ああ。うちの会社中途採用多いし。」
『やれやれ』と言う感じだったが、俺は容易に次の職場が見つかり、苦しい現状からの解放されたのを感じて、少々ハイになっていた。
「あぁっ!もう本当ありがとなぁっ!すぐそっち行くわぁっ!」
グビビッ
「おい!お前飲み過ぎだって!帰れなくなるぞ!」
「そん時は、お前、送ってくれよ」
「…はぁ。本っ当に世話の焼ける奴だな、お前は。」
もう転職先が決まったも同然だ!アイツのことも呑んで忘れよう!…。あぁ。眠くなってきたな…。
だんだんと佑太の声が遠くに離れる感じがした。
「おいお前!寝んなよ!……っはぁ。もう手遅れか…。」
……。
「すぅ…すぅ…」
「気持ちよさそぉ~に寝やがって。もう全部お前の金で払ってやるからな。」
「お会計6930円になりまーす。」
「じゃあこれで。」
7000円を財布から抜き取り、店員に払った。
「お釣りの70円でーす。ありがとーございましたー。」
カランカラン
佑太は椿を肩にかついで店を後にした。
「…おい、お前の金で勝手に払ったぞぉ?…お前ン家まで送んのダルいから、とりあえず駅まで送るわ。」
「……。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ。お前がまだ軽くてよかったよ。…えっと、これからどうすっかな。電車もう無えし。」
「……椿…さん…?」
佑太は偶然通りかかった青木に声をかけられた。一瞬戸惑いはしたが、すぐに理解した。
「…?あぁ、コイツの知り合い?」
「はい。いつも会社で面倒見てもらってます。」
青木は嬉しそうに言った。
「そうかぁ。でもコイツ今の職場辞める気満々だぞ?」
「えっ…なんで…」
明らかにガッカリした様子だった。
佑太はなんとなく青木が不憫に思えて、椿から聞いた事を話し出した。
「…なんか、完璧イケメンの後輩クンがコイツのことバカにしてきたんだと。今までは耐えてたけど、なんかもう我慢の限界きたーって。そんで俺ンとこの会社に来れるか相談してきた。」
青木は何かに気づいた様子だった。唇をキュッと結んでから言った。
「……多分それ、僕のせいです。僕が椿さんのこと揶揄って…。」
少し間を置いて、眉間にシワを寄せた佑太が静かに問い詰めるように言った。
「あんた、コイツのことムカつくから虐めてたのか?」
「いえっ…断じて僕はっ…!」
青木は必死に抗議した。
「アンタは、何?」
またも静かに聞く。
「僕はっ…椿さんのことが好きなんです!入社した頃からずっと…!こんなかわいい人はいないって…!」
青木はやっと白状ができたからか、想いが溢れたようだった。
「…でも…僕のせいで椿さんが辛い思いをしたなら…もう椿さんには近寄りません。会社も暫く休みます。」
「…っおい!ちょっと待てよ!」
佑太はこの男の想いの強さを知って、居ても立っても居られなくなった。
「何ですか…?」
青木は酷く落胆していた。
「アンタ、コイツのことが好きなんだろ?」
「はい。この世の何よりも好きです。」
佑太はニヤリとした。
「じゃあ、いいことを教えてやるよ。お前、コイツの性格知ってるか?」
「え…?強情でかわい…」
「いや、違うね。コイツはだーいぶ頑固そうだが、意外と押しに弱いんだよ。高校の時だって押しの強い女の子にすぐ折れて付き合ったしな。まぁ、コイツの愛情表現がヘタクソ過ぎて向こうが先に愛想尽かしたけどな。…って言うことで…アンタ、ここから家近い?」
「…え?」
「もう我慢の限界だっ…!なんだよアイツぅっ…!完璧イケメンだからって持て囃されてっ…!あぁ!そんなに俺をバカにするのが楽しいか⁉︎そうかっ!本当ヤな奴だなぁっ!なぁ?お前もそう思うだろっ⁉︎」
俺は必死に自分の不幸を嘆いていた。
グビッ
俺はジョッキを一気に傾けた。愚痴は酒がよく進む。
「ちょっ…お前落ち着け…今何杯目だよ。」
「そんなの知るかよ。…なぁ。」
俺は酒に酔いながらも緩んだ表情をキュッと引き締め、真剣な話を切り出した。
「なんだよ?イヤに真剣そーな顔しちやってさ。」
佑太が少し戸惑ったように言った。
「佑太、お前ンとこの会社って俺みたいな奴の中途採用枠あるのか?」
「え?久しぶりの呑みかと思ったら愚痴と転職の話だけかよ…。まぁ、あると思うけど。」
「本当か⁉︎」
「ああ。うちの会社中途採用多いし。」
『やれやれ』と言う感じだったが、俺は容易に次の職場が見つかり、苦しい現状からの解放されたのを感じて、少々ハイになっていた。
「あぁっ!もう本当ありがとなぁっ!すぐそっち行くわぁっ!」
グビビッ
「おい!お前飲み過ぎだって!帰れなくなるぞ!」
「そん時は、お前、送ってくれよ」
「…はぁ。本っ当に世話の焼ける奴だな、お前は。」
もう転職先が決まったも同然だ!アイツのことも呑んで忘れよう!…。あぁ。眠くなってきたな…。
だんだんと佑太の声が遠くに離れる感じがした。
「おいお前!寝んなよ!……っはぁ。もう手遅れか…。」
……。
「すぅ…すぅ…」
「気持ちよさそぉ~に寝やがって。もう全部お前の金で払ってやるからな。」
「お会計6930円になりまーす。」
「じゃあこれで。」
7000円を財布から抜き取り、店員に払った。
「お釣りの70円でーす。ありがとーございましたー。」
カランカラン
佑太は椿を肩にかついで店を後にした。
「…おい、お前の金で勝手に払ったぞぉ?…お前ン家まで送んのダルいから、とりあえず駅まで送るわ。」
「……。」
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「はぁ。お前がまだ軽くてよかったよ。…えっと、これからどうすっかな。電車もう無えし。」
「……椿…さん…?」
佑太は偶然通りかかった青木に声をかけられた。一瞬戸惑いはしたが、すぐに理解した。
「…?あぁ、コイツの知り合い?」
「はい。いつも会社で面倒見てもらってます。」
青木は嬉しそうに言った。
「そうかぁ。でもコイツ今の職場辞める気満々だぞ?」
「えっ…なんで…」
明らかにガッカリした様子だった。
佑太はなんとなく青木が不憫に思えて、椿から聞いた事を話し出した。
「…なんか、完璧イケメンの後輩クンがコイツのことバカにしてきたんだと。今までは耐えてたけど、なんかもう我慢の限界きたーって。そんで俺ンとこの会社に来れるか相談してきた。」
青木は何かに気づいた様子だった。唇をキュッと結んでから言った。
「……多分それ、僕のせいです。僕が椿さんのこと揶揄って…。」
少し間を置いて、眉間にシワを寄せた佑太が静かに問い詰めるように言った。
「あんた、コイツのことムカつくから虐めてたのか?」
「いえっ…断じて僕はっ…!」
青木は必死に抗議した。
「アンタは、何?」
またも静かに聞く。
「僕はっ…椿さんのことが好きなんです!入社した頃からずっと…!こんなかわいい人はいないって…!」
青木はやっと白状ができたからか、想いが溢れたようだった。
「…でも…僕のせいで椿さんが辛い思いをしたなら…もう椿さんには近寄りません。会社も暫く休みます。」
「…っおい!ちょっと待てよ!」
佑太はこの男の想いの強さを知って、居ても立っても居られなくなった。
「何ですか…?」
青木は酷く落胆していた。
「アンタ、コイツのことが好きなんだろ?」
「はい。この世の何よりも好きです。」
佑太はニヤリとした。
「じゃあ、いいことを教えてやるよ。お前、コイツの性格知ってるか?」
「え…?強情でかわい…」
「いや、違うね。コイツはだーいぶ頑固そうだが、意外と押しに弱いんだよ。高校の時だって押しの強い女の子にすぐ折れて付き合ったしな。まぁ、コイツの愛情表現がヘタクソ過ぎて向こうが先に愛想尽かしたけどな。…って言うことで…アンタ、ここから家近い?」
「…え?」
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