カミリア・ドリーム・コンプレックス

緒方ししとう

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第1章

希望のない片想い

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ー20分くらい経った。大分落ち着いた。青木のことは絶対許さねぇけど。
壁に掛けられたジャケットを着て、自分の席に向かう。
これもアイツが脱がせたと思うと癪だ。「はぁ…。」ため息混じりに席につく。
そうすると、隣の席の小林さんに声をかけられた。

「あの、佐々木さん大丈夫ですか?倒れたって聞いて心配で…。」
「あぁ。もう大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」

やっぱり小林さんと話すのは好きだ。同期の中で一番見た目も声も可愛くて、優しい。青木とは大違いのこの人に、俺は密かに恋心を抱いている。そして前の席替えで隣の席になってしまって、思わず顔が緩m…

「椿さん!元気になったんですね!良かったです!」

俺と小林さんの顔の間に青木の顔が割り込んできた⁉︎
小林さんはびっくりして口に手を当てていた。

「まぁ、びっくりした。青木君、どうしたの?」

柔らかい雰囲気で小林さんは聞いた。

「いや、椿さんが元気になったと聞いたので来ただけです。」

青木は至って真面目そうに言った。俺はさっきの事で腹が立ったので、少しばかり意地悪をしてやろうと思った。

「おい青木ィ。さっさと席戻れよ。お前にゃ俺の事なんざ関係ねぇだろ?迷惑してんだよ。あと下の名前で呼ぶな。佐 々 木 さん、だろ?」

これで気が済んd…

「まぁまぁ、佐々木さん。青木君も悪気はなかったんだと思うし。ね?もう少し居させてあげてもいいんじゃないですか?」

俺は少し気に食わない顔をしながら言った。

「あぁ…そうですね…。悪かったな、青木。」

皆んな青木の声も顔もいいからって、営業成績もいいからって…。これじゃあ俺の方が惨めじゃねぇか。しかも、小林さんの前で…。もう本当にここを辞めようか。そんな考え事をしていると、青木が気安く話しかけてきた。
「椿さん、明日から一緒に出勤してもいいですか?」
「…っ。」

本当に狡い奴だ。いつもなら『駄目だ』で済むはずなのに…。でも、今は認めざるを得ない。

「…勝手にしろ。」 
「やったぁ!」

そう言うとアイツは軽い足取りで自分の席に戻った。
なんだよ、アイツ。自分より劣っている先輩をバカにするのが楽しいからって。そんなに俺をバカにするのが楽しいのか。今の俺には怒りより悲しみと諦めの方が大きかった。

少し間を置いて、小林さんが切り出した。きっと俺の作った雰囲気のせいだと思う。

「…さぁ、そろそろ仕事に戻りましょうか!大分話しちゃいましたし。」

あぁ。小林さんの笑顔が眩しい。少しは頑張ろうかな。

その日の仕事は小林さんのお陰で、なんとか完遂できた。

ープルルルル…『もしもし?なんだよ急に。』
「あぁ、少し話したいことがあってな。ちょっとだけ、天瀬の近くで呑まないか?」
『…あぁ。いいよ。』ー…
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