年下の旦那様!

小牧タミ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

年の差夫婦の食事改善のどうでもいい話

しおりを挟む
最近あることで悩んでいる……。

ひと回り年下の旦那と結婚して十年目。
これだけ年が離れていると、ジェネレーションギャップでモヤモヤすることはなく、開き直って“私の時は~”なんて昭和世代あるあるの“昭和は良かった!”自慢を結婚した当初はよくしていた。
旦那は一応昭和生まれではあるけれど、ほぼ平成よりで年代のズレもあるし、旦那の知らないこともいっぱいある。それでも嫌な顔一つしないで聞いてくれるのだ。

そんな私たち夫婦の共通の趣味は“食べること”と“食を楽しむこと”である。

《食の楽しみ方は人それぞれということで》

食べることが大好きで、旦那はラーメンをこよなく愛し、私はカレーが大好きで、休みの日はラーメンかカレーもしくはその時食べたいもの、行ってみたい店があればレッツゴーという感じで夫婦の時間を過ごしている。


「美味しい!ここを選んで良かったね」
「うん!美味しい。次も来たいね!」

というぐあいに。


これはノロケでもなんでもなく、とにかく旦那は優しい!
滅多に怒らないし(怒ったところを見たことがない)穏やかな性格だ。
そんな旦那がなぜ私みたいなひと回り年上のオバサンと結婚したのか……未だに謎である。
自分で言うのもなんだけど私はわがままで気分屋。
わがままといっても自分勝手に旦那を振り回したり、ブランド品をねだるわけでもない。ただ自分の時間は確保したいタイプで、それを邪魔されると機嫌が悪くなり……家事も気が向かないとやらない……こともある。
一応……妻として家のことは最低限やってはいるけれど、子供はいないし世間一般の主婦に比べたら気楽なグータラ主婦だ。それでも旦那は文句を言わないし、なんなら私の体のことを気遣ってくれる。

そんな優しくて文句を言わない旦那と、結婚して初めての“夫婦の危機”というものに直面していた。
それは……ここ数年のラーメンやカレーという高カロリーを摂取したこと……だけが原因ではないが、旦那が健康診断でメタボと診断されたこと。
ちなみに私は高血圧で引っ掛かった……。

そうすると否が応でも健康管理、食事改善、適度な運動等をしていかないといけない。
ただ先に言った通り私と旦那は食べることが大好きで、唯一の共通点でもある。
その共通点が憚らずも消えてしまうかもしれないのだ。
それでも心を鬼にして塩分控えめ低カロリーの食事に切り替えた。毎日どんぶり茶碗二杯のご飯は普通サイズの茶碗に替え、毎週のように食べていたラーメンやカレーも隔週にした。
ただ普段から味の濃いものを食べていたから、ガラリと味が変わって何を食べても美味しく感じることはなく、胃袋も満足しなくなった。

「もっとこってりしたものが食べたいよ!」
「私もだけど……このままだと本当にヤバいって言われたし……」
「朝も味の薄い卵焼きと魚に納豆……減塩の味噌汁じゃ……力でないし……」
「わかるけど……今ちゃんとしておかないと、今後もっと大変なことになるかもしれないし……隔週でもラーメンは食べてるんだから、今は頑張ろう……ね」
「う……ん」

納得はしてないものの、出された食事を食べる旦那の顔からは今までみたいに“幸せ~”という私の大好きな“ホクホク顔”は消えてしまっていた。
もちろん体のことは大事だし、健康で長生きするには多少の我慢は必要だ。
けれど……“食べることが生き甲斐”みたいな私たちにとって、それが本当に正しいのか……? と考えてしまう。

しばらくして、メタボ健診に再度訪れた。
なぜかメタボの数値が上がっていた。
あれだけ食事に気を遣い、ラーメンを食べる回数を減らしたのに……なぜ? と私は頭を捻った。
心当たりがあるとすれば「外でラーメン食べてるでしょう!せっかくお弁当を持たせてるのに」と……帰ってから旦那と喧嘩になった。

結婚して十年……初めての喧嘩かもしれない。

大好きな旦那と大好きな食べ物で喧嘩をするなんて、カレーが食べれないことより悲しい……。

「だって我慢出来なかったんだよ~」
「だって……って、こんなに数値が上がって……前よりひどくなってるじゃない!」
「……僕の体のことを心配して色々気遣ってくれるのは有り難いし嬉しいけど……いきなり病院食みたいな食べ物は辛いよ……僕も料理の勉強するからさ、色々工夫して少しずつ体を慣らしていこうよ……ね?」

“病院食”

そうか病院食だったんだ……。
妙に納得させられる形で旦那に諭されてしまった。
「……うん、わかった」と、私はすんなりと頷いた。
「わかってくれた? ありがとう!」
旦那の嬉しそうな笑顔に私はハッとした。
そうだ!私は旦那のこの笑顔が見たくて今までご飯を作ってきたんだ。
それなのに、病気のことを言われて焦ってしまって。順番的には私が先に逝くと思っていたから、もし万が一旦那が先に逝ってしまったら……と怖くなったのだ。
気づかないうちに“食”に対しての自分たちの考え方を忘れていた。

“食は楽しく”が、いつの間にか“食は塩分控えめ低カロリーなもの”になっていて、それさえ食べてれば大丈夫と思い込んでしまっていた。
旦那の気持ちを考えもせずに……。
これからも食事改善は続けないといけないけれど、私たち夫婦のベースは“食”これを忘れないように“二人で美味しい料理”を作っていきたい。



**



「今回の肉料理はあっさりだけど美味しくできたよ!」
「ほんとだ!じゃあ今度はお魚を使った料理を考えてみる?」
「魚いいね!」

食べることが大好きな私たち、なんだかんだと“食事改善”を楽しんでいる。

年下の旦那様の為にも長生きしないとね!

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

衛星のスタジォーネ

gaction9969
ライト文芸
衛星のように廻る、それが人と人との絆、人生というものなのかも知れません……(誰

十年と。恋と。【声劇台本】【二人用】

マグカップと鋏は使いやすい
ライト文芸
十年振りに再会して、『えぇ、あの時の!?』っていうシチュエーションで書きたかったのですが、いろいろ思いついてしまったのでそれぞれの形にしました。 読み切りなので、それぞれの話は繋がっていません。 のんびり続けていこうと思ってます。 性別不問です。 その場合は一人称や語尾の変更をお願いいたします。 動画・音声投稿サイトに使用する場合は、使用許可は不要ですが一言いただけると嬉しいです。 大変喜びます。 自作発言、転載はご遠慮ください。 著作権は放棄しておりません。 使用の際は作者名を記載してください。 性別不問、内容や世界観が変わらない程度の変更や語尾の変更、方言等構いません。 □ 再会。 十年後の再会の話。 □ 大人になったら。 『大人になったら、結婚しろよ』 小さい頃に言ったセリフ。大人になった今、再会して…… □年の差。 年の差カップルの、何気ない日常会話。

去りゆく彼女と、どこにもいけない僕の話

白河 夜舫
ライト文芸
幼なじみの美羽と誠は学年が一つ違うが、生まれた時からほとんど一緒に過ごしてきた。 美羽が高校3年生の夏、ある落とし物を拾う。 その落とし物をめぐって、二人の関係は静かに動き出していく。

ラムネ

おっくん
ライト文芸
智也くんはラムネのお菓子で実験します。

帰るための代償

ゆーた
ライト文芸
東京に住む俊佑は、高校をサボり、同じクラスの卓哉と遊びに行った。帰りの電車でふと目を覚ましたら、遠く離れた、埼玉の大宮駅にいた。乗り越し料金を払い、所持金は十円のみ。携帯も使えない。距離なども分かるはずもなく、実際は歩いて帰れなくもない距離だが、果てしなく遠い道のりに見えた。親や担任にサボったことを知られるわけにはいかない。タイムリミットまであと四時問。成す術も無い俊佑はどうなってしまうのか。究極の選択を強いられるが、その出した答えにより思わぬ展開へ。俊佑と卓哉の友情が起こした奇跡。どんな過酷な状況でも冷静であれ。早まって、道を間違えるな。そんなメッセージも込められています。

卒業式は終わらない

木瓜
ライト文芸
「君が来るまで、待ってるから」 卒業式。 それは、かつての自分に別れを告げ、 蒼き空へと羽ばたく、旅立ちの日。 そして、新たな空で、新たな翼を育みながら、 人は何度も、その卒業の日を迎えるのです。 彼らの旅は、始まったばかり。 卒業式は、まだ終わりません。 今宵、上映されるは、先天的な病に苦しみながらも、級友との卒業式を望み続けた者と、 病に苦しむ友を、最後まで待ち焦がれた者の二人が織り成す、至極の友情物語。 二人の翼が、蒼き大空へと旅立つ、その時までどうかごゆるりとおくつろぎ下さい。

ぼくは君を助けることができない

銀じゃけ
ライト文芸
本当はぼくが助けてあげたかった… ちょっと切ないSSいかがですか? ※この作品はノベプラでも公開しています。

翔君とおさんぽ

桜桃-サクランボ-
ライト文芸
世間一般的に、ブラック企業と呼ばれる会社で、1ヶ月以上も休み無く働かされていた鈴夏静華《りんかしずか》は、パソコンに届いた一通のメールにより、田舎にある実家へと戻る。 そこには、三歳の日向翔《ひなたかける》と、幼なじみである詩想奏多《しそうかなた》がおり、静華は二人によりお散歩へと繰り出される。 その先で出会ったのは、翔くらいの身長である銀髪の少年、弥狐《やこ》。 昔、人間では無いモノ──あやかしを見る方法の一つとして"狐の窓"という噂があった。 静華はその話を思い出し、異様な空気を纏っている弥狐を狐の窓から覗き見ると、そこにはただの少年ではなく、狐のあやかしが映り込む──…… 心疲れた人に送る、ほのぼのだけどちょっと不思議な物語。

処理中です...