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“小箱” を開けた時から、朱綺の人生(せいかつ)は “普通” ではなくなった。
それは微弱ではあるものの “異能の力” が目覚めたからだ。
といっても、あやかしが “見える” ようになっただけ。
しかも “特定のあやかし達” 限定でーー
***
『この教室(クラス)意外と異能の者がおるぞ』
待ちに待った昼休み。珍しく白川礼華の邪魔もなく、心置きなくお弁当が食べれるとウキウキの朱綺の横で、そう言ったのは天だった。
「ふぉゆーふぉと?」
朱綺は玉子焼をモグモグさせながら首を傾げる。
『知らないのか(紅)』
『資料に目を通さなかったな(白)』
『前に学食美味いって言ったのに~(蒼)』
昼休みはクラスの全員がカフェへ行く。わざわざ家から弁当を持ってくるのは朱綺くらいなものだ。したがって教室に残っているのは朱綺とあやかし達だけ。誰もいなくなったことを見計らって、あやかし達もリュックから顔を出してくる。
この煌星学園はただのお金持ち学校というだけでなく、異能(力)を持つ生徒を積極的に受け入れている学校。と朱綺はあやかし達から教えてもらい、裏では “異能者の駆け込み寺” と呼ばれていることを知る。
その時、三つのコースからクラス編成がされていることも初めて知った。
1、A・B は格式、財力ともにトップの生徒のクラス(異能・無能は関係なく)
2、C・D・E は格式、財力ともに中の生徒のクラス(異能・無能は関係なく)
3、F・G に関しては格式、財力関係なく異能の力を持つ生徒(異能の程度による)
「要は、AとBは生粋のお坊ちゃんお嬢様のクラスで、C・D・E はそこそこ良い家の子たちのクラス。F・G は一般人でもそれなりに異能(力)があれば誰でも入れるクラスってこと?」
あやかし達がコクリと首を縦に振る。
近年 “異能の力” を持つ者は珍しくなく、力の大小はあれど何かしらの “力” を持って生まれてくる者も多い。それでも数多いる人間たちの中でみれば、少数派だ。
“皇” の家も微弱ながら異能の力を持つ者が時として生まれてきた家系だ。しかし朱綺の父親もその父、朱綺の祖父も異能の力はなく、ごく普通の人間としてごく普通の生活をしてきた。朱綺に異能の力が目覚めたとき、
『異能の力をどう使うかはその人間次第。心一つで善にも悪にもなる、気をつけなさい』と、何度も言っていた。
幸い “視る” しかできない朱綺には異能を使ってどうこうするというのは初めから無理な話なのだが……。逆に強い異能を持つ人は大変だな……くらいにしか思っていなかった。
だが珍しくなくなったとはいえ、全ての者たちが異能の力に理解を示し受け入れてくれるわけではない……。まだまだ忌み嫌う者が多いことも……否めない。
少しでも異能の力に理解のある者が周りにいればいいが、それは現状難しいのだろう。だから力を持つ子供は幼稚舎から煌星に入る者が多い。中・高で煌星に進学する者や途中で編入してくる者も少なくはないが。一般家庭には色んな意味でハードルの高い学校である。その為、煌星学園には異能の力量や性質による特別推薦、異能が微弱でも特待生制度などが設けられている。
F・G の生徒のほとんどが特別推薦か特待生で入学もしくは編入してくる者ばかりだ。
あやかし達の説明もそぞろに朱綺はタコさんウインナーを頬張る。
「高い寄付金もらってムダに煌びやかにしてるだけじゃなかったんだ。 世の中に貢献して教育にもちゃんとお金使ってるんだね」
『お前は…(紅)』
『相変わらず呑気なやつだ(白)』
『少しは注視してくだされ(天)』
『朱綺は弁当がいちばん大事だし~(蒼)』
紅が珍しく言葉を失っていた。
そんなことを言われても……と、朱綺の中で力のことはそれほど重要なことではなかった。それよりも “あやかし達と暮してる” ことの方が凄いことだと思っている。
あやかし達がいるから力を持つ人間に対して特別視することもなかったし、もし力があったとしても人に危害を加えたり悪い事に使わなければ問題はないのでは? と朱綺は思っている。でもそんな風に考える人間ばかりではないのも知っている。自分の考えを押しつけるつもりはないが、同じ人間なのだから力を持っているというだけで人格を否定されたり、イジメを受けるのはお門違いな気がしないでもない。そうは言っても力があるなしに関わらず人を見下したり、イジメをする人間はどこにでもいるものだ。
「で、このクラスにどれくらい異能の人がいるの?」
『そこまではわからん』
天が踏ん反り返りながら答える。
「紅・白・蒼は異能ってわかるの?」
『どうかな(紅)』
『わからんな(白)』
『わかんな~い(蒼)』
特別視はしたことないが、どういった異能の力があるのか気にはなる。あやかし達から学園の偉大?さを教授された朱綺はふと思いついたことを口にした。
「じゃあ、なんでわたしAクラスなの? さっきの説明でいくとFかGじゃない?」
そう、朱綺がいるのは生粋のお坊ちゃんお嬢様たちがいるAクラスだ。一般の家より劣り “視る” しかできない自分がどうしてAクラスに入れたのか……何かのミスで紛れ込んでしまったのか?
後見人の力添えがあったとしてもさすがに……と朱綺は首を傾げる。
『『『『……』』』』
あやかし達が一斉に口を噤んだ。
「どうしたの、みんな?」
『気にするな(紅)』
『まあ、いいんじゃないか(白)』
『大したことでもあるまい(天)』
『たまたまじゃね~(蒼)』
さっきの質問の時といいはぐらかされた感はあるものの、朱綺はふ~んと軽く流し、鶏ミンチのミニハンバーグを箸で刺して口の中に放り込んだ。
十年前、“小箱” を開けたことで異能の力が目覚めた。
朱綺の両親も祖父も愕然とした。詳しいことはわからないが “朱綺が開けた” ことに問題があったらしい……。
それが何かは教えてもらえず、箱を開けた罰としてあやかし達の世話を任された。当然、視えるのが朱綺しかおらず、あやかし達も懐いていたこともあり必然的にそうなったのだが。
ただ、その辺りから朱綺の記憶の一部が抜け落ちているというのか……あやふやになっている部分があった。
いくら考えても全然思い出せず。その内思い出すかも……と、気づけば十年経っていた。
その後、祖父も亡くなり、一年前には両親も亡くなってしまった……結局 “箱を開けた問題” が何なのかわからずじまいだ。
だが開けたことで何か問題があったことは一度もない。
それに開けたことで、あやかし達と出会えた。両親が亡くなった時は傍にいてくれた。一人ぼっちにならなくて済んだ。逆に開けて良かったと思える。
その分あやかし達はヤンチャで問題児ばかりで大変ではあるが……。
意外な学園の裏話を聞き、あやかし達との楽しい時間も終わりに近づいてきた時、入口でノックのする音が聞こえ朱綺はビクリと肩を震わせた。あやかし達も慌ててリュックの中に滑り込む。
教室に入って来たのは上級生、しかも先日カフェに行く途中で激突しかけた青年だった。
「あれ? 君は…」
「あの、この間はすみませんでした。ちゃんとお詫びも言えなくて…わたし皇朱綺といいます」
「いやいや、僕の方が悪かったんだから。それより今誰かと話してた?」
「…! い、いえお気に入り動画にひとりでツッコミを…」
「この学園では珍しいね。お昼もカフェに行かないで、お弁当?」
机に広げたお弁当箱を物珍しそうな目で見ている。
「え、あ…はい。人の多い所はあまり得意ではなくて…」
「あ、急にごめんね。僕は三年の紫吹三影(しぶきみかげ)。さっき厩舎で飼ってる猫が校舎に逃げ込んだって情報があって、探してるところなんだけど、そしたら教室に人がいたからつい声を掛けてしまって。邪魔して悪かったね」
「いえ、猫見つかるといいですね」
「え、…ありがとう」
三影は戸惑った表情を浮かべつつ、教室を後にした。
「紫吹三影さん…か。名前まで綺麗…」
『『『『あやつ……』』』』
「どうかした…?」
あやかし達の様子がおかしい……そう思っていると、カフェから戻って来た礼華が物凄い形相で迫ってきた。
「ちょっと! 皇さん、三影様と何を話してらしたの!?」
「三影…様?」
「そうよ! 煌星学園の中でも上位に入る由緒正しき家の御令息で令嬢たちの憧れの君よ! そんな方がなぜあなたと!?」
鼻息荒く礼華が朱綺に詰め寄る。
学園の憧れの君が、自分の気に食わない女と一緒にいたのが許せないのだろ……。こんなベタな展開、本当にあるんだと朱綺は思わず吹き出しそうになったが、ここで笑うと礼華を刺激して面倒なことになりかねない。
必死に堪え「きゅ、厩舎で飼ってる猫が校舎に逃げ込んだらしくて…猫見なかった?って聞かれただけです!」と、最後は強めに言い何もありませんアピールをする。
「本当に?」
礼華はジロリと睨む。朱綺はコクコクと頷いた。
「まっ、そうよね! 三影様があなたみたいな人を相手にされるはずがないわ!」
礼華のディスりに慣れてきて、さほど怒りも感じない。とりあえず早く去ってほしいと朱綺はコクコクと頷き続けた。気が済んだ礼華は意気揚々と自分の席に戻っていく。
単純で助かった! と朱綺はほっと胸を撫で下ろす。ふうと何気なしに礼華の後ろ姿を見ると彼女の肩に黒い靄……のようなものが揺れているのが見えた。
え!? 二度ほど瞬きをして朱綺はもう一度礼華を見るが黒い靄はそこにはなく、見間違い?……とさして気に止めることなく食べ終わった弁当箱をリュックにしまった。
この時、礼華に異変が始まっていたなど、朱綺やあやかし達は思いもしていなかったーー
それは微弱ではあるものの “異能の力” が目覚めたからだ。
といっても、あやかしが “見える” ようになっただけ。
しかも “特定のあやかし達” 限定でーー
***
『この教室(クラス)意外と異能の者がおるぞ』
待ちに待った昼休み。珍しく白川礼華の邪魔もなく、心置きなくお弁当が食べれるとウキウキの朱綺の横で、そう言ったのは天だった。
「ふぉゆーふぉと?」
朱綺は玉子焼をモグモグさせながら首を傾げる。
『知らないのか(紅)』
『資料に目を通さなかったな(白)』
『前に学食美味いって言ったのに~(蒼)』
昼休みはクラスの全員がカフェへ行く。わざわざ家から弁当を持ってくるのは朱綺くらいなものだ。したがって教室に残っているのは朱綺とあやかし達だけ。誰もいなくなったことを見計らって、あやかし達もリュックから顔を出してくる。
この煌星学園はただのお金持ち学校というだけでなく、異能(力)を持つ生徒を積極的に受け入れている学校。と朱綺はあやかし達から教えてもらい、裏では “異能者の駆け込み寺” と呼ばれていることを知る。
その時、三つのコースからクラス編成がされていることも初めて知った。
1、A・B は格式、財力ともにトップの生徒のクラス(異能・無能は関係なく)
2、C・D・E は格式、財力ともに中の生徒のクラス(異能・無能は関係なく)
3、F・G に関しては格式、財力関係なく異能の力を持つ生徒(異能の程度による)
「要は、AとBは生粋のお坊ちゃんお嬢様のクラスで、C・D・E はそこそこ良い家の子たちのクラス。F・G は一般人でもそれなりに異能(力)があれば誰でも入れるクラスってこと?」
あやかし達がコクリと首を縦に振る。
近年 “異能の力” を持つ者は珍しくなく、力の大小はあれど何かしらの “力” を持って生まれてくる者も多い。それでも数多いる人間たちの中でみれば、少数派だ。
“皇” の家も微弱ながら異能の力を持つ者が時として生まれてきた家系だ。しかし朱綺の父親もその父、朱綺の祖父も異能の力はなく、ごく普通の人間としてごく普通の生活をしてきた。朱綺に異能の力が目覚めたとき、
『異能の力をどう使うかはその人間次第。心一つで善にも悪にもなる、気をつけなさい』と、何度も言っていた。
幸い “視る” しかできない朱綺には異能を使ってどうこうするというのは初めから無理な話なのだが……。逆に強い異能を持つ人は大変だな……くらいにしか思っていなかった。
だが珍しくなくなったとはいえ、全ての者たちが異能の力に理解を示し受け入れてくれるわけではない……。まだまだ忌み嫌う者が多いことも……否めない。
少しでも異能の力に理解のある者が周りにいればいいが、それは現状難しいのだろう。だから力を持つ子供は幼稚舎から煌星に入る者が多い。中・高で煌星に進学する者や途中で編入してくる者も少なくはないが。一般家庭には色んな意味でハードルの高い学校である。その為、煌星学園には異能の力量や性質による特別推薦、異能が微弱でも特待生制度などが設けられている。
F・G の生徒のほとんどが特別推薦か特待生で入学もしくは編入してくる者ばかりだ。
あやかし達の説明もそぞろに朱綺はタコさんウインナーを頬張る。
「高い寄付金もらってムダに煌びやかにしてるだけじゃなかったんだ。 世の中に貢献して教育にもちゃんとお金使ってるんだね」
『お前は…(紅)』
『相変わらず呑気なやつだ(白)』
『少しは注視してくだされ(天)』
『朱綺は弁当がいちばん大事だし~(蒼)』
紅が珍しく言葉を失っていた。
そんなことを言われても……と、朱綺の中で力のことはそれほど重要なことではなかった。それよりも “あやかし達と暮してる” ことの方が凄いことだと思っている。
あやかし達がいるから力を持つ人間に対して特別視することもなかったし、もし力があったとしても人に危害を加えたり悪い事に使わなければ問題はないのでは? と朱綺は思っている。でもそんな風に考える人間ばかりではないのも知っている。自分の考えを押しつけるつもりはないが、同じ人間なのだから力を持っているというだけで人格を否定されたり、イジメを受けるのはお門違いな気がしないでもない。そうは言っても力があるなしに関わらず人を見下したり、イジメをする人間はどこにでもいるものだ。
「で、このクラスにどれくらい異能の人がいるの?」
『そこまではわからん』
天が踏ん反り返りながら答える。
「紅・白・蒼は異能ってわかるの?」
『どうかな(紅)』
『わからんな(白)』
『わかんな~い(蒼)』
特別視はしたことないが、どういった異能の力があるのか気にはなる。あやかし達から学園の偉大?さを教授された朱綺はふと思いついたことを口にした。
「じゃあ、なんでわたしAクラスなの? さっきの説明でいくとFかGじゃない?」
そう、朱綺がいるのは生粋のお坊ちゃんお嬢様たちがいるAクラスだ。一般の家より劣り “視る” しかできない自分がどうしてAクラスに入れたのか……何かのミスで紛れ込んでしまったのか?
後見人の力添えがあったとしてもさすがに……と朱綺は首を傾げる。
『『『『……』』』』
あやかし達が一斉に口を噤んだ。
「どうしたの、みんな?」
『気にするな(紅)』
『まあ、いいんじゃないか(白)』
『大したことでもあるまい(天)』
『たまたまじゃね~(蒼)』
さっきの質問の時といいはぐらかされた感はあるものの、朱綺はふ~んと軽く流し、鶏ミンチのミニハンバーグを箸で刺して口の中に放り込んだ。
十年前、“小箱” を開けたことで異能の力が目覚めた。
朱綺の両親も祖父も愕然とした。詳しいことはわからないが “朱綺が開けた” ことに問題があったらしい……。
それが何かは教えてもらえず、箱を開けた罰としてあやかし達の世話を任された。当然、視えるのが朱綺しかおらず、あやかし達も懐いていたこともあり必然的にそうなったのだが。
ただ、その辺りから朱綺の記憶の一部が抜け落ちているというのか……あやふやになっている部分があった。
いくら考えても全然思い出せず。その内思い出すかも……と、気づけば十年経っていた。
その後、祖父も亡くなり、一年前には両親も亡くなってしまった……結局 “箱を開けた問題” が何なのかわからずじまいだ。
だが開けたことで何か問題があったことは一度もない。
それに開けたことで、あやかし達と出会えた。両親が亡くなった時は傍にいてくれた。一人ぼっちにならなくて済んだ。逆に開けて良かったと思える。
その分あやかし達はヤンチャで問題児ばかりで大変ではあるが……。
意外な学園の裏話を聞き、あやかし達との楽しい時間も終わりに近づいてきた時、入口でノックのする音が聞こえ朱綺はビクリと肩を震わせた。あやかし達も慌ててリュックの中に滑り込む。
教室に入って来たのは上級生、しかも先日カフェに行く途中で激突しかけた青年だった。
「あれ? 君は…」
「あの、この間はすみませんでした。ちゃんとお詫びも言えなくて…わたし皇朱綺といいます」
「いやいや、僕の方が悪かったんだから。それより今誰かと話してた?」
「…! い、いえお気に入り動画にひとりでツッコミを…」
「この学園では珍しいね。お昼もカフェに行かないで、お弁当?」
机に広げたお弁当箱を物珍しそうな目で見ている。
「え、あ…はい。人の多い所はあまり得意ではなくて…」
「あ、急にごめんね。僕は三年の紫吹三影(しぶきみかげ)。さっき厩舎で飼ってる猫が校舎に逃げ込んだって情報があって、探してるところなんだけど、そしたら教室に人がいたからつい声を掛けてしまって。邪魔して悪かったね」
「いえ、猫見つかるといいですね」
「え、…ありがとう」
三影は戸惑った表情を浮かべつつ、教室を後にした。
「紫吹三影さん…か。名前まで綺麗…」
『『『『あやつ……』』』』
「どうかした…?」
あやかし達の様子がおかしい……そう思っていると、カフェから戻って来た礼華が物凄い形相で迫ってきた。
「ちょっと! 皇さん、三影様と何を話してらしたの!?」
「三影…様?」
「そうよ! 煌星学園の中でも上位に入る由緒正しき家の御令息で令嬢たちの憧れの君よ! そんな方がなぜあなたと!?」
鼻息荒く礼華が朱綺に詰め寄る。
学園の憧れの君が、自分の気に食わない女と一緒にいたのが許せないのだろ……。こんなベタな展開、本当にあるんだと朱綺は思わず吹き出しそうになったが、ここで笑うと礼華を刺激して面倒なことになりかねない。
必死に堪え「きゅ、厩舎で飼ってる猫が校舎に逃げ込んだらしくて…猫見なかった?って聞かれただけです!」と、最後は強めに言い何もありませんアピールをする。
「本当に?」
礼華はジロリと睨む。朱綺はコクコクと頷いた。
「まっ、そうよね! 三影様があなたみたいな人を相手にされるはずがないわ!」
礼華のディスりに慣れてきて、さほど怒りも感じない。とりあえず早く去ってほしいと朱綺はコクコクと頷き続けた。気が済んだ礼華は意気揚々と自分の席に戻っていく。
単純で助かった! と朱綺はほっと胸を撫で下ろす。ふうと何気なしに礼華の後ろ姿を見ると彼女の肩に黒い靄……のようなものが揺れているのが見えた。
え!? 二度ほど瞬きをして朱綺はもう一度礼華を見るが黒い靄はそこにはなく、見間違い?……とさして気に止めることなく食べ終わった弁当箱をリュックにしまった。
この時、礼華に異変が始まっていたなど、朱綺やあやかし達は思いもしていなかったーー
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