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第3話 実力テスト
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「うーん、ターゲットまではわからないな~…。いや、もしかしたらネルちゃんも…」
呆然とする俺をおいて黙々と語るマイケルの口を慌てて抑える。
「まてまてまて!!!!」
うおっと後ろへバランスを崩すマイケルを支えながらマイケルを問い詰める。
「なんなんだよお前!さっきから!」
「なにって…これが俺の能力だし?」
あざとく、冷静に返され俺のパニックは続く。
マイケルはなお続ける。
「俺の能力は透視能力の一種で、相手の心まではいかずともその人の置かれている場所、名前…まあどこまでかはいまいちわかってないんだけどね。」
「なるほど。」
さて、どうする…。俺が暗殺者だなんてばれたのは初めてだし…脅される?の前に俺が脅すか?いっそのこと殺る…?だが喧嘩沙汰でも問題なこの施設で人を殺ったなんてなったら任務どころじゃないだろうしな…。
「もちろん、秘密にしておくよ。」
咄嗟の言葉と内容に俺は勢いよく振り向く。
「えっ…」
「あはは、もしかして、俺が脅すと思った?
ルームメイトにそんなことしないよぉ」
これは…ハッタリ?なのか?なにかすればばらすという脅し?なんだ?なにがしたい?こいつは…
「じゃあ次は俺のこと話そうかな。」
マイケルが腕を組みながらなおもあざといポーズで話続ける。
「えっと生物研究所に所属してるマ・イ・マ・イ、ね?明日がランクナップだからランクはわからないけど。うーん。なに説明すればいいんだろう~。」
「…もういいか。」
俺は咄嗟と判断を下し、その結果常備しているナイフをマイケルの首の前に持って行った。
俺はマイケルの前で残念そうな顔をして首とナイフの首を縮めていく。
「はあ…。こんなことは想像していなかった。」
マイケルの顔は焦っているようにも冷静な態度にも見える。こちらのターンは続く。
「大金は割と欲しかったんだけどな…。
職を失うよりもましだよな。」
鼻で笑ってもみせる。
「まあ、まさかこんな可愛い顔したやつにバレるとは思ってなかったけど…。」
ナイフは首に当たりかけていた。
「じゃ……」
じゃあなと言うつもりが俺のナイフは弾かれていた。
俺は咄嗟の出来事に驚きながらも瞬間移動で相手の後ろに回り首を拘束する。しかしその手さえも翻されマイケルは間をとった。
「可愛いだなんて、嬉しいな~。」
ニコニコと笑ってみせる相手には余裕がうかがえる。
「お願い!ネルちゃん、俺を信じて!
秘密にするからさあ」
「いいよ、殺すし。」
静かに歩み寄っていく。相手は怪しい笑顔で話し出した。
「いいのかなあ~?」
「あ?」
「俺もネルちゃんも国、いや世界の財産だよ?普通の人間とは法においても命の重さも違う。俺を殺したら必ずこの学校の人に目をつけられて、誰かに殺られるだけだよ?
掲示板に載りたいならべつにいいけどね~。」
「お前、なにが目的?」
「だから!俺は!ただ!ネルちゃんと仲良くなりたいだーけ!」
マイケルはためらいなく俺に近づき抱きついてきた。
確かに学校の人たち全員に目をつけられて逃げれるほど俺は強くはない。だが…。
…いや、考えるのはやめよう。
今の時代こいつが俺を暗殺者だなんていっても信じるやつなんていない。いやむしろそれに反応したのがターゲットとなる。
こいつを放っておくのはむしろ好都合か?
俺は手に持っていたナイフを床に落としてマイケルを手で遠ざけた。
「わかった、信じてやるよ。」
マイケルの表情がぱっと明るくなってまたくっついて来ようとするのを手で抑えて止める。
くっそ…まさかいきなりこんなやつに会うとは…今回の仕事舐めてた。
あんな高い報酬ももしかしたら妥当ではないのかと思うほどであった。
「はあ…。」
大きくため息をつき、抑えていた手を離す。
マイケルが喜んで抱きついてきたところで俺は全身の力を抜いた。
もしかしたら報酬がもっと多くてもいいんじゃないか。俺はそういう、成功したときのことばかり考えていた。
結局その日はあまり眠れず、早朝には体を起こし窓の外を眺めていた。
外の景色は綺麗で広大な街並み、その外に昨日建っていた門があり、道路が広がっている。
門のうちには街、森さらには住宅がある。教員たちの家だろうか。
しばらくしてから洗面台へ行き、顔を洗いロッカーを開けてみる。中には二人分のコートがあった。黒を基調とした襟の大きいロングコート。
大きいサイズの方を着てみる。驚いたことにピッタリだった。
髪を整えていたところで、部屋のインターホンがなった。奥の部屋からマイケルの唸るような寝起きの声が聞こえてくる。
「はぁい?」
ドアを開けるとエトとトワの姿があった。
洗面台の部屋の影から三人の様子を見る。
二人は俺と同じロングコートを着ている。これは間違いなく制服のようだ。
「ここって男子寮よね…」
トワがしかめっ面でマイケルを見つめる。
そりゃそうだ。二人のきちっとした制服姿に比べて、マイケルの服装と言えばだぼだぼの部屋着…もちろん女物のパステルピンクなのだから。
「男だよ、そいつ」
「あっネルー!」
「おはようネルちゃん」
「おはよう。」
三人におはようと返事してからマイケルに準備をしろと諭し、待っている間は時間を気にしながらマイケルのことについて当たり障りのない説明をしていた。
「そういや、何時からだっけ?」
「0830にグランド。昨日言ってたでしょ?」
少し不機嫌そうなトワは昨日よりも口数が多い。エトは眠そうにトワに引っ付いてこちらを見上げている。目は相変わらず見えないが、今日はまた違うハットの淵と目があうことでわかるのだ。
「おまたせ~。」
女装に男子用のロングコートの制服を羽織って現れたマイケルに二人ともぎょっとさせて
さっきの俺の説明を理解したように二人向き合って頷いていた。
部屋を出、寮を出てしばらく歩いた別れ道でマイケルと分かれ、三人になったところでエトのいつものお喋りがはじまった。
「可愛い子だったね~っ!ネルのルームメイト!」
「手は出すなよ。」
真顔で正面を向いたまま、トワが俺に言う。
「するかよ、興味ねーよ、あんなつるぺた。」軽い気持ちでその言葉を放った途端、姉妹揃って素早くこっちをにらんだ。
「すみません。」
マフィアのいい女を見慣れてた俺はついついそこを見てしまう。二人のそこを見ると残念なことに皆無。
「…まあさ、顔がよければいいと思うぜ?」
トワが顔を隠しながら暴言を吐いて殴ってくる。まあまあと諭してたらどうやら目的の地に着いたようだ。
グランドの中央に人集りができている。その群の真ん中で昨日の派手な女が点呼をとっていた。女に点呼をとってもらおうとしている数名の列に並ぼうとしたとき、腰のあたりに何かが当たる感覚がした。
見下げると金のパーマのかかったミディアムの綺麗な髪の男…というより男の子が俺を睨んでいた。男が舌打ちをして列から離れていくところを黒いストレートロングの髪を垂らした大人しそうな女が俺に一礼してから後を追っていた。
「保護者かよ。」
文句を言えなかった惜しさに独り言の嫌味を言い放つと同時にエトが俺のコートの端を掴んだ。
「ん?」
「ネル、これ、先生がつけろってさー。」
見るとシンプルな金の丸いバッチ。
周りの人に真似て制服の襟につける。
やがて女が点呼を取り出し、周りにいた全員が集まる。
「全学年いるか。」
昨日の今度はツンとした方が話し出した。
「えー。新入生以外は一度は説明を聞いていると思うが一年ぶりなので一様聞いておいてくれ。新入生は特によく聞くこと。」
一つ咳払いのあと教員は続ける。
「全員、配られたバッチを襟につけてるな。今回ランクを決めるにおいて採点基準はバッチの数とチームバランス、協力性、交渉力が主だ。スタートと同時にグランドとその奥の森までバラバラに教員によって飛ばされる。そこからは好きなやつとバッチを奪い合うというわけだ。他のチームと協力してもいい。怪我などにおいては一切保証しない。入学要項にあったのでそこはわかってもらっていると思っている。」
一同がざわつく。つまり死んでも保証はしないが殺しても保証はしないということか。
マイケルの言葉を思い出しながらその言葉の重みを理解する。
「では飛ばすぞ。」
「わー!楽しみぃ!」
「エト、油断はだめよ。」
「それでは、3…2…1
………………………スタート!」
一瞬、体重が0になった感覚がした。
「ん…。」
目を覚ますとそこは殺風景なアスファルトの上。目の前には今朝見た門だけがあった。
三人がほぼ同時に起き、辺りを見渡す。
「なんか…人、全然いないね…。」
「そうね…。」
ふと、奥の方からなにか聞こえてきた。
いや、これはきっと
「叫び声…?」
すると奥から一人が命からがら逃げてきたような形相で飛び出してきた。
「くっそ!!!なんで一発目にあいつに合うんだよ!!!」
「どうしたんですかー?」
エトが空気を読まずに無邪気に話しかける。
「リッパー!!!リッパーがいたんだよ!!!」
「リッパー?」
「なんだ、お前ら新入生か…」
「リッパー=テンダー。うちの学年で唯一のSランクチームだよ。」
その後ろから最初に飛び出してきた男とチームの人と思われる男が咳き込みながら説明を始めた。
「なんでも自分の能力を使った恐ろしい趣味があるとか…。」
「趣味?」
男は顔を青くして言った。
「あいつの能力は人の体を生きたままバラせるんだよ…。趣味って言うのは人の頭をコレクション……してるっていう噂だよ…。」
トワの顔がサッと青ざめる。
「へえ。」
一方、俺は少し興味が湧いてしまい二人を連れて男たちが指差した方へと覗きにいった。
「嫌、あの、やめよ?ねえ!」
「トワ怖がりすぎだよ、大丈夫大丈夫!」
そんなことを言いながら三人で覗きにいくとそこには倒れこむ三人の男の顔を覗き込むロングヘアーの美男子がいた。
「あれがリッパー=テンダー?」
美男子はしばらく考え込みながらやがて立ち上がりこちらを向いた。
ひっとトワが青ざめるのと対照的にリッパーがにっこりしながらこちらに近づいてきた。
「新入生?」
にこにこしながらリッパーは真ん中にいるトワに顔を近づけて一言。
「可愛い顔してるね。お名前は?」
「トワレットです!」
黙り込むトワの代わりに元気よくエトが答えた。その瞬間トワが素早く立ち上がりダッシュで森の方へと逃げていった。
「エトの馬鹿ー!!!」
残った三人は顔を見合わせ苦笑いをして固まったあと俺とエトはダッシュでトワの後を追った。
呆然とする俺をおいて黙々と語るマイケルの口を慌てて抑える。
「まてまてまて!!!!」
うおっと後ろへバランスを崩すマイケルを支えながらマイケルを問い詰める。
「なんなんだよお前!さっきから!」
「なにって…これが俺の能力だし?」
あざとく、冷静に返され俺のパニックは続く。
マイケルはなお続ける。
「俺の能力は透視能力の一種で、相手の心まではいかずともその人の置かれている場所、名前…まあどこまでかはいまいちわかってないんだけどね。」
「なるほど。」
さて、どうする…。俺が暗殺者だなんてばれたのは初めてだし…脅される?の前に俺が脅すか?いっそのこと殺る…?だが喧嘩沙汰でも問題なこの施設で人を殺ったなんてなったら任務どころじゃないだろうしな…。
「もちろん、秘密にしておくよ。」
咄嗟の言葉と内容に俺は勢いよく振り向く。
「えっ…」
「あはは、もしかして、俺が脅すと思った?
ルームメイトにそんなことしないよぉ」
これは…ハッタリ?なのか?なにかすればばらすという脅し?なんだ?なにがしたい?こいつは…
「じゃあ次は俺のこと話そうかな。」
マイケルが腕を組みながらなおもあざといポーズで話続ける。
「えっと生物研究所に所属してるマ・イ・マ・イ、ね?明日がランクナップだからランクはわからないけど。うーん。なに説明すればいいんだろう~。」
「…もういいか。」
俺は咄嗟と判断を下し、その結果常備しているナイフをマイケルの首の前に持って行った。
俺はマイケルの前で残念そうな顔をして首とナイフの首を縮めていく。
「はあ…。こんなことは想像していなかった。」
マイケルの顔は焦っているようにも冷静な態度にも見える。こちらのターンは続く。
「大金は割と欲しかったんだけどな…。
職を失うよりもましだよな。」
鼻で笑ってもみせる。
「まあ、まさかこんな可愛い顔したやつにバレるとは思ってなかったけど…。」
ナイフは首に当たりかけていた。
「じゃ……」
じゃあなと言うつもりが俺のナイフは弾かれていた。
俺は咄嗟の出来事に驚きながらも瞬間移動で相手の後ろに回り首を拘束する。しかしその手さえも翻されマイケルは間をとった。
「可愛いだなんて、嬉しいな~。」
ニコニコと笑ってみせる相手には余裕がうかがえる。
「お願い!ネルちゃん、俺を信じて!
秘密にするからさあ」
「いいよ、殺すし。」
静かに歩み寄っていく。相手は怪しい笑顔で話し出した。
「いいのかなあ~?」
「あ?」
「俺もネルちゃんも国、いや世界の財産だよ?普通の人間とは法においても命の重さも違う。俺を殺したら必ずこの学校の人に目をつけられて、誰かに殺られるだけだよ?
掲示板に載りたいならべつにいいけどね~。」
「お前、なにが目的?」
「だから!俺は!ただ!ネルちゃんと仲良くなりたいだーけ!」
マイケルはためらいなく俺に近づき抱きついてきた。
確かに学校の人たち全員に目をつけられて逃げれるほど俺は強くはない。だが…。
…いや、考えるのはやめよう。
今の時代こいつが俺を暗殺者だなんていっても信じるやつなんていない。いやむしろそれに反応したのがターゲットとなる。
こいつを放っておくのはむしろ好都合か?
俺は手に持っていたナイフを床に落としてマイケルを手で遠ざけた。
「わかった、信じてやるよ。」
マイケルの表情がぱっと明るくなってまたくっついて来ようとするのを手で抑えて止める。
くっそ…まさかいきなりこんなやつに会うとは…今回の仕事舐めてた。
あんな高い報酬ももしかしたら妥当ではないのかと思うほどであった。
「はあ…。」
大きくため息をつき、抑えていた手を離す。
マイケルが喜んで抱きついてきたところで俺は全身の力を抜いた。
もしかしたら報酬がもっと多くてもいいんじゃないか。俺はそういう、成功したときのことばかり考えていた。
結局その日はあまり眠れず、早朝には体を起こし窓の外を眺めていた。
外の景色は綺麗で広大な街並み、その外に昨日建っていた門があり、道路が広がっている。
門のうちには街、森さらには住宅がある。教員たちの家だろうか。
しばらくしてから洗面台へ行き、顔を洗いロッカーを開けてみる。中には二人分のコートがあった。黒を基調とした襟の大きいロングコート。
大きいサイズの方を着てみる。驚いたことにピッタリだった。
髪を整えていたところで、部屋のインターホンがなった。奥の部屋からマイケルの唸るような寝起きの声が聞こえてくる。
「はぁい?」
ドアを開けるとエトとトワの姿があった。
洗面台の部屋の影から三人の様子を見る。
二人は俺と同じロングコートを着ている。これは間違いなく制服のようだ。
「ここって男子寮よね…」
トワがしかめっ面でマイケルを見つめる。
そりゃそうだ。二人のきちっとした制服姿に比べて、マイケルの服装と言えばだぼだぼの部屋着…もちろん女物のパステルピンクなのだから。
「男だよ、そいつ」
「あっネルー!」
「おはようネルちゃん」
「おはよう。」
三人におはようと返事してからマイケルに準備をしろと諭し、待っている間は時間を気にしながらマイケルのことについて当たり障りのない説明をしていた。
「そういや、何時からだっけ?」
「0830にグランド。昨日言ってたでしょ?」
少し不機嫌そうなトワは昨日よりも口数が多い。エトは眠そうにトワに引っ付いてこちらを見上げている。目は相変わらず見えないが、今日はまた違うハットの淵と目があうことでわかるのだ。
「おまたせ~。」
女装に男子用のロングコートの制服を羽織って現れたマイケルに二人ともぎょっとさせて
さっきの俺の説明を理解したように二人向き合って頷いていた。
部屋を出、寮を出てしばらく歩いた別れ道でマイケルと分かれ、三人になったところでエトのいつものお喋りがはじまった。
「可愛い子だったね~っ!ネルのルームメイト!」
「手は出すなよ。」
真顔で正面を向いたまま、トワが俺に言う。
「するかよ、興味ねーよ、あんなつるぺた。」軽い気持ちでその言葉を放った途端、姉妹揃って素早くこっちをにらんだ。
「すみません。」
マフィアのいい女を見慣れてた俺はついついそこを見てしまう。二人のそこを見ると残念なことに皆無。
「…まあさ、顔がよければいいと思うぜ?」
トワが顔を隠しながら暴言を吐いて殴ってくる。まあまあと諭してたらどうやら目的の地に着いたようだ。
グランドの中央に人集りができている。その群の真ん中で昨日の派手な女が点呼をとっていた。女に点呼をとってもらおうとしている数名の列に並ぼうとしたとき、腰のあたりに何かが当たる感覚がした。
見下げると金のパーマのかかったミディアムの綺麗な髪の男…というより男の子が俺を睨んでいた。男が舌打ちをして列から離れていくところを黒いストレートロングの髪を垂らした大人しそうな女が俺に一礼してから後を追っていた。
「保護者かよ。」
文句を言えなかった惜しさに独り言の嫌味を言い放つと同時にエトが俺のコートの端を掴んだ。
「ん?」
「ネル、これ、先生がつけろってさー。」
見るとシンプルな金の丸いバッチ。
周りの人に真似て制服の襟につける。
やがて女が点呼を取り出し、周りにいた全員が集まる。
「全学年いるか。」
昨日の今度はツンとした方が話し出した。
「えー。新入生以外は一度は説明を聞いていると思うが一年ぶりなので一様聞いておいてくれ。新入生は特によく聞くこと。」
一つ咳払いのあと教員は続ける。
「全員、配られたバッチを襟につけてるな。今回ランクを決めるにおいて採点基準はバッチの数とチームバランス、協力性、交渉力が主だ。スタートと同時にグランドとその奥の森までバラバラに教員によって飛ばされる。そこからは好きなやつとバッチを奪い合うというわけだ。他のチームと協力してもいい。怪我などにおいては一切保証しない。入学要項にあったのでそこはわかってもらっていると思っている。」
一同がざわつく。つまり死んでも保証はしないが殺しても保証はしないということか。
マイケルの言葉を思い出しながらその言葉の重みを理解する。
「では飛ばすぞ。」
「わー!楽しみぃ!」
「エト、油断はだめよ。」
「それでは、3…2…1
………………………スタート!」
一瞬、体重が0になった感覚がした。
「ん…。」
目を覚ますとそこは殺風景なアスファルトの上。目の前には今朝見た門だけがあった。
三人がほぼ同時に起き、辺りを見渡す。
「なんか…人、全然いないね…。」
「そうね…。」
ふと、奥の方からなにか聞こえてきた。
いや、これはきっと
「叫び声…?」
すると奥から一人が命からがら逃げてきたような形相で飛び出してきた。
「くっそ!!!なんで一発目にあいつに合うんだよ!!!」
「どうしたんですかー?」
エトが空気を読まずに無邪気に話しかける。
「リッパー!!!リッパーがいたんだよ!!!」
「リッパー?」
「なんだ、お前ら新入生か…」
「リッパー=テンダー。うちの学年で唯一のSランクチームだよ。」
その後ろから最初に飛び出してきた男とチームの人と思われる男が咳き込みながら説明を始めた。
「なんでも自分の能力を使った恐ろしい趣味があるとか…。」
「趣味?」
男は顔を青くして言った。
「あいつの能力は人の体を生きたままバラせるんだよ…。趣味って言うのは人の頭をコレクション……してるっていう噂だよ…。」
トワの顔がサッと青ざめる。
「へえ。」
一方、俺は少し興味が湧いてしまい二人を連れて男たちが指差した方へと覗きにいった。
「嫌、あの、やめよ?ねえ!」
「トワ怖がりすぎだよ、大丈夫大丈夫!」
そんなことを言いながら三人で覗きにいくとそこには倒れこむ三人の男の顔を覗き込むロングヘアーの美男子がいた。
「あれがリッパー=テンダー?」
美男子はしばらく考え込みながらやがて立ち上がりこちらを向いた。
ひっとトワが青ざめるのと対照的にリッパーがにっこりしながらこちらに近づいてきた。
「新入生?」
にこにこしながらリッパーは真ん中にいるトワに顔を近づけて一言。
「可愛い顔してるね。お名前は?」
「トワレットです!」
黙り込むトワの代わりに元気よくエトが答えた。その瞬間トワが素早く立ち上がりダッシュで森の方へと逃げていった。
「エトの馬鹿ー!!!」
残った三人は顔を見合わせ苦笑いをして固まったあと俺とエトはダッシュでトワの後を追った。
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