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「それを足してもマイナスが出るくらいに不倫しまくってるくせにな」
とこれまた聞き覚えの無い別の男性の声。しかし仰木大和には届かなかったようだ。
「そんなに酷いんですか?」
相川さんはその男性と会話を始めてる。私は耳だけダンボにしておく。
「あぁ、翌日には他所の女の家でお泊りさ。たまたま漫画家のアシさんだったからすぐに噂は広まったよ」
「ヘぇ、女も女ですが手近すぎでしょ。むしろ『噂になってほしいです』って自ら吹聴してる感じですね」
「それがモテ男だとでも思ってんじゃないのか?そもそもそんな奴結婚向いてないんだよ」
「一生独身で遊んどけば良いんですもんね」
ところがそうもいかない既婚者は案外多い。余所見する人間、他人の者を欲しがる人間、ちょこっと悪い事をしているという刺激が快楽になるのだろうか?私には皆目理解できないが……。
「それが『大人』というやつなんでしょうか?」
こんな時に香津のいっちょ前な言葉を思い出して会話に入ってしまった。
「確かに不倫なんか大人しかしないけど、周囲を微妙に巻き込んで微妙にイヤ~なオーラ振り撒いてきやがるんだよな」
「恋する気持ちは自由ですけど、婚姻って法に則ってするもんですから一応民事には引っ掛かるんですけどねぇ」
相川さんは渋い表情をしている。
「『大人なんだから』その一言で自由を手に入れてる気にでもなってるんでしょうか?」
「奥様を蔑ろにしといて何が『大人』やねんな!思いますけどね私は」
相川さんは嫌そうに言いながら机をバン!と叩く。
「それは同感だな、欲に忠実ってむしろ子供だろ」
私も一票投じさせて頂きます。
「コラそこ!何関係ない話してんのー?」
仰木大和は酒のせいか上機嫌でこっちの話題に入り込もうとしてくる。気付くと檜山も松井さんも鳴海さんも居なくなっていた。
「あれ?もっと人が居たような……」
私は慌てて周囲を見回すと明らかに参加者の数が減っていた。時計を視ると午後九時半、お開きするにはまだ早いと思う。
「夜勤組がいらっしゃるとかじゃないんですか?」
相川さんはさほど気にしていないようだ。
「夜勤組は参加してないよ、多分あの男を嫌って出払ったんだろ?」
どんだけ嫌われてんだ仰木大和、それなら私だって逃げたいさ。
「私ちょっと風に当たりたくなってきました」
私は椅子の背に挟んでいたバッグを抱える。
「だったら俺タバコ買いに行こうかな?」
「それやったら私も出る~」
私の言葉に乗った男性が立ち上がり、私たちもそれに付いていく……までは良かったが、事もあろうに仰木大和まで付いてきてあまり意味が無くなってしまった。
「お二人さんタバコは?」
男性は仰木大和に聞こえないよう小声で話し掛けてきたので、敢えて言葉にせず二人とも首を横に振る。
「だったらあのグループに混ぜてもらった方がいい」
と水を飲んでいる週刊誌グループを指差した。大丈夫、顔見知りの方が何人かいらっしゃる。仰木大和は既にタバコを咥えているがかこの辺り一帯歩きタバコは条例で禁止されている。相川さんと私は男性と別れてそのグループの元に向かうと案の定仰木大和が付いてきたが、そのまま無視して週刊誌グループに声を掛けた。
とこれまた聞き覚えの無い別の男性の声。しかし仰木大和には届かなかったようだ。
「そんなに酷いんですか?」
相川さんはその男性と会話を始めてる。私は耳だけダンボにしておく。
「あぁ、翌日には他所の女の家でお泊りさ。たまたま漫画家のアシさんだったからすぐに噂は広まったよ」
「ヘぇ、女も女ですが手近すぎでしょ。むしろ『噂になってほしいです』って自ら吹聴してる感じですね」
「それがモテ男だとでも思ってんじゃないのか?そもそもそんな奴結婚向いてないんだよ」
「一生独身で遊んどけば良いんですもんね」
ところがそうもいかない既婚者は案外多い。余所見する人間、他人の者を欲しがる人間、ちょこっと悪い事をしているという刺激が快楽になるのだろうか?私には皆目理解できないが……。
「それが『大人』というやつなんでしょうか?」
こんな時に香津のいっちょ前な言葉を思い出して会話に入ってしまった。
「確かに不倫なんか大人しかしないけど、周囲を微妙に巻き込んで微妙にイヤ~なオーラ振り撒いてきやがるんだよな」
「恋する気持ちは自由ですけど、婚姻って法に則ってするもんですから一応民事には引っ掛かるんですけどねぇ」
相川さんは渋い表情をしている。
「『大人なんだから』その一言で自由を手に入れてる気にでもなってるんでしょうか?」
「奥様を蔑ろにしといて何が『大人』やねんな!思いますけどね私は」
相川さんは嫌そうに言いながら机をバン!と叩く。
「それは同感だな、欲に忠実ってむしろ子供だろ」
私も一票投じさせて頂きます。
「コラそこ!何関係ない話してんのー?」
仰木大和は酒のせいか上機嫌でこっちの話題に入り込もうとしてくる。気付くと檜山も松井さんも鳴海さんも居なくなっていた。
「あれ?もっと人が居たような……」
私は慌てて周囲を見回すと明らかに参加者の数が減っていた。時計を視ると午後九時半、お開きするにはまだ早いと思う。
「夜勤組がいらっしゃるとかじゃないんですか?」
相川さんはさほど気にしていないようだ。
「夜勤組は参加してないよ、多分あの男を嫌って出払ったんだろ?」
どんだけ嫌われてんだ仰木大和、それなら私だって逃げたいさ。
「私ちょっと風に当たりたくなってきました」
私は椅子の背に挟んでいたバッグを抱える。
「だったら俺タバコ買いに行こうかな?」
「それやったら私も出る~」
私の言葉に乗った男性が立ち上がり、私たちもそれに付いていく……までは良かったが、事もあろうに仰木大和まで付いてきてあまり意味が無くなってしまった。
「お二人さんタバコは?」
男性は仰木大和に聞こえないよう小声で話し掛けてきたので、敢えて言葉にせず二人とも首を横に振る。
「だったらあのグループに混ぜてもらった方がいい」
と水を飲んでいる週刊誌グループを指差した。大丈夫、顔見知りの方が何人かいらっしゃる。仰木大和は既にタバコを咥えているがかこの辺り一帯歩きタバコは条例で禁止されている。相川さんと私は男性と別れてそのグループの元に向かうと案の定仰木大和が付いてきたが、そのまま無視して週刊誌グループに声を掛けた。
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