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第75話 〜啓輔の秘密〜

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 今日はてっぺん家の大掃除を手伝う事にした。理由?うちは男だらけの五人兄弟で四世代大家族やから一人くらい居らんでもどうも無いねん、俺実家の不動産業を手伝うてはおるけど三男やし。
 ばあちゃんに土産代わりの黒豆を持たせされて送り出された俺は、ルミちゃんの可愛い笑顔を餌に掃除を手伝っとる訳だが、彼女は小さい頃からてっぺが大好きで笑顔も奴限定である。俺は変態オヤジが如く彼女に笑顔をせがみ、キモい言われても全く怯まず掃除に勤しむ。先に申し上げておくが俺はロリコンではない、あくまでも目の保養。
 途中からルミちゃんから離れて玄関を掃除するんにドアを全開にする。しばらく真面目にやっとったところにとある母子がこんにちはと包みを持ってやって来た。彼女の顔には見覚えがある。俺と剛はとにかくモテん寂しい独身男、時には羽を伸ばして繁華街のお姉ちゃんらと遊ぶ事もある。彼女は未亡人を売りにそこそこ人気のあるクラブのホステスや。

 あれ……?彼女は俺を見てから玄関脇にある表札を確認しとる、えぇ有岡家で間違いございませんよ。それよりてっぺこの事知っとんのかな?いや俺からは言わんとこ。剛にも一応口止めしとこか、アイツ阿呆やけど察しは悪ないから後でメールしよ。
 俺はてっペを呼びに行き、子連れ美人やと伝えるといそいそと手と顔を洗うてタオルまで外しおる。確かにナチュラルスタイル時の彼女はお仕事の時よりも別嬪さんや、ときめくんも無理ないわな。
 てっぺはいつに無く気取った口調やった、人の事言えんやないか!それにしてもお前なんちゅう羨ましい男やねん!‎てっぺは身内贔屓を抜きにしても結構な男前や。性格も真面目でお人好し、モテ男の条件割と持っとる思うけどとんと女の影が無い。
 ‎今てっぺは珍しくデレデレしとるはず、背中しか見えんけどピンクオーラ満載や(俺見える人ちゃうけど)……その料理端からてっぺ仕様の量で作っとるやろ。見た感じ傍らのぼんも懐いとるみたいや、妙子さんもあんま煩ない人やしええんちゃうか?コダマが珍しく他人を受け入れよる、俺は水商売の女いう先入観があるけど言うほど擦れてないんやろな。
 ルミちゃんが俺の隣で綺麗な人やねと呟いとる。彼女は多分てっぺが初恋の相手や思うねん、今はどうなんやろ?
 妬けるか?そう聞いてみたらブラコンに近い言う返事やった。それでもやっぱり二人のやり取りは気になるみたいやな。ルミちゃんはそろそろ兄離れせんととキッチンに引っ込み、コダマのアシストもあって二人は家に上がる展開となった。

 彼女は金子舞花いうんが本名で隣町の出身やそうだ。今は勤務先の都合で役場前のアパートに住んどると話してくれた。クラブにおる時は場所柄キャピキャピしとるけど、実際は母親しとるだけあってやっぱり落ち着きがあるな。ええ意味でのギャップに偏見は徐々に薄れていく。思いの外有岡家の雰囲気に馴染んどって妙子さんとも合いそうな印象を受けた。
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