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第60話 〜久々のご対面〜

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 いつもの様に帰宅した俺はいつもより忙しなく玄関に向かう。

 「てっぺ?」

 サキちゃんに呼ばれたんは気付いとったが多分おかんの締め出しはまだ続いとると思う。俺は自宅の鍵を取り出し解錠すると、彼女を無視して玄関を閉め鍵をかけた。

 「お帰り、鍵したか?」

 おぅ。俺はただいまの挨拶もそこそこに二階に駆け上がる。

 『堪忍な。にしても今日はえろう忙しないなぁ』

 『いえ、急ぎの用事でもおありなんでしょう』

 ……ん?客人?しもた、俺御守の事に気が行き過ぎて全く気付かんかった。しかも男の人やったな……誰やろ?聞いた事あるような無いような声、まぁでもあんま気になさってない様やから後でご挨拶しとこ。
 ‎俺は部屋に入ってから着替えもせんとひたすら御守を探す。タンス開けたり押し入れの中のボックス開けたりしてみるがなかなか見つからん。にしても何年も見掛けんかったもんとかが出てきて探すんややこしなっとるがな、週末にでも軽く断捨離するか……なんて思いながら部屋中を探し回り、最後に残った机の引き出しを開けてみると……。

 「……あったぁ」

 それは奥の隅っこ~に小そうなって存在しとった。良かったほかしてへんかった、俺は宝物でも見つけたかの様な幸せな気持ちになり、まるで壊れ物でも扱うかのようにそっと指でつまみ出す。
 ‎それは何年も日の目を見んかったけどまだ御守として機能しとるように感じられた。試しに反対の掌に置いて軽く握りしめるとほんのりと温かくなった。折角やからどっかに付けとこかと思い立ち、自宅の鍵にぶら下げてやる事にした。

 これで気が済んだ、さて着替えるかと立ち上がるとサキちゃんが蛙みたいに窓にへばり付いとった。普通に気持ち悪いわ、俺はカーテンを閉めてさっさと着替えを済ませるとそのまま電気を消して部屋を出る。窓叩く音が聞こえてくるけど知らん、家長であるおかんが許してへんし俺かて昨日の事は思い出すだけでもまだ胸糞悪い。
 あぁそう言や手ぇ洗わんと、俺はキッチンに向かう前に洗面所で手と顔を洗い、軽く口もゆすぐ。その後ようやっとキッチンに入ると昨日来とったリーダー格の男性とおかん、コダマがテーブルに着いとった。ん?どゆこと?

 「あぁそうそう。てっぺあんたにお客人や」

 とおかんに言われてすっと立ち上がった男性は、俺を見ると爽やかな笑顔で笑いかけてきた。
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