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第107話 〜瑠美の嫌悪〜

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 「あんた学校は?」

 質問返し?ここに居る理由なんか大体想像出来るから答えてくれんでも別にええけど。

 「今日は昼から部活みたいなもんやから六限で終わり、それより勝手に部屋入って何してんの?」

 てっぺちゃんの部屋覗き見してたんやろ?何やかんやで昔っからそれ日課にしとったもんね。

 「何って、アレ見て何も思わんのか?」

 「アレって何よ?……あぁ、金子さん来てはるんやね」

 最近てっぺちゃん風邪引いて寝込んどるもんね、ホンマあの二人仲が良うて……最近やっと見慣れてきた、最初のうちはやっぱりお兄ちゃん取られたいう感じあったけど。それより八杉さん(あの町会議員さんのご長男やって)いう恋人がおんのに何でてっぺちゃんの行動気にしてんの?
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 ‎「金子?あのあばずれの事か?」

 どの口で言うてんのやろこの人?金子さんええ人やで。

 「人の事言えんの?同時進行で何人もの男と付き合うたり、駆け落ちまがいな事して相手さんの人生狂わせたりしとるのに」

 それでどんだけ嫌な思いしてきた思うてんの?ちょっとの用事で男の子と喋るだけでも白い目で見られて、酷い時は匿名でディスられたり家にクレームめいた電話が掛かってきた事もあってんで。あんたは都合が悪うなったらすぐ居らんくなるから知らんやろけどな。

 「うちは自分からは媚びん、あんなんと一緒にすんな」

 生活の為の行動と放埓とは事情が違う、自分から媚びにいこうが相手から言い寄られようが関係ない。

 「あたしに言わせたら“あんなん”以下やけど……それより宿題するから出てってくれへん?」

 あたし高校生やねん、勉強するんが本業なんよ。

 「それが姉に対する口の聞き方か?」

 そんなん言われても大して一緒に居らんから“家族”いう感覚無いんよなぁ。

 「せやったら勉強教えてくれる?現国なんやけど、お姉ちゃん元は女優さんやってんから読解力的なん得意分野やろ?」

 あたしは現国の教科書を広げて放埓女おねえちゃんに見せてやる。お勉強はからっきしやったらしいからこういうん苦手みたいや。何せ試験が嫌で進学も就職もせんかった人やもん、かと言うて女優業かてそこまで甘うない世界や思うけど……せやから挫折しはったんか。

 「……こんなん見せられたら視界がクラクラすんな」

 それでよう台本読めたね、好きこそものの何とやらなんかな?予想通りこれで出て行きはったから内鍵を掛けたった。電気点けるにはまだ明るいんやけど……何かお隣さんを覗き見しとる感じが嫌やったから、取り敢えずカーテンは閉めてデスクランプだけ点ける事にした。
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