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迷走編
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ニュース番組は一時間ほどで終了し、別の番組に切り替わったところでラジオデッキに置いてあったスポーツドリンクを一口飲む。波那はまだ読書をしており、ケータイで音楽を聞いているので畠中の動きにはまだ気付いていない。
波那……。畠中はペットボトルを元の位置に置いてそっと隣のベッドに近付き、イヤホンを外して口を手で塞ぐと後ろから抱き締めた。
「声出すな、勘付かれたくない」
波那は畠中を押し退けようとしたが、尋常ではない力で抱き締められた体はどう抵抗してもびくともしなくなっていた。
「あなた一体何考えてるんですか!?」
「お前を抱くことだよ」
畠中は波那の体をうつ伏せに倒すと、うなじから背中にかけて唇を這わせ、浴衣を脱がし始める。
「恋人、いらっしゃるんですよね?こんな事したら……」
「あぁ、それなりに悲しまれるだろうな。けど俺が愛してるのはお前なんだ」
「僕が愛しているのはあなたではありません……!」
波那は体中を触られながらも、剥ぎ取られそうになっていた浴衣を体に巻き付けて何とか局部は触らせまいと必死に脚を閉じている。畠中はそれでも力ずくで脚をこじ開けようと、うつ伏せにしていた波那の体をひっくり返し、浴衣を剥ぎ取って脚を掴む。
「嫌っ……嫌ぁ……」
畠中に脚をこじ開けられ、下着を脱がされて恥部に手を入れられている波那は体を捩らせて空いている脚で体を押し退けようするも、結局その脚も押さえ付けられ、畠中の体が誘われていよいよ逃げられなくなってしまう。
「僕にだって恋人が……」
「中林悠麻だろ?一度バーで見たよ。寄りにもよって何であいつを選んだんだ?」
畠中はいくら愛撫しても欲情しない波那を悔しさと寂しさを滲ませた目で見つめていた。もう逃げられない……。波那は不本意ながらも畠中と交わる覚悟を決め、愛しい恋人を頭に浮かべながらその場をやり過ごそうとした。
畠中は体を強張らせている波那の腰を持って少し浮かせる。波那はきゅっと目を瞑って心の中で中林に必死に謝っていた。心まで奪われたりしないから……。思考と感情を中林で埋め尽くしている波那の体の中に畠中の性器が挿入された瞬間、体中の腱が切られたように力が入らなくなり、あれほど愛していたはずの中林の姿が一瞬にして消し去られてしまった。
波那は自身の心の変化に驚いてしまい、気が動転してはっと目を開ける。畠中は首筋に顔を埋めて唇を這わせ、時折髪の毛を触りながらゆっくりと腰を動かしていた。先程まで何も感じなかった体は急激に熱を帯び始め、まるで血が流れるように畠中の感触が全身に伝わってくる。波那の体は次第に欲情し、気付けば彼との情事を受け入れ始めていた。
「んっ……あっ……あっ……あっ……」
波那の喘ぎ声に反応した畠中が顔を上げる。二人はしばし見つめ合い、畠中は波那の頬に手を添えて親指で唇をなぞると顔を近付けて甘いキスをしてきた。波那は瞳を閉じて軽く口を開け、畠中の口の中に舌を滑り込ませる。畠中もそれに呼応して舌を絡ませ、ギアを上げるように体を引き寄せて結合を強めていく。その時に波那のケータイが滑り落ち、着信を知らせて震えていたのだがそれどころではなく、あっさり放置されてしまう。
ううぅ……ん!波那は畠中の首根っこに腕を回し、腰を浮かせて彼の要望に応える。この頃になると波那の頭の中は畠中で埋め尽くされており、半年前に置き去りにしたままの未練も自覚していた。
キスを解かれた波那はうっすらと瞳を開けて畠中の美しい顔を見る。これまで彼の顔をさほど気に留めた事は無かったのだが、この時の波那には艶やかな黒目とあいまって神々しく映っていた。
「畠中さん……」
「星哉、でいい……」
波那は畠中の頬にそっと触れ、ゆっくりと移動させて髪の毛の中に手を入れると愛しげに抱き寄せた。まるで小さな子供をあやすかの様に彼の頭を撫で、あの日の事が忘れられなかった。と本当の気持ちを吐露したのだった。
畠中は再び首筋に唇を当て、手を股間に滑り込ませて固くなっている性器を愛撫する。波那の体はピクンと反応し、膝を立てて無意識に腰を動かしている。
「……イイ……イキそう……!」
波那は体を刷り寄せて交わりを求める。しかし畠中はそれに応じず、欲情している波那を嬉しそうに見つめ弄り続けていた。
「お願い、抱いて……」
「だったらさっさとイケよ、そしたらいくらでも抱いてやる」
畠中はわざと意地悪な口調で挑発する。急所を掴まれている波那は彼の辱しめを受け入れるしかなく、じわじわと股間を濡らし畠中の体にしがみつく。
「ああぁん……ああぁん……意地悪しないで……」
その直後に波那の股間は一気に熱くなり、力が抜けて逞しい体に身を委ねる。畠中は小さな体を支え、しっかりと抱き締めてやる。波那は呼吸を整えて落ち着いてくると、畠中の股間に手を入れて棹を立たせ、自ら穴に挿入させて馬乗りになる。前回よりも大胆になっている波那の行動に驚く畠中だったが、体を求められて悪い気はしない、と嬉しさも半分あった。
「今は俺の事だけ見ててくれ……、普段は何を考えてても構わねぇから」
畠中は上に乗る波那を押し倒して体位を逆転させ、腰を突き動かして持っている全ての愛情を注ぐ。波那の体は震動して吐息混じりの声を上げ、艶やかな色香を纏い始めていた。その様を目の当たりにしながら彼の体を抱いている畠中は、自身で宝石を磨く感覚に陥って更に魅了されていく。
年齢の割に幼いところも可愛くて魅力的だけど……。畠中は自分色に染まりつつある波那に、雄ならではの支配欲が刺激されて欲情が止まらなくなる。あいつの事なんか忘れちまえ!そう祈るように彼の体を愛撫し、好きだ、お前が好きなんだ。と耳元で囁いていた。
梅雨が明けて夏になった七月下旬の金曜日、定期検診で早退していた波那は通院している病院に併設されている薬局の外にいた。夜と言っても空は明るく蒸し暑さもあるのに、しきりにケータイをいじってソワソワと落ち着かない。
その作業を終えると屋内に入り、いつも服用している薬を受け取っていそいそと外に出る。車を持っていない波那がなぜか嬉しそうに駐車場に向かい、ライトグリーンのコンパクトカーの窓ガラスをノックする。それに反応してスッとガラスが下がり、彼が覗き込んだ車内には畠中の姿があった。
「お待たせ」
運転席に座っている畠中は笑顔を見せてエンジンを掛ける。波那は薬を抱えて車に乗り込み、シートベルトを装着したのを確認してから車はゆっくりと走り出した。
「大変だろ?毎月の様に病院通いなんてさ」
普段から至って健康体の畠中には、いくら仕事を早退すると言っても定期的に病院に通うのは不憫に感じられた。
「もう慣れちゃった。入院生活よりよっぽど良いよ、外出の制限が無いから」
波那は隣に居る浮気相手ににっこりと微笑みかけ、仕事以外で敬語を使わなくなった事で二人の距離は一気に縮まった様に感じられた。
秘密と障害の伴ったこの恋を周囲に悟られぬよう、移動は畠中の自家用車を利用している。この移動中に色々な話をして、あとは畠中の自宅で夜な夜な体を重ね合わせる。二人の過ごし方はほぼそんな感じだった。
「学校に行けなかった時期もあったのか?」
「うん、外出許可が下りた日だけ学校に通う感じだったからなかなか馴染めなくて」
「そっか……、俺は学校の方が楽しかったな。ほんの一??二年ほどの事だけど学校給食が楽しみでしょうがなかったよ」
ずっと馴染めなかったのか?その問いには首を横に振った。
「友達が出来てからは学校の方が楽しくなってきたよ。不思議と体調が良くなったり、休みがちでも皆が勉強を教えてくれるようになったり」
「それぞれ色々あるんだな。波那はどこにいてもすぐに馴染めるタイプだと思ってたから」
「そうでも無いよ、周囲に恵まれてるだけ」
二人は他愛のない会話をしながら秘密の車内デートを楽しんでいた。
波那……。畠中はペットボトルを元の位置に置いてそっと隣のベッドに近付き、イヤホンを外して口を手で塞ぐと後ろから抱き締めた。
「声出すな、勘付かれたくない」
波那は畠中を押し退けようとしたが、尋常ではない力で抱き締められた体はどう抵抗してもびくともしなくなっていた。
「あなた一体何考えてるんですか!?」
「お前を抱くことだよ」
畠中は波那の体をうつ伏せに倒すと、うなじから背中にかけて唇を這わせ、浴衣を脱がし始める。
「恋人、いらっしゃるんですよね?こんな事したら……」
「あぁ、それなりに悲しまれるだろうな。けど俺が愛してるのはお前なんだ」
「僕が愛しているのはあなたではありません……!」
波那は体中を触られながらも、剥ぎ取られそうになっていた浴衣を体に巻き付けて何とか局部は触らせまいと必死に脚を閉じている。畠中はそれでも力ずくで脚をこじ開けようと、うつ伏せにしていた波那の体をひっくり返し、浴衣を剥ぎ取って脚を掴む。
「嫌っ……嫌ぁ……」
畠中に脚をこじ開けられ、下着を脱がされて恥部に手を入れられている波那は体を捩らせて空いている脚で体を押し退けようするも、結局その脚も押さえ付けられ、畠中の体が誘われていよいよ逃げられなくなってしまう。
「僕にだって恋人が……」
「中林悠麻だろ?一度バーで見たよ。寄りにもよって何であいつを選んだんだ?」
畠中はいくら愛撫しても欲情しない波那を悔しさと寂しさを滲ませた目で見つめていた。もう逃げられない……。波那は不本意ながらも畠中と交わる覚悟を決め、愛しい恋人を頭に浮かべながらその場をやり過ごそうとした。
畠中は体を強張らせている波那の腰を持って少し浮かせる。波那はきゅっと目を瞑って心の中で中林に必死に謝っていた。心まで奪われたりしないから……。思考と感情を中林で埋め尽くしている波那の体の中に畠中の性器が挿入された瞬間、体中の腱が切られたように力が入らなくなり、あれほど愛していたはずの中林の姿が一瞬にして消し去られてしまった。
波那は自身の心の変化に驚いてしまい、気が動転してはっと目を開ける。畠中は首筋に顔を埋めて唇を這わせ、時折髪の毛を触りながらゆっくりと腰を動かしていた。先程まで何も感じなかった体は急激に熱を帯び始め、まるで血が流れるように畠中の感触が全身に伝わってくる。波那の体は次第に欲情し、気付けば彼との情事を受け入れ始めていた。
「んっ……あっ……あっ……あっ……」
波那の喘ぎ声に反応した畠中が顔を上げる。二人はしばし見つめ合い、畠中は波那の頬に手を添えて親指で唇をなぞると顔を近付けて甘いキスをしてきた。波那は瞳を閉じて軽く口を開け、畠中の口の中に舌を滑り込ませる。畠中もそれに呼応して舌を絡ませ、ギアを上げるように体を引き寄せて結合を強めていく。その時に波那のケータイが滑り落ち、着信を知らせて震えていたのだがそれどころではなく、あっさり放置されてしまう。
ううぅ……ん!波那は畠中の首根っこに腕を回し、腰を浮かせて彼の要望に応える。この頃になると波那の頭の中は畠中で埋め尽くされており、半年前に置き去りにしたままの未練も自覚していた。
キスを解かれた波那はうっすらと瞳を開けて畠中の美しい顔を見る。これまで彼の顔をさほど気に留めた事は無かったのだが、この時の波那には艶やかな黒目とあいまって神々しく映っていた。
「畠中さん……」
「星哉、でいい……」
波那は畠中の頬にそっと触れ、ゆっくりと移動させて髪の毛の中に手を入れると愛しげに抱き寄せた。まるで小さな子供をあやすかの様に彼の頭を撫で、あの日の事が忘れられなかった。と本当の気持ちを吐露したのだった。
畠中は再び首筋に唇を当て、手を股間に滑り込ませて固くなっている性器を愛撫する。波那の体はピクンと反応し、膝を立てて無意識に腰を動かしている。
「……イイ……イキそう……!」
波那は体を刷り寄せて交わりを求める。しかし畠中はそれに応じず、欲情している波那を嬉しそうに見つめ弄り続けていた。
「お願い、抱いて……」
「だったらさっさとイケよ、そしたらいくらでも抱いてやる」
畠中はわざと意地悪な口調で挑発する。急所を掴まれている波那は彼の辱しめを受け入れるしかなく、じわじわと股間を濡らし畠中の体にしがみつく。
「ああぁん……ああぁん……意地悪しないで……」
その直後に波那の股間は一気に熱くなり、力が抜けて逞しい体に身を委ねる。畠中は小さな体を支え、しっかりと抱き締めてやる。波那は呼吸を整えて落ち着いてくると、畠中の股間に手を入れて棹を立たせ、自ら穴に挿入させて馬乗りになる。前回よりも大胆になっている波那の行動に驚く畠中だったが、体を求められて悪い気はしない、と嬉しさも半分あった。
「今は俺の事だけ見ててくれ……、普段は何を考えてても構わねぇから」
畠中は上に乗る波那を押し倒して体位を逆転させ、腰を突き動かして持っている全ての愛情を注ぐ。波那の体は震動して吐息混じりの声を上げ、艶やかな色香を纏い始めていた。その様を目の当たりにしながら彼の体を抱いている畠中は、自身で宝石を磨く感覚に陥って更に魅了されていく。
年齢の割に幼いところも可愛くて魅力的だけど……。畠中は自分色に染まりつつある波那に、雄ならではの支配欲が刺激されて欲情が止まらなくなる。あいつの事なんか忘れちまえ!そう祈るように彼の体を愛撫し、好きだ、お前が好きなんだ。と耳元で囁いていた。
梅雨が明けて夏になった七月下旬の金曜日、定期検診で早退していた波那は通院している病院に併設されている薬局の外にいた。夜と言っても空は明るく蒸し暑さもあるのに、しきりにケータイをいじってソワソワと落ち着かない。
その作業を終えると屋内に入り、いつも服用している薬を受け取っていそいそと外に出る。車を持っていない波那がなぜか嬉しそうに駐車場に向かい、ライトグリーンのコンパクトカーの窓ガラスをノックする。それに反応してスッとガラスが下がり、彼が覗き込んだ車内には畠中の姿があった。
「お待たせ」
運転席に座っている畠中は笑顔を見せてエンジンを掛ける。波那は薬を抱えて車に乗り込み、シートベルトを装着したのを確認してから車はゆっくりと走り出した。
「大変だろ?毎月の様に病院通いなんてさ」
普段から至って健康体の畠中には、いくら仕事を早退すると言っても定期的に病院に通うのは不憫に感じられた。
「もう慣れちゃった。入院生活よりよっぽど良いよ、外出の制限が無いから」
波那は隣に居る浮気相手ににっこりと微笑みかけ、仕事以外で敬語を使わなくなった事で二人の距離は一気に縮まった様に感じられた。
秘密と障害の伴ったこの恋を周囲に悟られぬよう、移動は畠中の自家用車を利用している。この移動中に色々な話をして、あとは畠中の自宅で夜な夜な体を重ね合わせる。二人の過ごし方はほぼそんな感じだった。
「学校に行けなかった時期もあったのか?」
「うん、外出許可が下りた日だけ学校に通う感じだったからなかなか馴染めなくて」
「そっか……、俺は学校の方が楽しかったな。ほんの一??二年ほどの事だけど学校給食が楽しみでしょうがなかったよ」
ずっと馴染めなかったのか?その問いには首を横に振った。
「友達が出来てからは学校の方が楽しくなってきたよ。不思議と体調が良くなったり、休みがちでも皆が勉強を教えてくれるようになったり」
「それぞれ色々あるんだな。波那はどこにいてもすぐに馴染めるタイプだと思ってたから」
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