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第四話

有終の美を飾りたい魂 ―2―

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 「……何だソレ?」

 「ん?それの煮汁で作ったお酒ぇ、相性はバッチリだと思うわよぉ。その名もまんま“ディングバウ”ぅ」

 「……………………ほぅ、ここで飲めるとは……………………」

 インズは嬉しそうに小さなグラスを受け取った。

 「……うわっ!!!半端ねぇなこの匂い!」

 「鼻が取れそうですー!!!」

 ヴィスキーオとヴィーンは顔を仰け反らせて鼻をつまんでいる。

 「コレお酒にすると匂いが凄いのよねぇ、獣人類のあなたたちには厳しいかもぉ」
 
 「先に言え!!!ってかお前も獣人類だろうが!!!」

 「私はもう慣れたから平気ぃ」

 ネプテューヌは普段滅多に見せないアイスブルーのふさふさした尻尾を見せていた。

 「そうだ、“ディングバウ”って山菜か何かですか?」

 「う~ん、星によっては雑草だったりするけどぉ……」

 とサッと空中に映像を出してとある植物の画像を見せる。それは一品の茎から腕の形に似た触手のようなものが無数に生えている少々不気味な見た目であった。

 「「うわっ!“デンデコ草”!?」」

 ヴィスキーオとヴィーンは嫌そうな表情で箸でつまんでいた“ディングバウ”を見つめている。

 「違うわよぉ、形状こそ似てるけど全くの別物ぉ。まぁ“デンデコ草”ってあんたたちの星では劇薬だもんねぇ」

 「激薬レベルじゃねぇ!触るだけでヒト一人死ぬんだよ!」

 「服着ててもアウトなんですー!見るだけで恐いですー!」

 二人は恐れ慄いて顔色が無くなっていく。

 「だぁかぁらぁ、別物なんだから安心してよぉ。それに魂だけの状態で死ぬ訳無いじゃなぁい」

 「まぁそうなんだが……いやぁトラウマと言うかさ」

 「……………………何ですその“トラウマ”と言うのは?……………………」

 異文化交流となるこの場ではこういった事が時々起こるので、話の内容によってはなかなか前に進んでくれない。

 「う~ん、平たく言うと“この世”で出来た心の傷……って解釈でいいのよねぇ?」

 「おぅ、そうだな。間違っても……」

 「先輩やめましょう、話がややこしくなります」

 ヴィーンは慌てて先輩の言葉を止める。そうしないと話が脱線して元に戻せなくなる場合がある。いくら言語問題がクリアになっても星それぞれの事情により、同じ物でも違う言葉だったり、その逆もあったりするのである程度のところで折り合いを付けてしまわないといつまで経っても一つの話題が頓挫してしまうのだ。

 「まぁ……そのトラウマと言うやつのせいでこの形状には苦手意識があるって話だよ。ここではそんなの関係ないと分かってても、苦手なもんはやっぱり苦手なんだよ」

 「……………………なるほど……………………」
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