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soixante quatrze

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 もう今更何回目かなんて忘れてしまっている除夜の鐘、私たちはかなり後なので多分八十番目くらいかな?でこうたとぐっちーの順番になり、ぐっちー、こうたの順で鐘を突いていた。
 それから更に何名かを経て私たちの順になる。二人で鐘の前に立ち、手持ち部分の紐をきゅっと握る。
 「いいか?」
 てつこは私を見て言う。さっきみたいな重苦しい視線ではなく、普段の感じに戻ってる。
 「うん」
 私が頷いたのを確認してから、てつこは鐘の方に顔を向けた。特にはっきりとした合図を交わしたわけではない。秒感覚より少し早めに二拍数えたくらいのタイミングで、力がぐっとこもったのが紐を伝って私の手にも届いた。
 私たちはびっくりするくらいにピッタリの呼吸で腕を後ろに引き、それなりに勢いよく鐘を突いた。ぼわーんと全身を響かせる大音響ではあるが、中学生の時に感じたほどの怖さはなかった。
 その余韻を残したまま下に降りてこうたとぐっちーのいる所に向かう。二人は手を上げておめでとさんと声を掛けてきた。
 「お前ら息ぴったりじゃん」
 ぐっちーはこっちを見てニヤニヤしてる。あ~コイツ変な勘繰り入れてるわ多分、思ってることがすぐ顔に出るタイプだから分かり易い男だよ。
 「たまたまだよ」
 一方のてつこは表情豊かとは言えず、平常運転とも言えるポーカーフェイスだ。
 「そぉかぁ?婚活パーティーの時といい、最近妙に近いじゃん」
 婚活パーティー?あぁあぶれ者同士端っこでビュッフェ食ってたこと言ってんのか、ったく囃し立てて面白がってる中坊みたいなこと言ってんじゃないわよ。
 そんなくだらない会話をしながら、私たちよりも遅れて来てるであろう有砂とまこっちゃんは……っといたいた。ほぼ最後尾じゃない、なんて思って見ていると、彼女の隣には知ってる顔の男性が立っていた。アレ?この一週間で更に進展してません?
 「あの人婚活パーティーの時にいた進行役だったよな?どうやって知り合ったんだ?あの二人」
 ぐっちーも男性こと部長を憶えてたみたい。どうやっても何も、有砂の勤務先が会場だったんだからその繋がりでしょうが。
 「あの会場、有砂の職場だろ?」
 「仕事なのにそんなホイホイと仲良くなれるもんかぁ?」
 「有砂なら何の不思議もないだろ?交際遍歴考えてみろよ」
 と聞きようによっては好き勝手言ってるけど、こればっかりは身近なだけにある程度は……別段見たい訳じゃないにしろ視界に入ってくるし、有砂もコソコソするタイプじゃないのでね。
 そろそろ百回目も過ぎて、まこっちゃんが先に鐘を突き、続いて有砂と部長が二人仲良く鐘を突いた。その三人とも合流し、げんとく君の案内で応接室に向かった。
 「何か申し訳ないですね、仲間内の輪に入ってしまって」
 部長は軽く自己紹介なんかしながら、持ち前の会話力で早々に男性陣とも馴染んでらっしゃるわ。
 「全然問題ないっすよ、何なら偶数でキリがいいじゃないすか」
 まぁここの男連中はそういうことにいちいちケチ付けたりしないからね、見た感じこうたと一番ウマが合ってるみたい。
 「この後裏の公園で軽く遊ぶんすけど、高階さんも一緒にどうすか?」
 「なら遠慮なく、面白そうですね」
 こうして恒例行事に部長が入ることになり、その前の腹ごなしとしてお茶菓子を頂いた。

 軽く休んでから公園に移動した私たちは、げんとく君宅にある羽子板を借りて羽根突きをすることになった。普段は七人なのでどうしても余ったりとかしてキリが良くなかったんだけど、今年は部長がいるので四人一組のチーム戦になりそうだ。
 「去年はパーだったから今年はグーでぇ」
 「了解」
 この時は戦力を均等にするため、有砂と私は予め別のチームに振り分けている。男性陣にはそれを知らせずに、じゃんけんでチーム分けをしてもらうのだが……アレ?げんとく君がいない。
 「げんとく君は?」
 「もうじき来るんじゃないか?『先行ってろ』って言ってたから置いてきたぞ」
 とぐっちー。まぁすぐ来るでしょなんて思ってたら、作務衣姿に着替えたげんとく君が黒髪美女……安藤を連れて公園に入ってきた。
 「待たせたな、三人一組総当たり戦にしよう」
 彼のひと声でチーム分けのじゃんけんを始める男共、初参戦の安藤は勝手が分からず落ち着かないご様子。
 「安藤、女子は別のチームに振り分けるの」
 「今年はなつがパーで私がグー、だから安藤はチョキね」
 私と有砂とで雑い説明をしてる間にチーム分けが出来たらしい。見たところてつことまこっちゃん、げんとく君とこうた、ぐっちーと部長という組み合わせに落ち着いたようだ。
 う~ん戦力的には似たり寄ったりかな?てつことまこっちゃんとこが一番マシそう、因みに部長の運動神経はそう悪くなかったりする。
 「決まったみたいだよぉ。グーの人~」
 有砂が握った手を突き上げると、部長が嬉しそうに手を挙げていた。一方のぐっちーはちょっとげんなりしてる、運動全般からっきしの有砂と陸上競技以外センス無しの奴ではねぇ。
 「なつは?」
 まこっちゃんが私に向けて訊ねてくる。
 「私はパー」
 「僕らチョキだから安藤とだね」
 ってことはげんとく君とこうたチームか。二人とも球技得意だからこれ案外勝てんじゃね?とただのお遊びなのに闘争心がたぎってくる。まぁ野球してたてつことテニスしてたまこっちゃんにも同じことが言えるけど、安藤って部活動とかしてたのかな?
 「そう言えば安藤って部活とかしてたの?」
 こういうところまこっちゃんは紳士だ、案外良いチーム分けができてるんじゃないの?
 「部活動は文化部中心だったけど、大学のサークルでバドミントンやってたの」
 ……この女案外強敵かもしれない。
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