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やっとこさ本編
……ジェットコースター→観覧車♪
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僕たちはジェットコースターの列に並び、搭乗口の棚に荷物を置いてスタンバイします。輝君ちょっと不安そうにしてる、無理してない?
「僕最初の焦らされるアレが苦手なんだよね、加速してしまうと楽しいんだけど」
「えっ?アレがワクワクさせてくれるのに」
人にはそれぞれ好みがあるものです。
「出来れば直滑降するてっぺんからスタートしてほしい」
輝君はそう言って苦笑いしています。『得意じゃない』ってそういう事だったんだね。
そう話してる間にジェットコースターは動き始めます。最初はゆっくりゆっくり前進していきます。このじれじれ感がたまらない♪きっと輝君は緊張してると思うので、敢えて顔を見ないようにしました。男としてはあまり弱いところを見せたくない、僕にもその気持ち分かります。そして頂上まで来てあとはひたすら絶叫の嵐です!
「「「「キャーーーーー!!!」」」」
あちこちで絶叫がこだましている中、輝君も最初とは打って変わって楽しそうに絶叫してます。大声張り上げるとストレス発散にもなるんだよね、超楽しい!中には付き合いで無理矢理乗せられてしまったのか声も出せずに俯いてる方もいたんだけど、僕たちはひたすら楽しんで終わった後は解放感で一杯でした。昼のメンテナンスが終わったらもう一度乗りたいなぁ。
「締めとして午後にも乗らない?」
良いよ、輝君は綺麗な笑顔で頷いてくれました。
お次は輝君リクエストの観覧車です。最近の大きなものではなく、レトロな二人乗りくらいで。窓ガラスもはめ込まれてなくて、今の時期は良いけど冬は寒そうだな。さすがに手動式じゃないけど、これもかなり年季が入ってる。
「これ意外とスリルあるんだよ」
「ホントに?」
僕実はここの観覧車に乗った事が無いんです。僕が来る時はいつも大行列だし、そうじゃない時は休止してたり……これまで縁が無かったんだ。今日は比較的空いてる、ラッキー♪
「僕初めて乗るんだ」
「そうなんだ、間に合って良かった」
「えっ?どういう事?」
「年内で運転停止されるんだって、老朽化で。これ自体は貴重品だから遺すそうだけど」
多分移築するんじゃないかって。輝君の情報を寂しく思う僕は、何十年も皆を楽しませてくれた古い観覧車をじっと見つめてしまいます。最後の最後に乗せてくれてありがとうございます。
「年内でなんて寂しいよね……」
「また一つ思い出が無くなっちゃう感じ……」
並んでる他の方たちも観覧車の運転停止を惜しんでいます。そして順番が近付くと、輝君の言った通り年内の運転停止を報せる看板が立て掛けられてありました。帰ったら伽月君にも教えてあげないと。
僕たちの順番になり、古いながらもピカピカに磨かれている観覧車に乗って外の景色を楽しみます。方角的に僕たちが住んでる街が一望出来て、こうして見ると案外都会なんだな、と思ってしまいます。観覧車君(?)は時々ミシミシ言っていて、外の空気をダイレクトに感じられます。超高層の密室空間も良いですが、この“ちょこっと不安定”なのも良いな、と思います。
「僕、嫌な事があるとコレによく乗ってたんだ」
輝君は僕の知らない昔を思い出している様です。
「祖母としょっちゅう来てたんだ、小学生の時目の色の事で苛められて登校拒否してた時期があって……『その目の色おかしいだろ』って難癖付けられて」
僕も苛められてたから彼の気持ちがよく分かります。見た目の事で難癖を付けられても当人にはどうする事も出来ません。精神的に追い詰められて自殺を考えてしまう事だってありました。そんな時に彼の心を支えてくれた観覧車君、苦しんでいた輝君を優しく受け留めてくれたお蔭で僕たちは出逢える事が出来ました。
「家の親は『学校なんて行かせない!』って僕を祖母の元に預けて、当時の担任が来ても絶対会わせようとしなかったんだ。一番上の姉が一緒に付いてきてくれて勉強を教えてもらって……結果的には祖母の自宅近所の学校に転校したけど、それで苛めからは解放されたよ」
輝君のご家族もとてもお優しい方たちだったんだね……僕もそうでしたが、家族に恵まれていたのはある意味幸せだと思います。同じ様な状況の子供たちの中には家族にさえも苦悩を言えなかったり理解されなかったり、忍耐の限界点を越えて最悪の決断をしてしまう場合だってある訳ですから。
「何か湿っぽい話しちゃったね……って誠君!?」
輝君は僕の顔を見て慌てています。まぁ号泣しちゃってたからそりゃあね……しかも拭っても拭っても止まらなくて顔は涙でぐちゃぐちゃになってるし。
「……ゴメンね……ううぅ……」
輝君は戸惑いながら僕の頭をよしよしと撫でてくれます。それが余計に心に沁みてまた泣けてきちゃう……これじゃ周囲の人たちに変な誤解されちゃうよ、喧嘩したとか嫌な事言われたとかじゃないからね。
結局観覧車は号泣だけで終わってしまい、泣き顔の僕を輝君が優しく支えてくれてその場をあとにします。
「ゴメンね輝君……最後になるかも知れないのにこんなになっちゃって……」
「良いって、僕は君と一緒に乗れただけで幸せだから」
な、なんて優しい言葉掛けてくれるの……僕はまた泣きそうになってしまいます。でもこんなのが最後だなんて……そんな思いを察してくれたのか、輝君は僕の頬にそっと手を当てて微笑みかけてくれました。彼の笑顔はとっても綺麗でドキドキしてしまいます。いじめの原因になったなんて信じられないくらいに美しい、彼のゴールドの瞳に僕の顔が映っています。
「誠君は本当に優しいんだね、でも今日は笑ってて欲しいな」
……そうだよね、遊園地は皆が笑顔でいる場所だもんね。僕は輝君の宝石の様な瞳を見てうん、と頷きました。
「僕最初の焦らされるアレが苦手なんだよね、加速してしまうと楽しいんだけど」
「えっ?アレがワクワクさせてくれるのに」
人にはそれぞれ好みがあるものです。
「出来れば直滑降するてっぺんからスタートしてほしい」
輝君はそう言って苦笑いしています。『得意じゃない』ってそういう事だったんだね。
そう話してる間にジェットコースターは動き始めます。最初はゆっくりゆっくり前進していきます。このじれじれ感がたまらない♪きっと輝君は緊張してると思うので、敢えて顔を見ないようにしました。男としてはあまり弱いところを見せたくない、僕にもその気持ち分かります。そして頂上まで来てあとはひたすら絶叫の嵐です!
「「「「キャーーーーー!!!」」」」
あちこちで絶叫がこだましている中、輝君も最初とは打って変わって楽しそうに絶叫してます。大声張り上げるとストレス発散にもなるんだよね、超楽しい!中には付き合いで無理矢理乗せられてしまったのか声も出せずに俯いてる方もいたんだけど、僕たちはひたすら楽しんで終わった後は解放感で一杯でした。昼のメンテナンスが終わったらもう一度乗りたいなぁ。
「締めとして午後にも乗らない?」
良いよ、輝君は綺麗な笑顔で頷いてくれました。
お次は輝君リクエストの観覧車です。最近の大きなものではなく、レトロな二人乗りくらいで。窓ガラスもはめ込まれてなくて、今の時期は良いけど冬は寒そうだな。さすがに手動式じゃないけど、これもかなり年季が入ってる。
「これ意外とスリルあるんだよ」
「ホントに?」
僕実はここの観覧車に乗った事が無いんです。僕が来る時はいつも大行列だし、そうじゃない時は休止してたり……これまで縁が無かったんだ。今日は比較的空いてる、ラッキー♪
「僕初めて乗るんだ」
「そうなんだ、間に合って良かった」
「えっ?どういう事?」
「年内で運転停止されるんだって、老朽化で。これ自体は貴重品だから遺すそうだけど」
多分移築するんじゃないかって。輝君の情報を寂しく思う僕は、何十年も皆を楽しませてくれた古い観覧車をじっと見つめてしまいます。最後の最後に乗せてくれてありがとうございます。
「年内でなんて寂しいよね……」
「また一つ思い出が無くなっちゃう感じ……」
並んでる他の方たちも観覧車の運転停止を惜しんでいます。そして順番が近付くと、輝君の言った通り年内の運転停止を報せる看板が立て掛けられてありました。帰ったら伽月君にも教えてあげないと。
僕たちの順番になり、古いながらもピカピカに磨かれている観覧車に乗って外の景色を楽しみます。方角的に僕たちが住んでる街が一望出来て、こうして見ると案外都会なんだな、と思ってしまいます。観覧車君(?)は時々ミシミシ言っていて、外の空気をダイレクトに感じられます。超高層の密室空間も良いですが、この“ちょこっと不安定”なのも良いな、と思います。
「僕、嫌な事があるとコレによく乗ってたんだ」
輝君は僕の知らない昔を思い出している様です。
「祖母としょっちゅう来てたんだ、小学生の時目の色の事で苛められて登校拒否してた時期があって……『その目の色おかしいだろ』って難癖付けられて」
僕も苛められてたから彼の気持ちがよく分かります。見た目の事で難癖を付けられても当人にはどうする事も出来ません。精神的に追い詰められて自殺を考えてしまう事だってありました。そんな時に彼の心を支えてくれた観覧車君、苦しんでいた輝君を優しく受け留めてくれたお蔭で僕たちは出逢える事が出来ました。
「家の親は『学校なんて行かせない!』って僕を祖母の元に預けて、当時の担任が来ても絶対会わせようとしなかったんだ。一番上の姉が一緒に付いてきてくれて勉強を教えてもらって……結果的には祖母の自宅近所の学校に転校したけど、それで苛めからは解放されたよ」
輝君のご家族もとてもお優しい方たちだったんだね……僕もそうでしたが、家族に恵まれていたのはある意味幸せだと思います。同じ様な状況の子供たちの中には家族にさえも苦悩を言えなかったり理解されなかったり、忍耐の限界点を越えて最悪の決断をしてしまう場合だってある訳ですから。
「何か湿っぽい話しちゃったね……って誠君!?」
輝君は僕の顔を見て慌てています。まぁ号泣しちゃってたからそりゃあね……しかも拭っても拭っても止まらなくて顔は涙でぐちゃぐちゃになってるし。
「……ゴメンね……ううぅ……」
輝君は戸惑いながら僕の頭をよしよしと撫でてくれます。それが余計に心に沁みてまた泣けてきちゃう……これじゃ周囲の人たちに変な誤解されちゃうよ、喧嘩したとか嫌な事言われたとかじゃないからね。
結局観覧車は号泣だけで終わってしまい、泣き顔の僕を輝君が優しく支えてくれてその場をあとにします。
「ゴメンね輝君……最後になるかも知れないのにこんなになっちゃって……」
「良いって、僕は君と一緒に乗れただけで幸せだから」
な、なんて優しい言葉掛けてくれるの……僕はまた泣きそうになってしまいます。でもこんなのが最後だなんて……そんな思いを察してくれたのか、輝君は僕の頬にそっと手を当てて微笑みかけてくれました。彼の笑顔はとっても綺麗でドキドキしてしまいます。いじめの原因になったなんて信じられないくらいに美しい、彼のゴールドの瞳に僕の顔が映っています。
「誠君は本当に優しいんだね、でも今日は笑ってて欲しいな」
……そうだよね、遊園地は皆が笑顔でいる場所だもんね。僕は輝君の宝石の様な瞳を見てうん、と頷きました。
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