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第十一話

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僕は僕に残された父の遺品と、母に残された父の遺品。
それらを見比べながら、藤田しげるの日記を読み始める。

500円玉ーーたしかオリンピックの年のだったな。
僕はその年の日記があるか、数札の日記帳を探した。

ーーあった。

「20××年3月15日。ーー今日俺は斎藤健吾と会った。彼は俺を含む四人の名前が書かれた紙を持ってきた」
ここまででその日の日記は終わっていた。

父もこのメモを持っていったようだ。

「3月16日。ーー健吾からの電話があった。
俺たち四人は共犯だと言われた。ーー俺は罪を犯した覚えはないが、どーゆー事だろう?」

「3月20日。ーー健吾が言った。殺人、と」

日記だけを読んでいると、父親を含んだ五人が共謀して何かの事件を起こしたらしい。
殺人なのか?
ーー父は犯罪者なのか?

それ以外、日記に目立ったところはなかった。
そのページに付箋をして、母に見せてみようと思った。

夕方近くなって、ようやく母が帰ってきたようだ。
「ただいま~」
「ねーねー母さん、これ見てー」
階段をかけ下りる。

まるで昔から母と一緒にいたような感覚だ。
僕の手から日記帳を受けとると、黙々と読んでいる。

ーー何これ?
ーー共犯?何の事?

母もそんな話を聞いたことはないらしい。

「ーーどーやって真相を調べたらいーと思う?」

母に聞いた。

うーん。私にもどーするべきなのか?さっぱりーー?
それもそうだ。
犯罪関係になると、素人ではどーにもならないのかも知れないと思ってしまう。

「ーーそう言えば、かーさんの方はどうだった?中山兼に会えた?」

「あ、そうそう。会えたよ。彼も何かよくわからないひとり言を言ってたわね。ーーアイツに知られるなんて。って」

ーーアイツ?アイツって誰だ?

他の遺品も見てみると、何かヒントがあるのかもしれない。
僕は宝箱を持ってきた。

タバコなんて吸わなかったはずの父の遺品としては、灰皿と言うのも妙な話だった。

会ってきた3人の中で、タバコを吸っていたのはーー藤田しげるだけだ。

「そーいえば母さん、中山兼はタバコを吸っていた?」
「ーー吸う人なのかも知れないけど、拘置所の面会ちゅうじゃ吸えないわよーーでも、タバコの臭いがしたわ」

母はその臭いがキライでタバコをやめている。

「そっか、、他の二人も吸っている可能性はあるわけだーーたまたま僕が会った時に吸わなかっただけで、、もともと父が吸っていた可能性もあるのか」

「父さんはタバコやめた人?」
「吸ってたのは見た事がないわね」
「ーーうーん。じゃ、何でこんな灰皿があるんだろ?」
「そうねー?」
よく見ると、ガラス性のその灰皿はところどころ錆びていて、少し汚く見える。
それを僕は新聞紙にくるみ、中山兼。ーー僕はまだ会っていない人物に見せてみようと思った。
ーー会ってくれないかも知れない。でも、、。


僕はもう一度、東京拘置所に行ってみる事にした。

「ーー中山謙に会いに来ました」
「どのようなご関係ですか?」
「家族です」
「こちらへどーぞ」

刑務官が新人なのだろうか?名前の確認もせず、僕の言葉だけを鵜呑みにして、面会出来るようになった。
細長い通路を歩く度に、足音が響き渡る。
周りを囲む薄暗さが余計に、その足音を気味の悪い音の様に感じさせた。

面会部屋とでも言うのだろうか?
ガラス張りの窓の部屋が見えてきた。

刑務官が先に行く。

「ーーあ、今中山兼は面会してるようですので、しばらくここでお待ちください」

「はい」

遠目に面会している男の顔を見た。
あれはーー沢田昌平だ。
二人の会話に耳を澄ませる。

「ところで、あの時は参ったなー」
「ほんとになー。まさかあんな現場を健吾に見られるとは、、俺たちに脅迫なんかしやがって、、」
「あの灰皿はどうなったんだろ?ーーあの時の凶器はまだ見つかってないよな?」

ーー灰皿だと?もしかして。

もう面会する必要性はなくなった。
僕が知りたい真実は、おおよそ掴めた気がした。

「これから人と会う約束なので、また来ますと中山兼にお伝えください」

刑務官に頭を下げて、僕は拘置所を出た。

外に出てすぐに恵に電話をする。
「ーー母さんの知り合いで、警察の人いない?」
「ん?ーー警察、1人だけいるわよ。何があったの?」
「大丈夫、何にもないよ」
「ーー父さんが殺された理由が、わかったんだ。その証拠を調べたくて」

「ーーじゃ、協力してもらえるように話してみるわ」

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