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第二話

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少し強面の刑事が、報告にきた。

「斎藤健吾さんの死因ですが、どうやら自殺の様です」

あれだけ俺の暮らしを荒らしておいて、その結果。
彼らが出した答えはこれだった。
自殺ーー。

まだ幼い俺には、調べ方もわからない。
頷くしかないだろう。

俺の面倒見ると言っている大人たちは、黙ってその言葉を信じたようだ。

ーー父が殺された。となれば、父の人間性を疑われたりするんだろうか?
被害者なのに、、?

俺は昔から、考えすぎてしまうようなところがあるが、こんな時まで考えすぎて裏を見ようとしてしまうのはどうなのだろうか?

今は警察官の言葉を信じるより他ないだろう。

でも必ず、、いつか必ず、、俺が父の死の真相を探しだして見せる。
その為には父の遺品の整理をして、ヒントを見つけなければならない。

父の死から一ヶ月が過ぎた。

4月の終わりだと言うのに、今日は暑い。もう真夏日になっている。

これまでの一ヶ月間。
おじさんや、おばさん達と俺は話し合いを続けた。その内容は「父さんがいなくなって俺一人だけの家をどーするか?」
そして、俺の住む家は、おじさん達の家になるのか?それとも、父と暮らしたこの家になるのか?ーーそんな会議が日常的に繰り返された。
その結果俺にとって最善の方法で決まった。

父と暮らした家は維持してくれると言う。
しかし、俺が仕事をし始めるまでは、おばさんの家で暮らす事になりそうだ。

ゴールデンウィークには、必要な物だけをもって、おばさんの家に行かなければならないだろう。
俺は荷造りを手伝わなければ行けない。
なぜなら、父の遺品だけは俺が大事にしておきたいからだ。

まず、俺は父の遺品を整理することにした。

個人的に、父さんが大切にしていたものに興味があった。

ーー父さんの宝箱には、一体何が入っているんだろう?

始めに目についたのは、父さんと見知らぬ女性、そして幼き日の俺がいる写真だった。
写真はそれ一枚だけの様だ。
「これーー俺だ」
思わず俺は笑ってしまった。
だって、家族、皆がとても幸せそうだったから。

ここに一枚の写真がある。
もう戻れない過去を写した写真。

感傷に浸りながら、俺は父さんの宝箱の整理を続けると、次に出てきたのは、母さんとの婚姻届だった。

ーーそーいえば、今まで父と二人の生活が当たり前のもののように思えてたけど、、母は一体どこにいるんだろ?
なぜ、今まで母の存在を気にする事なく生きてこれたんだろう?

ーー今、母は一体何をして、どこで暮らしているんだろうか?

その日。
俺は母が一体どんな顔で、どんな体格の人だったのか?
考えてみた。

物心着いた時に母はもういなかったのだろうか?いくら考えてみても、思い出そうとしても、母の姿は記憶の片隅にも出てこない。

一枚の写真ーーここに写っている黒髪で細身の女性。
この人が母なのだろうか?

市役所に出すはずの婚姻届を、父はなぜ大事そうにしまっていたんだろう?

父の宝箱には、到底、理解出来ない物が入っている。

その他にあったのは小さな箱だ。
蓋を開けて見てみる。
そこには指輪がしまわれていた。
誰のものなのか?誰に届けたものなのか?ーー
不思議でしかない。

更に調べていくと、今度は灰皿が出てきた。
父は、もーずっとタバコなんて辞めていたはずなのに。

そして次には「健吾へ」と書かれた封筒。
差出人の欄には何も書かれていない。

恐る恐る俺はその封筒から、中身を抜き出した。
そこには、、。

「山崎  太郎。出版社勤務」
「沢田  昌平(しょうへい)。教員」
「藤田  しげる。プログラマー」
 「中山  謙(けん)。公務員」

それだけが書かれていた。その紙切れに一体何の意味があるのか?ーー俺は不思議だったが、よくわからなかった。

調べてみよう。
父の死の真相をーー。
多分、あの四人の名前が書かれた手紙。
それはきっと、父からのメッセージ。

もう言葉すら出せない父からの手紙なんだと俺は思った。

父の宝箱には、それだけがカラカラと音を立てている。

ーーそれらすべてに、一体どんな意味があるのか?父の人生を辿ってみたい気がした。
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