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会ってほしい人

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鈴原カイト《すずはらかいと》からの連絡を受け、会ってほしい人が今日なら時間が取れると言う。
俺はカイトと《その人》に会う約束をした。

約束の時間はPM20時。
ーーどんな人なんだろう?そんな事を漠然と考えながら、俺の胸で何かが訴えている。
漠然と、良くない事が起こりそうな気がした。

待ち合わせの場所に二人が来ると、俺は目を疑った。

ーーまさか、、。
ーー何でここに??
ーーたまたまここで飲もうとしてただけか?
ーーいや、違う。この感じは、、。

漠然と心の中に疑問符ばかりが浮かぶ。

二人は手を繋いでいる。
それも指を絡め、いわゆる恋人繋ぎで突っ立っている。

俺は現実が受け止められずに座ったまま、声もかけずにその姿を見つめていた。

「ーーどう、、して??」

俺は蚊の鳴くような小さな声でぼやいた。

「どうも!山崎拓海くん、、」

そこに立っていたのは、あの時の笠原佐知子の姿だった。

「ーー俺たち、結婚を前提として付き合ってるんだ」

ーーは?
ーー何を言ってるんだ?この男は、、?

待て待て。
俺はこんなもんを見せられる為に、呼ばれたのか?
待て待て待て。
ただの嫌がらせじゃねーか、こんなの。

「帰る」

俺はすぐさま、席を立つ。
これ以上、俺はここにはいられなかった。この空間はもう耐えられない。
俺はそのまま店を出た。

店を出て暗がりの方へ向かって走っていく。
後ろからカイトが追いかけてくる。

ーーあの時の言葉は何だったんだ?
ーー俺が人生初のプロポーズをした時。男と付き合う気はない、、。結婚を前提にして付き合っているのに??
だったら、心に決めた人がいる。
そうハッキリと言ってくれた方が諦めも着くってもんだ。
それなのに、、最低だ。

小さな石ころを蹴っ飛ばす。

「ふっざけんなー」

これでもか、ってくらいに大きな声で叫んだ。

「ーー何を叫んでんだよ!拓海、、」

カイトの声がした。俺は思わず、カイトの胸ぐらをつかんだ。

ーー知ってたのか。俺が彼女の事を好きだってこと。

「あぁ、彼女から聞いたよ。ーーお前、プロポーズしたんだって??しかも突然、、。とんだお笑い草だぜ。俺と佐知子はもう結婚式の日取りまで決まってるんだ。呼んでやるからな、、」

ーーそんなとこ、行くもんか。

「ーーお前、、謀ったな」

カイトの胸ぐらをつかんだまま、俺は言った。

「そーだ。だって、俺はお前のせーですごく痛い思いをしたんだ。一歩間違えば死んでてもおかしくなかったんだーーそれなのにお前は無傷なんておかしいだろ??だから、、」

「許すって言ってたのは、嘘だったのか?」

「当たり前だよ!拓海、、何で俺が、お前を許さないといけないんだ。金なんかで、納得できるかよ!」

ついにカイトの本性を知った気がした。
思わずカーッとなってしまった。
もう止めようがない。

ーーふっざけんな!人の事をバカにしやがって!!

胸ぐらをつかんでいた手に力が入る。
俺は思わず彼を突飛ばし、足元に転がっていた大きな石で、カイトの頭を殴り付けた。
彼は赤い血を出して倒れた。
生きているのか、死んでいるのか?わからないが、、彼はまったく動かなくなった。

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