みゆたろ

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誕生

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ホンギャー。ホンギャー。

分娩室の中から、元気な赤ちゃんの鳴き声が聞こえてくる。

看護師だろうか?医師には見えない人たちがバタバタと出入りする。
私はまるで母の命が危ぶまれているような気分に陥った。

「ーー産まれましたよ。元気な男の子です」

看護師さんが、由美の母と私たちを呼ぶ。

わぁー。かわいー。

初めての赤ちゃんに興奮する。
男の子か。
ーー仲良くなれるかな?

兄弟でも仲が悪い人もいるのだと聞く。
だからじゃないが、まるで友達が出来るかのように心配になってしまう。

興味津々の目をしていたのだろう。

「触ってみる?」

看護師さんにそう言われ、私は黙って頷く。

赤ちゃんの小さな手。
触れてみるとだいぶ柔らかくて、ほっとした。
初めての赤ちゃん。
心がときめいた。

疲れはてた顔をした静香が私を見て言った。

「この子があなたの弟よ?仲良くしてあげてね」

「ーーうん」
私は笑った。

母が病室へと運ばれていく。
疲れたのだろうか?
病室に着く前に、母は眠りについた。

「ーーお疲れ様」
由美の母が、そう言ったのでよく分からないまま、私も「お疲れ様」と呟く。

そして私は由美の家に帰っていく。
由美と由美の母と共に。

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