みゆたろ

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ゆうか

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目が覚めると、目を赤く染めた夕夏と目が合った。

ーーさっき見た光景、、あれは真実だったんだ。

俺はそう確信した。
目を張らしている夕夏が、何よりそれが真実
だと物語っている。

俺は話した。

「ーー今、あの時の夢を見てたんだ」
「どの時?」
夕夏が聞いた。

「ーーあの時、俺にカミナリが落ちた、、よね?」
夕夏に確認する。
「ーーあー、あの時は柴ちゃんがすぐに意識を失っちゃって、大変だったんだよ。3日も目覚めなかったんだから。」
「その間、夕夏は泣いてくれてたね?」
「うんーーってか、何で知ってんの?」
「俺、その時に上空から俺の姿と、泣いている夕夏を眺めてたんだ」
「そうなの?」
「うん。それで、俺多分、死後の世界に行こうとして、前の飼い主に会ったんだ」
「あー、前に声だけ聞いた人?」
柴ちゃんは頷いて「うん」と言った。
「そこで、前の飼い主から俺は言葉を教わってきたんだ」
「そうだったんだ。だから突然話せるようになってたんだね?」
「そうなんだ。ビックリしただろ?」

そりゃまぁ、ビックリもしたけど。
すごい奇跡だと思ったよ。

「暇な時に話し相手してくれるし、私は柴ちゃんが話せるようになった事がとても嬉しかったかなぁ」

え?
うれしい?
間違いじゃないの??

「え?今、何て言った?」
「ーーん?柴ちゃんが話せるようになった事が嬉しかったって」
夕夏は不思議そうに繰り返した。

「人の言葉を、、人の言葉を話す犬なんてーー気持ち悪いだろ?静香が言っていたように。

「柴ちゃん、そんな風に思わないでーー誰も気持ち悪いとは思わないし、誰もが初めは驚いちゃうだけだから」
夕夏はその大きな目に涙をためている。
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