みゆたろ

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ポチのその後

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あれから五分ほどの時間が立った。
動物病院では、ポチが医師の治療を受けている。
傷だらけではあるが、大きなケガはしていないようだ。

ーー良かった。
ーー本当に良かった。

由美の母は本気で安堵した。

「お母さん、、」
はぁはぁ、と息を切らせながら、由美が到着する。

「大丈夫。幸いな事にポチも重症だけど、、命は守られているから」

諭すように母が言った。

「ーー良かった。殺されちゃう前に助けられて、、」

「ーー由美、あなたもね。思い通りにならない事ってこの世界にはたくさんあるわ。だけどね、人とか生き物のせいにしたらダメよ?分かってると思うけどーー」

「大丈夫。あんな男と一緒にしないで」
由美は笑った。

一時間もすると、ホータイでぐるぐる巻きにされたポチが出てきて、ワンッと鳴いた。

「ーー無事で良かった」

由美と母で抱き締めようとするが、これまでの事が心に残っているようで、抱き締めようとするとポチは逃げてしまう。

とりあえず犬用のゲージに入れてもらい、家に連れ帰った。
ポチは縮こまっている。

クゥーン。

「ーーおい、お前大丈夫か?」

「ーー」

ポチは黙っている。

「ーー安心しろ!あの人たちは味方だ。俺もしばらく世話になったんだ。だから、、」

ーー人間なんて、、。
ーー人間なんて、、。
ーーもー信じられない。

「人間なんて、もう信じない」

ポチが小さく呟いた。

「ーーお前の気持ち、わかるよ。でも、しばらくここにいてみたら、これまでの人間と違うとわかって安心するはずだ。また人間を信じてくれるのを待ってる」

そう言って柴ちゃんは、得意気な顔をして見せた。
そして夜になる。
柴ちゃんはこの日、由美の家に泊まることになった。
ポチを安心させる為にーー。
 
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