犬

永遠

ーーこれからは僕ともう一度、一緒に生きてみないか？

娘が、夕夏が目の前に座っている。
少しだけ恥ずかしい。

「ーーはい」

嫌いになって別れた訳ではない。
彼女が出来たからと振られた事に腹を立てていた。
でも別れたと言う。
思いは受け止めなくてはいけないだろう。

柴ちゃんがやっと再開させてくれたのだから。

柴ちゃん一匹と出会った事で、目の前のすべてがいい方向に進んでいった。

私も母の本心に触れ、祐司と出会い「パパ」と呼ぶべき人がいる事になる。母からしてみれば再開になるんだろうが、、。
そして、私は一番の願いだった「犬」を飼う事を許された。

母は母で祐司と言う人とよりを戻し、気持ちを新たに切り替えて、新たな恋のスタートラインに立つのだろう。

「ーーそれじゃ、お散歩でも行こうか？」

ワンッ、ワンワン。

尻尾を振り上げて、手足をばたつかせている。こうしてみると、ただの犬のようだ。

私は柴ちゃんに導かれるままに、お散歩コースを回った。
柴ちゃんの動作の一つ一つが、鮮明に刻まれていく。

「ーーちょっと不安だけど、、ちゃんと世話しろよ」
柴ちゃんがぼやいている。

「もう大丈夫」
私は笑った。

ーーこれからもずっと一緒だよ。柴ちゃん。

こうして私たちはちゃんとした「家族」として、毎日を過ごすようになっていた。