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第0章
第4話「深夜のサウナ」
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優里は、自分の部屋にいかず、結局俺の部屋でなることにしたようだ。
幸い、布団は一式あまっているので、一応、離れて寝ることに。
「酔ってるんですか?」
「う。うん……分かちゃった?」
お互い背中を向けているので表情はわからないが、何となく神妙な顔していることだけは分かった。
「ちなみに、予定ってどうなってるんですか?」
「あー。明日、一緒に歩き回る。その後、食事だったかな」
「この辺って、神社とか、寺とかが多いそうですよ」
「そうなの?」
「ええ、昔は山神を祀ってたとかで、周辺に山神様関連のものが結構あって、ここも昔は、山神様を祀り肖ってたとか」
「詳しいんだね……」
「下調べぐらいはしますよ」
「ああ、そう言えば慶太、ガラケーだもんね」
「そうですよ、悪いですか」
「今どき、SMSっても変わってるー」
「仕事上不便がなければいいんですよ」
「ふーん、でも突然調べたくなっても調べられないし」
「出先で、調べること自体が間違っているんですよ」
「あ、そういうこと言っちゃう?」
「僕の携帯の話はもういいです、それより優里さんは大丈夫ですか?」
気まずい沈黙が流れる。
話題を変えるつもりで、言ったのだが失敗だったようだ。
「ねえ。恋ってなにかな?」
「恋……ですか?」
「そう、人を好きになるってどんな感じ?」
「俺には分かりませんよ……ただ……」
「ただ?」
「なんか、無性に会いたくなったり、話したくなったり、離れると寂しくなったり、置いてかれると追いかけたくなったりする感じが恋なんですかね」
自分のことを言ってるようでむず痒かった。
しかし、俺は優里に恋してるのか……?
「慶太の持論?」
「まあ、そんなところです」
「いるの?そういう人」
「いませーん!」
「居ないのかよ」
優里は、笑っている。
こういうのも有りかなと俺は思う。
「あーねよねよ、笑ってねれなくなりそうだし」
「はいはい、探偵やめてお笑い目指そうかな……」
「ムリムリ、基本的に寒いし」
「あーそっすね……」
そんな、中身のないような話をしながら、何時の間にか眠ってしまった。
夢を見た。
女の子が手を振っている。
俺は、それを眺めながら女の子の方へ歩き出す。
すると突然、辺りが真っ赤に染まる。
空も、地面も、景色も、すべてが真っ赤。
でも、女の子の後ろだけが黒い。
その黒が、段々とヘドロ状の触手みたいに変わっていき、女の子を叩き潰した。
俺は、そこで目が覚めた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
まるで、自分が潰されたような錯覚があり、全身が強く脈打っていた。
体からは汗が吹き出し、息は切れ、自分がまだ夢の中にいるようだった。
窓を見ると、外はまだ暗いようだった。
俺は体を起こし、優里をみる。
静かに寝息をたてて寝ているようだ。
起こさないように静かに、布団から抜け出し、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、一気に口の中へ流し込む。
よく冷えた水が、体を冷やしてくれる。
「ふう……」
なんか、気が重いので俺は静かに部屋のドアを開けて、廊下に出る。
腕時計を確認すると、時刻は2時40分をしめしていた。
綺麗に手入れされた、中庭を眺めながら、廊下をゆっくりと歩く。
「綺麗な庭だな……」
俺がそう呟くと、その言葉に返事が帰ってくる。
「いい庭でしょう。うちの女将の自慢なんですよ」
驚き振り返ると、先程会った支配人風の男が立っていた。
「ああ。あなたでしたか。びっくりしました」
「すみません、驚かせるつもりはなかったんです。ただ庭を褒められて私も嬉しくなってしまいまして。そう言えば自己紹介をしてませんでした。私は生天目五十家と申します。この旅館の支配人をしています」
「変わったお名前ですね」
「よく言われます、父が付けてくれたそうなのです」
「へー。そうなんですね……お父さんは先代ってことですか?」
「いえいえ、この旅館は私が買ったものでして」
ああ、そう言えば、何年か前に経営者が変わったとか見たな。
何年前だっけかな……
「橘様は、どうされたのですか。こんな夜遅くに」
「いやー眠れなくて……」
「ああ、それでしたら。温泉でもどうですか?当旅館は24時間、温泉に入れるのもウリのひとつなんですよ。温泉は地下にありますので案内いたしましょうか?」
「お願いします」
「かしこまりました」
生天目さんは、ゆっくりと歩き出す。
俺はそれに付いていく。
正面入口の左側に、階段があり、上に行く階段と下へ行く階段がある。
「こちらです」
促されるまま、下への階段を進むと、洒落た明かりと、暖簾がかかった入り口が出てくる。
更に奥に進むと、二股に別れ、片方に女と書かれた暖簾、もう片方に男と書かれた暖簾がかかっている。
左側に従業員通路、右側に、憩いの場と書かれた扉があった。
「落ち着く雰囲気ですね」
「ありがとうございます。ささ、是非ゆっくりとお楽しみください」
生天目さんは、一礼して従業員通路へと入っていった。
俺は、男と書かれた暖簾の方の入り口へ入る。
中は、ロッカーが並び、洗面台や体重計、ドライヤー、アメニティの入った自販機と飲み物の入った自販機が置かれていた。
俺は、適当に選んだロッカーに服を投げ入れ、風呂の扉を開ける。
「おお……」
蒸気の籠もった浴室内は、想像よりも広く、いくつかの浴槽が用意されていた。
効能の違うもの、温度の違うもの、電気やジェット、サウナもある。
俺は、適当に体を洗い、湯船に浸かる。
そしてサウナに直行する。
「きっく……」
貸し切りサウナほど、心地よいものはない。
俺は、壁に書かれた効能やらを眺めながら、全身から汗が吹き出すのを感じていた。
すると、壁に書かれた文字に不自然なものがあった。
「……欲張りな神様?」
内容はこうだ。
欲張りな神様は、人の若さを欲しがっている、人の愛を欲しがっている、人のお金を欲しがっている。
だから、高尚な旅人に地下深くに封印された。
それ以降は見切れている。
これだけ手書きで書かれたかのような、文字で書かれており不自然だ。
「なんかこれだけ、後から付け足されたみたいだな……」
などとぼーっとしていたら、呼吸が苦しくなってきた。
「やっば」
サウナから出ると、他に客がいた。
顔は見えないが、風呂に使っている。
後ろ姿から、若い男っぽい。
水風呂に入り、体に冷ましながらボーッとしていると、風呂に入ってたはずの若い男が水風呂に入ってくる。
内心、なんだこいつと思いながらそいつの顔を見る。
童顔で、下手したら高校生ぐらいにしか見えない、髪は短く、ボサボサだ。
ちらりと、目があってしまう。
まずい、とすぐに顔を反らすが、そいつは俺から視線を外さない。
「こんにちは……いや、こんばんはっすかね」
突然、話しかけてくる。
気分は、ゲームで敵とエンカウントしたときみたいだ。
「こ、こんばんは……」
「突然、話しかけて申し訳ないっす、実は俺はこういうもので……」
と言いながら、水の中で自分の体を弄り始める。
「……アアアアアアアアアアア!!!!!!手帳はロッカーだああああああああああ」
うわっ、びっくりした。
「申し訳ない。驚かせました、今手帳は無いんですが私は刑事なんす」
「は、はあ……」
「信じてもらえないと思いますが……」
「ま、まあ信じますよ」
「ありがとうございます。実は、とある事件の調査をしていて、それでちょっと聞きたいことがあるんすよ」
大丈夫か?
こんなとこでぺらぺらしゃっべて、ってか寒くなってきたぞ……
「……ああ、写真もない……いや、十数年前に行方不明になった女性を探してまして、なにか知らないかな聞いて回ってるんすよね」
「ああ、そうなんですね……残念ながら、何も知らないです」
「そうっすよね……」
明らかに、残念そうにしている。
俺は、話が終わったと思い、水風呂を上がる。
すっかり冷めきってしまった……
そうして、シャワーを浴びに行こうとすると……
「ああ、待ってくれっす。まだ聞きたいことが……ぶっえっくしょん!」
俺は無視してシャワーを浴びている。
その刑事も隣に来てシャワーを浴びる。
「あのー?」
話しかけてくるが無視する。
無視し続けると、刑事は一回、浴室から出てまた入ってくる。
「これで文句ないっすか?」
どうやら警察手帳をとってきたようだが、所々濡れてしまっているのは良いのか?
「いや、俺は何も知らないですよ、ただの観光客ですし」
「ただの観光客は、こんな時間にサウナなんてはいんないっすよ」
「いやいや、それは偏見ですよ」
「とりあえず、捜査に協力してほしいっす」
「分かりましたから、風呂から出ましょう」
しつこい刑事を、相手にしながら俺は浴室から出て、タオルを探す。
やっべ、タオル持ってきてない……
「どうしたんっすか?」
刑事がニヤニヤして、こっちを見てくる。
ああ、こいつ分かってるな……
「タオル……忘れたんですよ」
「どうぞっす」
「ありがとうございます」
「いいっすよ」
俺は受け取った新品のタオルで体を拭き、服を着る。
「あ、そう言えば名前いってなかったすね。僕は葛西光太郎、よろしくっす」
「俺は、橘慶太です」
「橘さん、この後お時間あるっすか?」
「……あります」
「よかったっす」
脱衣所にある、ベンチに二人で座り、仕方なく刑事……葛西に協力する。
「で、さっき聞きたかったのはこの女性っす」
写真には、学生服を来た高校生くらいの女の子が写っている。
黒髪で、美しい顔立ちをしている。
それに、写真が妙に古い……ああ、十年くらい前って言ってたっけ。
……この、女の子。どこかで見たような……
「知らいないですね、やっぱり」
「そうっすか……」
「じゃあ、今度はこの男についてっす」
また、同じ様に写真を出す。
そこには、ここの支配人である、生天目が写っている。
「あれ、この人は、ここの支配人ですよ」
「そうなんすか?僕は、女性に対応してもらったので……」
「で、この人がどうしたんですか?」
「……いや、秘密です」
「はぁ?」
思わず、素で言ってしまい慌てて口を手で抑える。
こいつ刑事だったな……
「じゃあ、もういいですか?俺部屋に戻りたいんで」
「あ……れ、連絡先交換とかしないっすか?」
「なぜ?」
「いや……なんか、その……な、なんか分かったら教えてほしいっす!」
「事情もわからないのに、何も言うようなこと無いでしょ!」
「それもそうっすね……」
しばらく沈黙する。
「行きますね」
「あ……普通に連絡先交換してほしいです。他に捜査協力してくれる人居なくて……心細いっす……」
「……ガラケーですけどいいですか?」
「もちろんっす!」
こうして俺は、葛西と連絡先を交換した。
それでやっと開放された。
時計を見れば、すでに4時近くまでなっていた。
俺は、静かに部屋に戻る。
幸い、優里はぐっすり寝ていた。
俺は、彼女を起こさないように布団に入った。
幸い、布団は一式あまっているので、一応、離れて寝ることに。
「酔ってるんですか?」
「う。うん……分かちゃった?」
お互い背中を向けているので表情はわからないが、何となく神妙な顔していることだけは分かった。
「ちなみに、予定ってどうなってるんですか?」
「あー。明日、一緒に歩き回る。その後、食事だったかな」
「この辺って、神社とか、寺とかが多いそうですよ」
「そうなの?」
「ええ、昔は山神を祀ってたとかで、周辺に山神様関連のものが結構あって、ここも昔は、山神様を祀り肖ってたとか」
「詳しいんだね……」
「下調べぐらいはしますよ」
「ああ、そう言えば慶太、ガラケーだもんね」
「そうですよ、悪いですか」
「今どき、SMSっても変わってるー」
「仕事上不便がなければいいんですよ」
「ふーん、でも突然調べたくなっても調べられないし」
「出先で、調べること自体が間違っているんですよ」
「あ、そういうこと言っちゃう?」
「僕の携帯の話はもういいです、それより優里さんは大丈夫ですか?」
気まずい沈黙が流れる。
話題を変えるつもりで、言ったのだが失敗だったようだ。
「ねえ。恋ってなにかな?」
「恋……ですか?」
「そう、人を好きになるってどんな感じ?」
「俺には分かりませんよ……ただ……」
「ただ?」
「なんか、無性に会いたくなったり、話したくなったり、離れると寂しくなったり、置いてかれると追いかけたくなったりする感じが恋なんですかね」
自分のことを言ってるようでむず痒かった。
しかし、俺は優里に恋してるのか……?
「慶太の持論?」
「まあ、そんなところです」
「いるの?そういう人」
「いませーん!」
「居ないのかよ」
優里は、笑っている。
こういうのも有りかなと俺は思う。
「あーねよねよ、笑ってねれなくなりそうだし」
「はいはい、探偵やめてお笑い目指そうかな……」
「ムリムリ、基本的に寒いし」
「あーそっすね……」
そんな、中身のないような話をしながら、何時の間にか眠ってしまった。
夢を見た。
女の子が手を振っている。
俺は、それを眺めながら女の子の方へ歩き出す。
すると突然、辺りが真っ赤に染まる。
空も、地面も、景色も、すべてが真っ赤。
でも、女の子の後ろだけが黒い。
その黒が、段々とヘドロ状の触手みたいに変わっていき、女の子を叩き潰した。
俺は、そこで目が覚めた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
まるで、自分が潰されたような錯覚があり、全身が強く脈打っていた。
体からは汗が吹き出し、息は切れ、自分がまだ夢の中にいるようだった。
窓を見ると、外はまだ暗いようだった。
俺は体を起こし、優里をみる。
静かに寝息をたてて寝ているようだ。
起こさないように静かに、布団から抜け出し、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、一気に口の中へ流し込む。
よく冷えた水が、体を冷やしてくれる。
「ふう……」
なんか、気が重いので俺は静かに部屋のドアを開けて、廊下に出る。
腕時計を確認すると、時刻は2時40分をしめしていた。
綺麗に手入れされた、中庭を眺めながら、廊下をゆっくりと歩く。
「綺麗な庭だな……」
俺がそう呟くと、その言葉に返事が帰ってくる。
「いい庭でしょう。うちの女将の自慢なんですよ」
驚き振り返ると、先程会った支配人風の男が立っていた。
「ああ。あなたでしたか。びっくりしました」
「すみません、驚かせるつもりはなかったんです。ただ庭を褒められて私も嬉しくなってしまいまして。そう言えば自己紹介をしてませんでした。私は生天目五十家と申します。この旅館の支配人をしています」
「変わったお名前ですね」
「よく言われます、父が付けてくれたそうなのです」
「へー。そうなんですね……お父さんは先代ってことですか?」
「いえいえ、この旅館は私が買ったものでして」
ああ、そう言えば、何年か前に経営者が変わったとか見たな。
何年前だっけかな……
「橘様は、どうされたのですか。こんな夜遅くに」
「いやー眠れなくて……」
「ああ、それでしたら。温泉でもどうですか?当旅館は24時間、温泉に入れるのもウリのひとつなんですよ。温泉は地下にありますので案内いたしましょうか?」
「お願いします」
「かしこまりました」
生天目さんは、ゆっくりと歩き出す。
俺はそれに付いていく。
正面入口の左側に、階段があり、上に行く階段と下へ行く階段がある。
「こちらです」
促されるまま、下への階段を進むと、洒落た明かりと、暖簾がかかった入り口が出てくる。
更に奥に進むと、二股に別れ、片方に女と書かれた暖簾、もう片方に男と書かれた暖簾がかかっている。
左側に従業員通路、右側に、憩いの場と書かれた扉があった。
「落ち着く雰囲気ですね」
「ありがとうございます。ささ、是非ゆっくりとお楽しみください」
生天目さんは、一礼して従業員通路へと入っていった。
俺は、男と書かれた暖簾の方の入り口へ入る。
中は、ロッカーが並び、洗面台や体重計、ドライヤー、アメニティの入った自販機と飲み物の入った自販機が置かれていた。
俺は、適当に選んだロッカーに服を投げ入れ、風呂の扉を開ける。
「おお……」
蒸気の籠もった浴室内は、想像よりも広く、いくつかの浴槽が用意されていた。
効能の違うもの、温度の違うもの、電気やジェット、サウナもある。
俺は、適当に体を洗い、湯船に浸かる。
そしてサウナに直行する。
「きっく……」
貸し切りサウナほど、心地よいものはない。
俺は、壁に書かれた効能やらを眺めながら、全身から汗が吹き出すのを感じていた。
すると、壁に書かれた文字に不自然なものがあった。
「……欲張りな神様?」
内容はこうだ。
欲張りな神様は、人の若さを欲しがっている、人の愛を欲しがっている、人のお金を欲しがっている。
だから、高尚な旅人に地下深くに封印された。
それ以降は見切れている。
これだけ手書きで書かれたかのような、文字で書かれており不自然だ。
「なんかこれだけ、後から付け足されたみたいだな……」
などとぼーっとしていたら、呼吸が苦しくなってきた。
「やっば」
サウナから出ると、他に客がいた。
顔は見えないが、風呂に使っている。
後ろ姿から、若い男っぽい。
水風呂に入り、体に冷ましながらボーッとしていると、風呂に入ってたはずの若い男が水風呂に入ってくる。
内心、なんだこいつと思いながらそいつの顔を見る。
童顔で、下手したら高校生ぐらいにしか見えない、髪は短く、ボサボサだ。
ちらりと、目があってしまう。
まずい、とすぐに顔を反らすが、そいつは俺から視線を外さない。
「こんにちは……いや、こんばんはっすかね」
突然、話しかけてくる。
気分は、ゲームで敵とエンカウントしたときみたいだ。
「こ、こんばんは……」
「突然、話しかけて申し訳ないっす、実は俺はこういうもので……」
と言いながら、水の中で自分の体を弄り始める。
「……アアアアアアアアアアア!!!!!!手帳はロッカーだああああああああああ」
うわっ、びっくりした。
「申し訳ない。驚かせました、今手帳は無いんですが私は刑事なんす」
「は、はあ……」
「信じてもらえないと思いますが……」
「ま、まあ信じますよ」
「ありがとうございます。実は、とある事件の調査をしていて、それでちょっと聞きたいことがあるんすよ」
大丈夫か?
こんなとこでぺらぺらしゃっべて、ってか寒くなってきたぞ……
「……ああ、写真もない……いや、十数年前に行方不明になった女性を探してまして、なにか知らないかな聞いて回ってるんすよね」
「ああ、そうなんですね……残念ながら、何も知らないです」
「そうっすよね……」
明らかに、残念そうにしている。
俺は、話が終わったと思い、水風呂を上がる。
すっかり冷めきってしまった……
そうして、シャワーを浴びに行こうとすると……
「ああ、待ってくれっす。まだ聞きたいことが……ぶっえっくしょん!」
俺は無視してシャワーを浴びている。
その刑事も隣に来てシャワーを浴びる。
「あのー?」
話しかけてくるが無視する。
無視し続けると、刑事は一回、浴室から出てまた入ってくる。
「これで文句ないっすか?」
どうやら警察手帳をとってきたようだが、所々濡れてしまっているのは良いのか?
「いや、俺は何も知らないですよ、ただの観光客ですし」
「ただの観光客は、こんな時間にサウナなんてはいんないっすよ」
「いやいや、それは偏見ですよ」
「とりあえず、捜査に協力してほしいっす」
「分かりましたから、風呂から出ましょう」
しつこい刑事を、相手にしながら俺は浴室から出て、タオルを探す。
やっべ、タオル持ってきてない……
「どうしたんっすか?」
刑事がニヤニヤして、こっちを見てくる。
ああ、こいつ分かってるな……
「タオル……忘れたんですよ」
「どうぞっす」
「ありがとうございます」
「いいっすよ」
俺は受け取った新品のタオルで体を拭き、服を着る。
「あ、そう言えば名前いってなかったすね。僕は葛西光太郎、よろしくっす」
「俺は、橘慶太です」
「橘さん、この後お時間あるっすか?」
「……あります」
「よかったっす」
脱衣所にある、ベンチに二人で座り、仕方なく刑事……葛西に協力する。
「で、さっき聞きたかったのはこの女性っす」
写真には、学生服を来た高校生くらいの女の子が写っている。
黒髪で、美しい顔立ちをしている。
それに、写真が妙に古い……ああ、十年くらい前って言ってたっけ。
……この、女の子。どこかで見たような……
「知らいないですね、やっぱり」
「そうっすか……」
「じゃあ、今度はこの男についてっす」
また、同じ様に写真を出す。
そこには、ここの支配人である、生天目が写っている。
「あれ、この人は、ここの支配人ですよ」
「そうなんすか?僕は、女性に対応してもらったので……」
「で、この人がどうしたんですか?」
「……いや、秘密です」
「はぁ?」
思わず、素で言ってしまい慌てて口を手で抑える。
こいつ刑事だったな……
「じゃあ、もういいですか?俺部屋に戻りたいんで」
「あ……れ、連絡先交換とかしないっすか?」
「なぜ?」
「いや……なんか、その……な、なんか分かったら教えてほしいっす!」
「事情もわからないのに、何も言うようなこと無いでしょ!」
「それもそうっすね……」
しばらく沈黙する。
「行きますね」
「あ……普通に連絡先交換してほしいです。他に捜査協力してくれる人居なくて……心細いっす……」
「……ガラケーですけどいいですか?」
「もちろんっす!」
こうして俺は、葛西と連絡先を交換した。
それでやっと開放された。
時計を見れば、すでに4時近くまでなっていた。
俺は、静かに部屋に戻る。
幸い、優里はぐっすり寝ていた。
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