聖女様が職務放棄をするので、魔物討伐に駆り出された魔女なのですが…

あかとんぼ

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第2章

21話①

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教会の中は思ったより賑やかだった。
静まりかえった静寂な雰囲気をイメージしていたが、裏方はさすがに取り纏めをしている教会だけあって人も多く忙しそうであった。

ミネア達は目的の人物を探し教会内を歩いていた。裏方部分を抜けると長い廊下を抜け、教会の本殿に出る。

「わぁ、綺麗ですね。」

ミネアが思わず声にだしてしまう程だった。窓にはステンドグラスがあちこちに敷き詰められ外部から射す光で教会内はキラキラと虹色に輝いていたのだ。

もう、天使とか降りてきても不思議ではないわ…

あまりの神秘的な綺麗さに感動していると後ろからトンっと背中を小突かれた。

「目的を忘れてるぞ。ほら、あそこにいる男が例の奴だそうだ。」

ミネアが内装に気を取られているうちにどうやら目的の男性をアラン達が見つけていたらしい。

さて、どうやって切り出そうか…
近くには教祖様もいるし流石にいきなり犯人ですよね!とも言える訳がないし…

ミネアが1人でグルグル考えているうちにアラン達騎士団が男に近づいて行った。

「すみません。少しお話を聞いて頂きたいのですが。」

「私にでしょうか?えっと、貴方の悩み事でしょうか、全員は聞けませんがお一人でしたらこちらへどうぞ。」

男はアランを近くのベンチに座るよう促した。アランがベンチへ座るとその後ろに控えるように騎士達が並び、目の前に男が座った。

「実は、私はつい先日結婚をしたのですが、その報告に行った際に知人に呪を掛けられてしまい…幸い近くに解呪が出来る物がいたので大事には至らなかったのですが…どうでしょう?私はこの物へどう対応すべきか考えておりまして、宜しければご意見をお聞かせ頂きたいと…」

すっ、すごい。
なんて迫真な演技何だろう。被害者にもならなそうな俺様なアランが、か弱い子羊かの様に見える!!
それに、この話…確実に彼は当事者よね。
どう返すのかしら??

「そうですか、それは辛い思いを致しましたね。彼への対応は私も考えかねますが、そのままでよろしいんではないでしょうか?」

「そのまま?とは…」

「そのままです。特に被害があった訳ではないですし、このまま触れずさわらずの方が宜しいでしょう。」

「被害ね、確かに被害はありませんでしたが、解呪が出来る物がいなければ死んでいたかもしれません。それを何もせずそのままでいろと…言う事ですか。」

アランの顔がどんどん怒気を増しているのがここに居ても分かる。

「何もしないでいいなんて本当、どの口が言うんでしょうかね。貴方はこの話に身に覚えがあるんじゃないですか?ねぇ、そうですよね?」

静かに怒っている口調のアランが男を睨み付けると男は微かに震えていた。

「何の話か私には分かり兼ねますが、悩み事がそれだけでしたら私はこれで…」

男はもう話す事はないと言うようにアランから離れようとした。

「待って!!私達を見ても何も言う事はないのかしら!!」

マエルが痺れを切らしたようで隠れていた所から勢いよく男の前に飛び出した。

!!

流石にこれには男は勿論ミネアやアラン達も驚いていた。

「奥さん、危なくなったら逃げるって言ってたのに…自ら突っ込んで行きましたけど…」

思わずザーガスに向かってマエルの事を突っ込んでしまった。
ここにいても仕方がないと2人でマエルの後を追うと一瞬男は驚いた様にザーガスを見て眉を寄せた。

「あぁ、マエルさんどうしましたか?見てもと言われましても私には何が何だが…」

「しらばっくれる気ですか!貴方は私の旦那を呪に犯そうとしたでしょう!!」

「さぁ、しらばっくれるも何も私は何も知りません。それとも何か言いがかりに証拠でもあるのでしょうか?」

「証拠ですか…やっぱり行き当たりでは難しいですね…」

リザルドがアランと顔を見合わせて小声で話している。


証拠か…
確かに確信はあっても証拠らしい証拠は何も…

あっ、そうだ!!

「腕…。貴方の腕を見せて貰えますか?もし呪術をかけた犯人なら解呪された反動で呪が返ってる筈です。」

「!!、ミネアそれは本当か?いや、待て解呪の反動が返るなんてそんな話聞いたことないぞ」

「ええ、確かに殆どの呪は反動が返るなんて事はありません。ですがそれは軽い呪を解呪してるからであって、人の命を犯す様な強い呪は使う本人にもリスクはあります。
同等ではありませんが、強い呪い程解呪された時の反動は重くなります。
今回はかなり強い呪を使った様ですので体の一部が麻痺してるかも知れません。
そして、呪が返った証として腕に付いている筈です。
蛇状の痣が。」

「ほぉ、それは知らなかった。見せて貰ってもいいですか?貴方の腕を。」

アランは男の腕を掴み袖を捲し上げた。

「「!!!」」

ミネアの予想通り、男の腕にはくっきりと黒い蛇の様な痣が巻きついていた。

「さあ、これで言い逃れは出来ないぞ!」


アランは男の腕を強く握りしめた。
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