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第四章

婚約破棄は果たして

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式辞が終えると緊張が一気に増した。
ニースベルが一度ゆっくりと俯きそして顔を上げて宣言するように皆に話し始める。

さあ、断罪イベントのスタートだ。


「皆様、今日はこの場でもう一つ宣言したい事があります。私ニースベル・ラクトリアはリザベラ・フローレンスとの婚約を破棄し新たにリリアンヌ・カナルディとの婚約を宣言します」

ざわざわと周りが騒めく中リリアンヌはニースベルに手を差し伸べられて隣へと立ち皆の前へと立つ。
それを見るや否やふるふると肩を振るわし怒りを露わにしてリザベラが前へと出てきた。

「おかし、い。そんなの可笑しいですわ!!しっかり考え直して下さい殿下!あの者は男爵令嬢ですよ、殿下と婚約できる立場ではありません!それに、、彼女の親は卑しい身分ですよそんな血を王家に入れるおつもりですか!
ワタクシは幼少より殿下の隣に立つべく学んで参りました、何がいけなかったのですか?いえ、何もいけないことは無いですわ。そうですよね!!ワタクシこそがこの国の王妃に相応しいのですから!!」

リザベラは訴えるが今更遅い。
彼女が何を訴えようが婚約破棄は決まっているのだから。


「リザベラ嬢、本当に相応しいと思っているのかな。学園での君の目に余る行いが私まで届いているよ」

「そ、そんな事ある筈ありませんわ!何かの間違いです。そ、それに殿下にお怪我をさせてしまった事故のことならとてもとても反省致しておりますわ…」

事故なんだ…
実際はリリアンヌを突き落としたのに、一歩間違えればリリアンヌもニースベルも事故では済まなくなるのに…

「その件は確かに君に謹慎して貰っているが私が言いたいのはそのことでは無い。ログワーツ読んでくれ」

はい、とログワーツが手にしていた紙を読み上げる。

「一、リザベラ公爵令嬢は学園のティータイム時にリリアンヌ嬢へ足をかけ転ばせる、お茶をかけるなどの淑女らしからぬ行為に及んだ事」

「待ってください!そんな事ワタクシしておりませんわ!!しょ、証拠がありませんもの!」

シラを切ろうと必死のリザベラは読み上げている声を遮り必至に訴えている。

「証拠ですか、では乙女決定戦レディーディバイバルの時の毒混入事件についてですがこちらもご存じ無いのでしょうか」

毒混入事件…
アリアローズがリリアンヌの代わりに服毒した時の犯人はやっぱりリザベラだったのか。
あの事件後兄が異様に心配性になったのは忘れもしない。

「そ、それは、しょ証拠がありませんわ!」

リザベラが訴えるのが早いかニースベルとログワーツが目配せをするのが早いか後ろの扉が開くと騎士団に引き連れらて1人の男性が入ってきた。
その姿を見たリザベラは青ざめガタガタと震え始める。

「いやー、見つけるのに苦労しましたよ。まさかあの時毒を盛るように指示した人物が普通に公爵家で過ごしているんですからね。彼が全て話してくれましたよ、さぁこれでもまだ言い逃れ致しますか?」

「あっう、嘘よ!私は何も知らないわ!この人達が勝手にやった事よ!!」

「そうですか、では最後に」

まだあるのか。
リザベラ様どんだけやらかしていたんだと感心していると入り口からもう1人女性が入ってきた。
その姿は忘れもしない魔法対抗戦で本物の魔物でリリアンヌを襲わせる手引きをしたミュゼリア嬢だったからだ。

「あ、貴方!何故ここにっ、あっ」

驚きを隠しきれずリザベラは遂に失言してしまったと気付いたが既に遅かった。

「リザベラ嬢彼女と面識がおありですよね。貴方には彼女は処刑されたと伝えてありましたからね、何故かって彼女は魔物をこの王都に招き入れた犯罪者として扱わないとですからね。しかし、本当に招き入れたのが彼女であったならの話しですが」

「あ、ああその…」

言葉もしどろもどろになり初めの勢いはどこへ行ったやら縮こまり震えている。
周囲も魔物の話を聞くや否や表情が変わり公爵を立てようと援護しようとしていた貴族ですら尻込みを始めた。


「さぁ、言い逃れは出来ない。フローレンス公爵もお分かりですよね、先の二つは彼女一人で出来ても魔物の手引きは1人では到底無理な筈です。公爵も手を貸していますよね」

公爵と呼ばれ貴賓席にいたフローレンス公爵に視線が集まる。
先程まで涼しい顔をしていた公爵だったが魔物の件に触れられ悔しそうに口を噛んでいる。
実際公爵は事の首謀者であるミュゼリアを探し回っていた。その目で本当に処刑されたのかを確認するまでは安心できないと思っているからだ。
しかしそこは殿下達が一枚上手だった様でうまくミュゼリアを隠し公爵に見つからないよう手配していたのだ。

「まだ証拠がいる様でしたらあげますがそれはこの場ではない。国王陛下の元直にご判断をして頂きましょう。さあ、公爵とリザベラ嬢を連れて行け」

殿下の声が響くと公爵とリザベラは俯いて連行されて行った。
騒めく会場にニースベルはリリアンヌの肩を抱き締め口を再び開く。

「皆騒がせて申し訳ない。婚約破棄後に婚約とは些か性急ではあるが、彼女は学園の者なら知っての通り光属性の魔法の使い手だ。今はまだ未熟かも知れないが立派に王妃の勤めを果たしこの国を導いてくれると私は信じている」

ニースベルに見つめられリリアンヌは照れ臭そうに微笑むとゆっくりと口を開く

「皆さままだ淑女としても未熟なワタクシですがこの国の為光魔法を極めて必ず国の光としてお守りする事を誓います。どうかよろしくお願い致します」

静まり返る会場にリリアンヌは不安で仕方ないと言う顔を見せるがどこからかパチパチと拍手の音が聞こえ始めると会場は歓声と拍手で包まれた。

ふぅーとアリアローズは一息つくとセリーヌと見合った。
やっと終わった、殿下の話を聞いてから1日1日がとても長かったように思えてた日々からも解放される。
そしてパンドラ乙女からも…
シナリオが終了するのならこれからの話は私達が作って行くはずだ。

それなら、カインザークとの未来も少しは期待しても良いのだろうかとずっと不安に思ってきた事に漸く思いを巡らせようとした。

「もう一つ、ここで皆様にご報告があります」

賑わう会場にすっと通る声でカインザーク殿下が声を発するとニースベル殿下の隣へと並び立った。






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