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第四章
バルコニーの影
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「ああ、前にいらっしゃるのはカインザーク殿ではないですか」
突然声をかけられ驚くアリアローズとは違いカインザークは咄嗟にアリアローズを背中に隠すが、従者を連れた男性は此方へと近づいてくると2人の目の前で立ち止まった。
「ギデオン殿…急に入って来られるとは些か失礼ではないですか?此方へはどの様な御用がおありで?」
言葉は丁寧だがアリアローズを庇う手には少し力が入っており何だか不穏な雰囲気を感じる。
「いや、貴殿には挨拶をさっきしたからね用はないんだけど…」
そういうと後ろに隠されてたアリアローズを覗き込んだ。
「こっちに用があるんだ」
用があると言っているが笑顔とは裏腹に背筋にゾクッと悪寒が走る。
それに、ギデオンと言っていたがこの方は初対面ではあるが忘れる筈もない、この国セクタールの第二王子なのだから。
貴族令嬢でましてや招待客が殿下に用があると言われて隠れている訳にもいかない。
「お初お目にかかります。ラクトリア王国レネティシス男爵家の長女アリアローズと申します。殿下にお目にかかれて光栄で御座います」
「あぁ、君のことは知っている。どうかな少し2人で話がしたいんだが」
カインザークの後ろから出て挨拶をするとギデオンはそのままアリアローズの肩に手を回して自分の方へと引き寄せた。
「ギデオン殿!!アリアっ…いや、女性に対して急にその様な行動は失礼ですよ」
慌ててアリアローズに手を伸ばしたがギデオンに上手く交わされてしまった。
「あ、あのギデオン殿下、話ならお聞きしますのでその、離して頂けませんか?」
アルベルトとは全く似てない雰囲気にビクビクと声を掛けるとギデオンは口を開くなとばかりにアリアローズを睨みつけた。
「あぁー!!ここに居たんだねー。全く探しちゃった…ギデオン何故君がここに?」
どうやら長く帰って来ないアリアローズを心配してアルベルト達が探していたらしい。いや、多分ここにカインザークと居ることは皆んな知ってて見ないふりをしたのだろうが帰ってくるのが明らかに遅くて様子を見に代表が来たって所だろう。
だが、2人だと思ってた所に思い掛けない人達が居て驚いたのと同時に学友の顔ではなく王太子としての顔へと変わったのだ。
「これはこれは兄上、いや何少し彼女と話がしたくてね。いつも兄上のガードが厳しくて話せなかったから丁度いいと思ったんだが、残念話はまたにしよう。行くぞっ」
そう言うと従者を連れて会場へ戻って行った。
一体何が起こったのだろう、さっきまでカインザークと甘い雰囲気を醸し出していたのに今はバルコニーの雰囲気がピリピリしている。
「アリア大丈夫か?」
ぎゅっとカインザークに引き寄せられて初めて自分が震えていた事に気づく。
「すまない、怖い思いをさせた」
カインザークのせいでは無いのに自分が悪いかの様な態度でアリアローズの頭を優しく撫でた。
「い、いえカイン様のせいでは無いので謝らないでください。それに、ほらもう大丈夫です」
先程まで怖くて震えていたのが嘘の様に止まっていた。それよりこの心地いい香りと優しさにもっと触れていたいと思ってしまう。
「えーっと、僕も居ること忘れないでね」
あっ!!忘れてた…
離れたく無いと思いつつも体を離そうと体制を変えようとするがカインザークの腕がピクリとも動かずに離れることが出来なかった。
「アルベルト殿これはどう言う事だ?」
「あぁ、その前にアリアごめんね。怖い思いさせて…ギデオンには合わない様に行動してたんだけどまさか王宮のパーティーで乗り込んで来るとは思わなかったよ…はは、流石にあの時の行動がこんなに効果抜群だとは思わなかったよ」
あの時の行動?
「アルベルト様それって…」
「あぁ、ほらウララ鳥を食べた時のさっ」
あぁ、あの過激なスキンシップにそんな意味があったとは。
「さぁ、アリアみんなの所に戻ろう?セリーヌ達も探してるよ」
未だにカインザークの中にいるアリアローズに手を差し伸べる。流石に皆んなを待たせていると聞けば申し訳ないので名残惜しいがカインザークから離れバルコニーの付近にいると言う皆んなの元へ先に向かった。
「アルベルト殿、先程の…」
「あぁ、実は何処からバレたのかは分からないんだけど、どうやらギデオン派がアリアに目をつけたらしくてね。父には既に話していたから卒業パーティの時に動向が怪しかったのを見て休み中に何かあったらと思って連れてきたんだけど…まさか僕たちの目がある時に行動を起こすとはよっぽど焦っているのかもね」
参った参ったと軽く頭を抱えているアルベルトとは違いカインザークは険しい顔をしていた。
「ギデオン殿はアリアの力を知っていると言うことか…」
「うーん、そこまではどうだろう。確認のしようがないから分からないけどアリアに接触したがってるのは確かだね。明日で滞在期間も終わるしラクトリアに帰ったら僕の護衛をアリアにつけようと思ってるよ」
「ああ、そうしてくれ。今年には私も帰国するがそれまで彼女をよろしく頼む」
自分が近くで守れない以上王族に対抗出来るのは王族だけだろう。
万が一2人の関係が進展する可能性もなくは無いがそれは考えたく無い。
「まぁ僕も彼女に何かあるのは辛いからね、全力で守らせて貰うよ」
何やら打ち解けている様でバチバチ火花を散らしている2人をサァーと夜風が吹き抜ける、パーティの終わりを告げる鐘がなった。
翌日、アルベルト含めアリアローズ達は新学期の準備へとランドネル学園へと向け出発したのだった。
突然声をかけられ驚くアリアローズとは違いカインザークは咄嗟にアリアローズを背中に隠すが、従者を連れた男性は此方へと近づいてくると2人の目の前で立ち止まった。
「ギデオン殿…急に入って来られるとは些か失礼ではないですか?此方へはどの様な御用がおありで?」
言葉は丁寧だがアリアローズを庇う手には少し力が入っており何だか不穏な雰囲気を感じる。
「いや、貴殿には挨拶をさっきしたからね用はないんだけど…」
そういうと後ろに隠されてたアリアローズを覗き込んだ。
「こっちに用があるんだ」
用があると言っているが笑顔とは裏腹に背筋にゾクッと悪寒が走る。
それに、ギデオンと言っていたがこの方は初対面ではあるが忘れる筈もない、この国セクタールの第二王子なのだから。
貴族令嬢でましてや招待客が殿下に用があると言われて隠れている訳にもいかない。
「お初お目にかかります。ラクトリア王国レネティシス男爵家の長女アリアローズと申します。殿下にお目にかかれて光栄で御座います」
「あぁ、君のことは知っている。どうかな少し2人で話がしたいんだが」
カインザークの後ろから出て挨拶をするとギデオンはそのままアリアローズの肩に手を回して自分の方へと引き寄せた。
「ギデオン殿!!アリアっ…いや、女性に対して急にその様な行動は失礼ですよ」
慌ててアリアローズに手を伸ばしたがギデオンに上手く交わされてしまった。
「あ、あのギデオン殿下、話ならお聞きしますのでその、離して頂けませんか?」
アルベルトとは全く似てない雰囲気にビクビクと声を掛けるとギデオンは口を開くなとばかりにアリアローズを睨みつけた。
「あぁー!!ここに居たんだねー。全く探しちゃった…ギデオン何故君がここに?」
どうやら長く帰って来ないアリアローズを心配してアルベルト達が探していたらしい。いや、多分ここにカインザークと居ることは皆んな知ってて見ないふりをしたのだろうが帰ってくるのが明らかに遅くて様子を見に代表が来たって所だろう。
だが、2人だと思ってた所に思い掛けない人達が居て驚いたのと同時に学友の顔ではなく王太子としての顔へと変わったのだ。
「これはこれは兄上、いや何少し彼女と話がしたくてね。いつも兄上のガードが厳しくて話せなかったから丁度いいと思ったんだが、残念話はまたにしよう。行くぞっ」
そう言うと従者を連れて会場へ戻って行った。
一体何が起こったのだろう、さっきまでカインザークと甘い雰囲気を醸し出していたのに今はバルコニーの雰囲気がピリピリしている。
「アリア大丈夫か?」
ぎゅっとカインザークに引き寄せられて初めて自分が震えていた事に気づく。
「すまない、怖い思いをさせた」
カインザークのせいでは無いのに自分が悪いかの様な態度でアリアローズの頭を優しく撫でた。
「い、いえカイン様のせいでは無いので謝らないでください。それに、ほらもう大丈夫です」
先程まで怖くて震えていたのが嘘の様に止まっていた。それよりこの心地いい香りと優しさにもっと触れていたいと思ってしまう。
「えーっと、僕も居ること忘れないでね」
あっ!!忘れてた…
離れたく無いと思いつつも体を離そうと体制を変えようとするがカインザークの腕がピクリとも動かずに離れることが出来なかった。
「アルベルト殿これはどう言う事だ?」
「あぁ、その前にアリアごめんね。怖い思いさせて…ギデオンには合わない様に行動してたんだけどまさか王宮のパーティーで乗り込んで来るとは思わなかったよ…はは、流石にあの時の行動がこんなに効果抜群だとは思わなかったよ」
あの時の行動?
「アルベルト様それって…」
「あぁ、ほらウララ鳥を食べた時のさっ」
あぁ、あの過激なスキンシップにそんな意味があったとは。
「さぁ、アリアみんなの所に戻ろう?セリーヌ達も探してるよ」
未だにカインザークの中にいるアリアローズに手を差し伸べる。流石に皆んなを待たせていると聞けば申し訳ないので名残惜しいがカインザークから離れバルコニーの付近にいると言う皆んなの元へ先に向かった。
「アルベルト殿、先程の…」
「あぁ、実は何処からバレたのかは分からないんだけど、どうやらギデオン派がアリアに目をつけたらしくてね。父には既に話していたから卒業パーティの時に動向が怪しかったのを見て休み中に何かあったらと思って連れてきたんだけど…まさか僕たちの目がある時に行動を起こすとはよっぽど焦っているのかもね」
参った参ったと軽く頭を抱えているアルベルトとは違いカインザークは険しい顔をしていた。
「ギデオン殿はアリアの力を知っていると言うことか…」
「うーん、そこまではどうだろう。確認のしようがないから分からないけどアリアに接触したがってるのは確かだね。明日で滞在期間も終わるしラクトリアに帰ったら僕の護衛をアリアにつけようと思ってるよ」
「ああ、そうしてくれ。今年には私も帰国するがそれまで彼女をよろしく頼む」
自分が近くで守れない以上王族に対抗出来るのは王族だけだろう。
万が一2人の関係が進展する可能性もなくは無いがそれは考えたく無い。
「まぁ僕も彼女に何かあるのは辛いからね、全力で守らせて貰うよ」
何やら打ち解けている様でバチバチ火花を散らしている2人をサァーと夜風が吹き抜ける、パーティの終わりを告げる鐘がなった。
翌日、アルベルト含めアリアローズ達は新学期の準備へとランドネル学園へと向け出発したのだった。
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