モブの筈がモブじゃない〜乙女ゲームの世界ではモブだったはずなのに全然モブじゃありません〜

あかとんぼ

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第四章

滞在最終日

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煌びやかなシャンデリアに豪華な料理、そして着飾った老若男女の数々。
セクタールの滞在も今日で最後となり、来た当初より予定されていた王家のダンスパーティへと出席していた。

「アリアローズ嬢これも美味いぞ!!ほら取ってきたから!」

「ちょっと、ジョナサンこんなに食べれないよ!!」

皿には溢れかえりそうな料理の数々…こんなに沢山食べれないし増してや令嬢がてんこ盛りの皿を持っているなんて聞いたことがない。
悪気がある訳ではないのは重々承知なのだが…後ろではアハハと申し訳なさそうにアメリが苦笑いを浮かべていた。
パーティの序盤はアルベルトは王族として挨拶やらを受けており、セリーヌはブルックスとダンスをしたりセクタールの知り合い貴族と挨拶をしている。
そうなるとアリアローズは1人壁の花になるしか無いのだがそうはジョナサンがさせてくれなかった。

「まぁまぁ、アリアローズ嬢はパーティーだといつも大変だろう?今日くらいゆっくり堪能したらいいさ」

はっ、とした。
確かにそうだ、こんなに自由に人目を気にせずいられるパーティーはもしかしたら初めてなのでは?と。
そう考えると豪華な料理が食べてと訴えてくる様にも見える。

「そ、そうね。では遠慮なく」

ジョナサンから料理を受け取ると着いた時に食べたであろうウララ鳥のお肉があった。
流石に露店と違い串には刺さってないが明らかにあの時のお肉だった。
はしたなく無い様に取り皿へと少量移し口へと運ぶ。

「うーん、やっぱり美味しい。ジョナサンはこのお肉何か聞いた?」

「んー?肉だろ」

いや、そうなんだけどそうじゃなくてですね。

「アリアローズ様このお肉はウララ鳥ですよね。初めは口にするのに勇気が要りましたが美味しくて驚きました」

「そう、求めてた答えはそれですよ!アメリ様!!」

フフフ、と笑いながら談笑する2人にジョナサンは面白くないといった顔を浮かべてまた料理を取りに行ってしまった。

「あの、アリアローズ様先程少し小耳に挟んだのですが…」

言いにくそうな表情を浮かべるアメリに何を言われるのかとドキドキする。

「どうやらカインザーク殿下が来られる様ですわ」

「えっ、本当ですか!!」

もし本当ならあの時話せなかった分話がしたい。

「はい。でもアリアローズ様会って大丈夫ですか?その、、ラクトリアではアリアローズ様は殿下のお気に入りというその様な話が有るのですが、今私たちはアルベルト殿下の招待でここに滞在してるので…そのカインザーク殿下のご不興を買ってないかと…」

そ、そっか、ラクトリアではそんな噂があったのか…
そして不興を買うとか考えてなかったが周りからしたらやっぱりその様に見えていたのだろう。
行動には気をつけないとと思っていたが既に色々やらかした後だったのか…
やっと会えると思ったのだが会わない方がいいのかも知れない。

「アーリア俯いてどうしたの?暇ならさ僕と一曲踊ってよ」

顔を上げるといつの間にか挨拶を終えたアルベルトが目の前におり、あろうことかダンスの誘いを受けていた。

「、、、よろしくお願い致します」

本当は踊りたくないが、人前で申し込まれたら断れる訳がない。

「ふふ、アリア踊りたくなかった?顔に思いっきり出てるよ。まぁ、今日が滞在最後なんだからもう少し付き合ってよ。それに後でセリーヌとも踊る予定だからさっ」

「わぁー、アルベルト殿下は怖い者知らずですねーあの2人ラブラブなんですよ」

冗談で言ってみると、知ってると笑顔で答えるがいつもの顔ではない王族の微笑みといった所だろう。
いつもの無邪気な笑顔もいいが、これはこれで顔だけイケメンにはうってつけの笑顔だった。

曲が終わるといつの間にか人目を集めていた事に気づいた。やっぱり王族と踊ると目立つよね、と一息つきセリーヌ達の元へアルベルトと向かおうとした。

「アリアローズ嬢」

ふと2人の後ろから長い間聞いてなかったがとても聞き慣れた懐かしい声が聞こえた。

「カインザーク殿下!!」

無意識に駆け寄る勢いで振り返ったがカインザークも来賓として呼ばれているのだろう、隣にはセクタールの貴族が一緒におり不用意に近づいては行けないと咄嗟に思い足を踏みとどめた。

「これはカインザーク殿、こちらでの生活は如何ですか?不自由なく過ごせているといいのですが」

先に答えたのはアルベルトだった。
いかにも王族らしき会話という会話を2人で繰り広げていたが何故かアリアローズ側の人間はハラハラして見守っていた。

「カインザーク殿下、あちらで皆様がお待ちですので宜しいでしょうか」

「あ、あぁ、では皆また後ほどお会いしよう」

はい、と一礼するとカインザークは隣にいた女性貴族に腕を取られ一緒に行ってしまった。

結局一言も話す事が出来なかった。
きっと隣にいた女性はこの国でも高位の貴族なのだろう。隣にいる事も話しかける事も出来ないアリアローズにとってはこういう場面では改めてカインザークとの立場の違いを嫌でも思い知らされてしまう。

少し疲れたので外の空気を吸ってくると皆に断りアリアローズはバルコニーへと出た。
中ではセリーヌがアルベルトの誘いを受け若干嫌々ではあったがさすが高位貴族だ、優雅に舞う様なダンスを踊っている。

「私もセリーヌみたいだったら良かったのにな…」

「何がだ?」

ふと心の声が漏れてしまったのだがそれに返事があるとは思わなかったので驚いた。

「い、いえ何でもありません。カインザーク殿下」

振り向かなくても分かる。
セクタールに来て会いたいと思ってた人、声を聞いただけでその人と分かるとか末期な気もする。

「むっ、まだカインと呼んでくれないのか」

少し残念そうにするが久しぶりに会ったのにいきなりカイン様とは呼ぶ勇気はない。
それに、会いたいとは思っていたがいざ本人を前にすると言葉が喉を詰まって出てこない。

「まぁ、今は許すよ。アリア久しぶりだな、元気そうで何よりだがここに居るとは驚きだったぞ」

「あ、はは。ですよねー」

「それに…アルベルト殿とは随分と親しくなったようだな」

冷ややかな怒ってるとも取れる表情でアリアを見る。
やっぱりあの時の事を言っているのだろうか?
他の人には誤解させても仕方ない行動だったがカインザークにだけは誤解しないで欲しい。

「あの、確かに親しくはして頂いてますが友人としてです!アルベルト様は少しいき過ぎたスキンシップが常なんです!」

いき過ぎたスキンシップは言い過ぎたかも知れないがあながち間違ってるとは思っていない。

「そうか、手を舐めるのがスキンシップの普通なのかな?なら、」

チュッとアリアローズの手の甲に唇が触れる感触がした。

「これもスキンシップだろ?」

「はっ、いや、え?」

驚き手を引こうとしたがぎゅっとカインザークに握られ離して貰えなかった。

「ふふ、アリア顔が赤いよ?」

意地悪そうな笑顔で覗き込まれ恥ずかしいが今は久しぶりに会ったカインザークの顔を見たい気持ちもあり目を向けるとお互いの視線が交わる。

「カ、カイン様」

「あぁ漸く呼んでくれたね、アリア会いたかった」

フワッと柔らかく微笑んだカインザークは月明かりに照らされてとても妖艶に見えた。
このまま私も会いたかったと伝えたい、シナリオ通りにならなくても今だけは自分の気持ちに正直になりたい。

「わ、私もっ」

「おや、こんな所で何をしているんだい?」

ガチャとバルコニーの扉が開く音と共にそこに居たのは従者を連れた男性だった。
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