モブの筈がモブじゃない〜乙女ゲームの世界ではモブだったはずなのに全然モブじゃありません〜

あかとんぼ

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第三章

卒業パーティー

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ザワザワと会場の前が騒ついているのが分かる。
扉の前では正装姿のアルベルトが今日のパートナーであるアリアローズを待っていた。
ラクトリアの双子殿下に引けを取らない容姿を持っている事を忘れがちだったが、こうして黙って立っていると本当に格好いいとしか言えない。

と言うか、これ行きづらくない?

柱の影からアルベルトを盗み見るように隠れているアリアローズはアルベルトの元へどうやって行こうか思案していた。

「やぁ、アリアこんな所で何してるの?隠れんぼ?あっ、それとも僕のこと盗み見て…」


柱の後ろからヒョコッと顔を出していつもの悪戯っ子ぶりをみせる。本当話さなければいいのに…と失礼な事を思いながらもアルベルトの方を向くと目を丸くして止まっていた。

「アルベルト殿下?あのーどうしました?大丈夫ですかー?」

目の前で手をフリフリしてみるが応答がない。

「アルベルト殿下、周りが見てますわよ」

ポンとセリーヌがアルベルトの肩を叩くとやっと我に帰った様でコホンと咳払いをすると周りを軽く見回してアリアローズに向き直した。

「アリア、すっっごい可愛いけどどうしたの?」

「どうしたのとは失礼ですね!でも今日もいい感じに仕上げて貰いました。カブレラ侯爵家の皆様に!」

今回も自信作ですわと言いたげなセリーヌは満足そうな顔つきだ。

「全くセリーヌやり過ぎだよー、これじゃあ他の男性の目も引いちゃうじゃないかぁ」

はぁ、とため息混じりにセリーヌに呟く。

「まぁ、アルベルト殿下。アリアの可愛さはとっくに周知されてますわ」

「はは、君が言うならそうなんだろうね。なら、アリアは今日は僕のパートナーだからね。他の男性に誘われないように見張ってないとね」

ゾクっと背筋に悪寒が走る。
後ろでは二人でコソコソ話しながら何やら悪い笑顔をしている気がするが気のせいであろうと目を逸らす事にした。

「アリア、セリーヌはまだマクロナ卿が来てないそうだから先に行こうか」

さて、ここからが本番だ。
令嬢としての教育は一応しているがパーティー自体慣れた物ではない。なのにいつも大物の隣にしかいない気がするのでセリーヌに作法も叩き込んで貰った。
失敗しないように気をつけないと。

中へ入るとアルベルト殿下の入場に注目が集まる。そして必然とパートナーであるアリアローズにも視線が飛んでくる。

ゔっ、ヒソヒソ何か言っているのが聞こえるがここは堂々と!私は今日はアルベルト殿下のパートナーなのだから!と必死で言い聞かせて用意されている卒業生への席へと向かう。

「おっ、アルベルト殿下はやっぱりアリアローズ嬢を連れてきたなーこっちに一口乗っておいて正解だったぜ」

「ちょっ、乗るって何?!何を賭けてるんですか?!」

ジョナサンがグラスを片手に人目を気にする事なく話しかけてきた。
当初はアルベルトも警戒していたがジョナサンはいつも通りこの態度で接してくるのでアルベルトにとって同性では唯一の友達となっていた。その為か必然とアリアローズとセリーヌとも親しくなっていたのだ。
ジョナサンはそのままアルベルトと挨拶を交わすと話し始めてしまい何やら盛り上がっていた。

2人の世界に入ってるし私は必要無さそうだよね、そう言えば喉がカラカラだったんだ。まだまだ話が尽きなそうだしドリンクでも取ってこようかな。

アリアローズは緊張からか喉がカラカラだった事を思い出しドリンクを貰いに行くことにした。

「レネティシス嬢、今宜しいでしょうか?」

声をかけられて振り向くと見知らぬ1人の男性が立っていた。一応卒業生のパーティーとは言え生徒以外も勿論いる。でも大抵の人は婚約者としてパートナーで参加する機会もあり見た事がある筈だがこの人は全く見覚えがない。

「えっと、貴方は?」

「あぁ、申し遅れました。私は」

「アリア!!君、私のパートナーに何か用?」

ギロっと睨みを効かせるが相手は動揺する事なく失礼しました。とそのまま何事もなかったかの様に去って行った。

「アリア、僕の側から離れるなら言ってよ!びっくりしただろ!」

然程離れた訳ではないがどうやら心配させてしまったようだ。

「ごめんなさい。ジョナサンと盛り上がってたから悪いかなと思って…次からは気をつけるね」

「本当だよ!気をつけてよねー」

グイッとそのまま手を引かれてまたジョナサンの元へと連れて帰られた。

「はは、アリアローズ嬢も毎回パーティーでは大変だなぁー」

ケラケラ笑いながら揶揄う様に肩を叩かれた。

「はは、本当何ででしょうかねー」

こっちが聞きたいよ!と言いたいくらいだ。
その後はアルベルトの目の届く所に居ながら挨拶をしてくる貴族達を見守っていた。


カランカラーン

重要な来賓の到着を知らせる鐘がなり、扉の向こうからニースベル殿下と護衛騎士が姿を現した。卒業生のお祝いの言葉を述べる為に王太子としてやってきたのだ。
ニースベルの言葉が終わると漸く卒業パーティーが終わりを迎える。

「セリーーーヌ!!終わった?これで終わりだよねー?!」

「ふふ、アリアったら終わりですわね。でも貴方はアルベルト殿下のパートナーですから彼が帰らなければ帰れませんわよ」

そ、そうなんだけど…
常に監視されている様な所で待ってないと行けないだけっていうのは正直拷問に近いくらい暇だった。

「うゔー、だってこんなに美味しそうなお料理があるのに勝手に食べに行けないし!ドリンクも一人で取りに行けないし!私何すればいいのよー!!って言ってやりたいよぉー」

「はは、それは残念だったね」

壇上から降りて挨拶を受けていたニースベルが漸く解放された様でアリアローズへと一輪の花を差し出してきた。

「殿下?あの、これは?」

「卒業おめでとう。是非受け取って貰えないかな、カインからだよ」

カインザーク殿下から、、
異国にいてご自身も大変だろうに今日を覚えていてくれたんだ。

「ありがとうございます。有り難く頂戴致します」

この花を選んだのが本人かは分からないが花束を貰うより一輪だけって所がまたぶっきらぼうなカインザーク殿下らしい。

「それにしても、セリーヌ嬢今回も力が入ってるね。これじゃあカインもソワソワする筈だ」

「当たり前ですわ!アリアを飾るのは私の楽しみですの!それを取らないで下さいませ」

にっこりと笑っているが見る人が見れば顔が本気であった。

「うん、確かにアリアを着飾るのは楽しそうだもんねー。普段と違ってて僕も驚いちゃったよ」

「ですよね!!流石アルベルト殿下わかってらっしゃる!」

「ふふ、セリー。ニースベル殿下が置いていかれてるよ」

ブルックスが興奮気味のセリーヌの肩を軽く叩くとハッとして軽く俯き恥ずかしがっていた。

「あっ、そうだアリアもセリーヌも言い忘れてたんだけどさ、このパーティーが終わったら僕の国に招待させてくれない?
いやーね、僕も一旦帰国しないとなんだけどさ父上達が学園の様子を知りたいからって友人を連れて来いってうるさくてね、わかりましたって頷いちゃったんだよね。ジョナサンも誘ってるし、ね」

ねっ、っていやいやそんな簡単に決めれる様なことではない気がするんですが…
思わずアリアローズもセリーヌも目を丸くして言葉が出てこなかった。

「えっーと、アルベルト殿。それはいささか急なのではないでしょうか?女性には支度もありますしセリーヌ嬢には婚約者もいらっしゃいます。友人とはいえ一応異性ですので招かれるのは同性のみにされては?」

そうだそうだー!ニースベル殿下もっと言ってください!!
アリアローズは心の中で思いっきり応援してみた。
今までもアルベルトの無茶振りはあるけど流石に今日明日で隣国の王宮への招待は簡単に決めていい様な物ではない筈だ。

「そうかぁ、ならマクロナ卿も来ればいいんじゃない?婚約者も一緒なら問題ないでしょ!アリアもセリーヌが来るなら来てくれるでしょ!!ねっ、どうですかマクロナ卿?いらっしゃってくれますよね?」

「うっゔ、、あー、はい。」

あっ、負けた。
ブルックス様王族の権威に負けたコレ。

横ではちょっと!とセリーヌがブルックスを小突いているが我らと違ってブルックスからしたら相手は隣国の王太子だ。断って万が一ラクトリアとの友好に支障をきたす様なことがあればと考えるのが普通なのだろう。

横ではニースベルが苦笑いを浮かべてブルックスを労っていた。

「よーし、マクロナ卿も来てくれるそうだしあっ、ブルックスと呼んでもいいかな?友人を招くって言ってるしねー、そうだ!出発は明後日だからね、これから暫くよろしく!」


ポカンと呆気に取られる3人を尻目に楽しみだなーとジョナサンが加わった。楽しみなのは貴方だけでしょうねーと各々思っているだろう。

「アリアローズ嬢、こうなってしまったら潔く楽しんでおいで。それにセクタールにはカインもいるしね、運が良ければ会えるかも知れないよ」

ニコッとニースベルは微笑むと明後日の手続きについてアルベルトと話をしに行った。

「そっか、セクタールにはカインザーク殿下がいるんだよね。会えるかな…」

会えるといいな、、、














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