69 / 83
第三章
約束の高原
しおりを挟む
高原内は心地の良い風が吹いていた。
ここはフレーミ領でも外れにあり、国が保有する領地と隣り合わせの場所にあった。
フレーミ領から入るとまず開けた平原が広がり色とりどりの四季の花々が咲いている場所があり色んな人が観光やピクニックにと訪れていた。そしてその一帯を抜け奥に進むと小高い丘がありフレーミ領の高原はこの丘までとされていた。
この丘超えるとそこからは王家の所有地になっており入っては行けないとされている。まぁ、入っては行けないと言われているが言っているのは伯爵だけで王家側はかまわないと言っているそうだが、もしその場所で問題が起きれば伯爵に責任問題が押しつけられるだろうから多分叔父は面倒なのだろう。
2人は立ち入り禁止の札が立っている場所を超えその先の所有地へと入っていく。
そういえば昔ここを超えて所有地側に入って叔父にしこたま怒られた記憶がある。あの時は…なんで入ったんだっけ?
木々が生い茂っている細い道を進むとまた開けた場所に出た。そこは小さな小川が流れ小魚がのんびりと泳いでいるとても静かで居心地の良さそうな場所であった。
付き添いの従者がせっせとシートを敷いたり食事を用意してくれている。
流石に入ってはいけないと昔から言われ続けている場所なだけあってアリアローズ達以外に人は居なかった。
「あっ、取れた!!見て下さいカイン殿下!魚捕まえましたー」
「はは、来てすぐに何をやってるんだ。全く、アリアの行動は予想の上を行くな」
緊張をほぐす為にも殿下から離れて小川を見にきたのに、余りに素敵な環境にはしゃいでしまった。
でも、ただすくっただけで捕まってしまう魚達には危機感が全くない。それだけここは平和なのだろう。
大自然に癒されアリアローズの緊張もすっかり何処かへいってしまった。
「はぁ、癒されますねー」
大きく息を吸い込み瑞々しい木々の匂いを吸い込む。
「ああ、確かにここは静かだし雑音がない分嫌な事を忘れるのには最適だったな」
「あー、殿下も大変そうですもんね。色々…」
巷では公爵邸で行われたパーティーは殿下の婚約者探しだと噂されていた。容易に御令嬢方に囲まれていた事は想像がつく。
果たして婚約者は決まったのだろうか…
話を聞いた時はモヤッとしたが今日殿下に会ったらそんな事はどうでも良くなった。
現金なやつだなと自分でも思ったが、どうやらカインザーク殿下に特別扱いされている事が心地良いらしい。
こんなでは優良な婚約者を探す所では無くなってしまうと首を横に降り気持ちに蓋をする様に振り払った。
それに、デートとは言われたがカインザークは攻略キャラでありアリアローズは名もないモブの筈だ。シナリオ通りになるのなら2人が一緒になる事はない筈だ。
ここが、ゲームの世界でなければ…
いやそれかアリアローズが殿下のお相手キャラで悪役令嬢とかであれば良かったのに…
まぁ、そんな事を思った所で所詮はモブの男爵令嬢が殿下のパートナーになるなんてあり得ないのだから今を精一杯楽しまないとよね…
「アリア、アリア!!先から何を考えているんだ?何度も呼んだんだけど?ほらここ座って」
いつの間にかカインザークはシートに座りお茶を口に含んでいた。
隣に座るように言われ大人しく座り同じくお茶を口へ運ぶ。
「ねぇ、アリアさっきから殿下って呼んでる。私の事はカインだろ?」
「えっ、あはは。そ、そうでしたねー」
いきなり名前で呼ぶのはこっちにも勇気がいるのだ…
返答に何か不服そうな顔をしているが直ぐに顔をあげアリアローズに向き直した。
「アリア、この場所何か思い出さない?」
この場所?
確かに懐かしい気がするがここは王家の所有地で私が思い出すのなんて勝手に入って怒られた事くらい…
「ん?あ、あの木!」
思わず立ち上がり少し先に見えた2本の木まで急足で近づいた。
「やっぱりここだ!懐かしい。カイン様ここ、ここ見覚えがあります!昔ここで遊んでました」
「ふーん、誰と?」
ん?そうだ誰と遊んでいたんだろう。
確かにこの2本の木に結んであるブランコは見覚えがある。このブランコで遊ぶ為に所有地へと入り伯爵に見つかり怒られたのだ。
「多分お友達だと思います。昔この近くで一時期遊んでいた子が居たんですが…その、どうやら事故にあって頭を打ったらしく相手の顔は覚えてないんです。それにその子のことは誰も知らないし、その後一回も会った事がなくって」
でも何故殿下がその事を聞いてくるのだろう。
「あの、もしかして殿下は何か知ってるんですか?」
ここはフレーミ領でも外れにあり、国が保有する領地と隣り合わせの場所にあった。
フレーミ領から入るとまず開けた平原が広がり色とりどりの四季の花々が咲いている場所があり色んな人が観光やピクニックにと訪れていた。そしてその一帯を抜け奥に進むと小高い丘がありフレーミ領の高原はこの丘までとされていた。
この丘超えるとそこからは王家の所有地になっており入っては行けないとされている。まぁ、入っては行けないと言われているが言っているのは伯爵だけで王家側はかまわないと言っているそうだが、もしその場所で問題が起きれば伯爵に責任問題が押しつけられるだろうから多分叔父は面倒なのだろう。
2人は立ち入り禁止の札が立っている場所を超えその先の所有地へと入っていく。
そういえば昔ここを超えて所有地側に入って叔父にしこたま怒られた記憶がある。あの時は…なんで入ったんだっけ?
木々が生い茂っている細い道を進むとまた開けた場所に出た。そこは小さな小川が流れ小魚がのんびりと泳いでいるとても静かで居心地の良さそうな場所であった。
付き添いの従者がせっせとシートを敷いたり食事を用意してくれている。
流石に入ってはいけないと昔から言われ続けている場所なだけあってアリアローズ達以外に人は居なかった。
「あっ、取れた!!見て下さいカイン殿下!魚捕まえましたー」
「はは、来てすぐに何をやってるんだ。全く、アリアの行動は予想の上を行くな」
緊張をほぐす為にも殿下から離れて小川を見にきたのに、余りに素敵な環境にはしゃいでしまった。
でも、ただすくっただけで捕まってしまう魚達には危機感が全くない。それだけここは平和なのだろう。
大自然に癒されアリアローズの緊張もすっかり何処かへいってしまった。
「はぁ、癒されますねー」
大きく息を吸い込み瑞々しい木々の匂いを吸い込む。
「ああ、確かにここは静かだし雑音がない分嫌な事を忘れるのには最適だったな」
「あー、殿下も大変そうですもんね。色々…」
巷では公爵邸で行われたパーティーは殿下の婚約者探しだと噂されていた。容易に御令嬢方に囲まれていた事は想像がつく。
果たして婚約者は決まったのだろうか…
話を聞いた時はモヤッとしたが今日殿下に会ったらそんな事はどうでも良くなった。
現金なやつだなと自分でも思ったが、どうやらカインザーク殿下に特別扱いされている事が心地良いらしい。
こんなでは優良な婚約者を探す所では無くなってしまうと首を横に降り気持ちに蓋をする様に振り払った。
それに、デートとは言われたがカインザークは攻略キャラでありアリアローズは名もないモブの筈だ。シナリオ通りになるのなら2人が一緒になる事はない筈だ。
ここが、ゲームの世界でなければ…
いやそれかアリアローズが殿下のお相手キャラで悪役令嬢とかであれば良かったのに…
まぁ、そんな事を思った所で所詮はモブの男爵令嬢が殿下のパートナーになるなんてあり得ないのだから今を精一杯楽しまないとよね…
「アリア、アリア!!先から何を考えているんだ?何度も呼んだんだけど?ほらここ座って」
いつの間にかカインザークはシートに座りお茶を口に含んでいた。
隣に座るように言われ大人しく座り同じくお茶を口へ運ぶ。
「ねぇ、アリアさっきから殿下って呼んでる。私の事はカインだろ?」
「えっ、あはは。そ、そうでしたねー」
いきなり名前で呼ぶのはこっちにも勇気がいるのだ…
返答に何か不服そうな顔をしているが直ぐに顔をあげアリアローズに向き直した。
「アリア、この場所何か思い出さない?」
この場所?
確かに懐かしい気がするがここは王家の所有地で私が思い出すのなんて勝手に入って怒られた事くらい…
「ん?あ、あの木!」
思わず立ち上がり少し先に見えた2本の木まで急足で近づいた。
「やっぱりここだ!懐かしい。カイン様ここ、ここ見覚えがあります!昔ここで遊んでました」
「ふーん、誰と?」
ん?そうだ誰と遊んでいたんだろう。
確かにこの2本の木に結んであるブランコは見覚えがある。このブランコで遊ぶ為に所有地へと入り伯爵に見つかり怒られたのだ。
「多分お友達だと思います。昔この近くで一時期遊んでいた子が居たんですが…その、どうやら事故にあって頭を打ったらしく相手の顔は覚えてないんです。それにその子のことは誰も知らないし、その後一回も会った事がなくって」
でも何故殿下がその事を聞いてくるのだろう。
「あの、もしかして殿下は何か知ってるんですか?」
0
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる