モブの筈がモブじゃない〜乙女ゲームの世界ではモブだったはずなのに全然モブじゃありません〜

あかとんぼ

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第三章

約束の高原

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高原内は心地の良い風が吹いていた。
ここはフレーミ領でも外れにあり、国が保有する領地と隣り合わせの場所にあった。

フレーミ領から入るとまず開けた平原が広がり色とりどりの四季の花々が咲いている場所があり色んな人が観光やピクニックにと訪れていた。そしてその一帯を抜け奥に進むと小高い丘がありフレーミ領の高原はこの丘までとされていた。
この丘超えるとそこからは王家の所有地になっており入っては行けないとされている。まぁ、入っては行けないと言われているが言っているのは伯爵だけで王家側はかまわないと言っているそうだが、もしその場所で問題が起きれば伯爵に責任問題が押しつけられるだろうから多分叔父は面倒なのだろう。

2人は立ち入り禁止の札が立っている場所を超えその先の所有地へと入っていく。
そういえば昔ここを超えて所有地側に入って叔父にしこたま怒られた記憶がある。あの時は…なんで入ったんだっけ?

木々が生い茂っている細い道を進むとまた開けた場所に出た。そこは小さな小川が流れ小魚がのんびりと泳いでいるとても静かで居心地の良さそうな場所であった。
付き添いの従者がせっせとシートを敷いたり食事を用意してくれている。
流石に入ってはいけないと昔から言われ続けている場所なだけあってアリアローズ達以外に人は居なかった。


「あっ、取れた!!見て下さいカイン殿下!魚捕まえましたー」

「はは、来てすぐに何をやってるんだ。全く、アリアの行動は予想の上を行くな」

緊張をほぐす為にも殿下から離れて小川を見にきたのに、余りに素敵な環境にはしゃいでしまった。
でも、ただすくっただけで捕まってしまう魚達には危機感が全くない。それだけここは平和なのだろう。
大自然に癒されアリアローズの緊張もすっかり何処かへいってしまった。

「はぁ、癒されますねー」

大きく息を吸い込み瑞々しい木々の匂いを吸い込む。

「ああ、確かにここは静かだし雑音がない分嫌な事を忘れるのには最適だったな」

「あー、殿下も大変そうですもんね。色々…」

巷では公爵邸で行われたパーティーは殿下の婚約者探しだと噂されていた。容易に御令嬢方に囲まれていた事は想像がつく。
果たして婚約者は決まったのだろうか…
話を聞いた時はモヤッとしたが今日殿下に会ったらそんな事はどうでも良くなった。
現金なやつだなと自分でも思ったが、どうやらカインザーク殿下に特別扱いされている事が心地良いらしい。
こんなでは優良な婚約者を探す所では無くなってしまうと首を横に降り気持ちに蓋をする様に振り払った。

それに、デートとは言われたがカインザークは攻略キャラでありアリアローズは名もないモブの筈だ。シナリオ通りになるのなら2人が一緒になる事はない筈だ。
ここが、ゲームの世界でなければ…
いやそれかアリアローズが殿下のお相手キャラで悪役令嬢とかであれば良かったのに…
まぁ、そんな事を思った所で所詮はモブの男爵令嬢が殿下のパートナーになるなんてあり得ないのだから今を精一杯楽しまないとよね…


「アリア、アリア!!先から何を考えているんだ?何度も呼んだんだけど?ほらここ座って」

いつの間にかカインザークはシートに座りお茶を口に含んでいた。
隣に座るように言われ大人しく座り同じくお茶を口へ運ぶ。

「ねぇ、アリアさっきから殿下って呼んでる。私の事はカインだろ?」

「えっ、あはは。そ、そうでしたねー」

いきなり名前で呼ぶのはこっちにも勇気がいるのだ…
返答に何か不服そうな顔をしているが直ぐに顔をあげアリアローズに向き直した。

「アリア、この場所何か思い出さない?」

この場所?
確かに懐かしい気がするがここは王家の所有地で私が思い出すのなんて勝手に入って怒られた事くらい…

「ん?あ、あの木!」

思わず立ち上がり少し先に見えた2本の木まで急足で近づいた。

「やっぱりここだ!懐かしい。カイン様ここ、ここ見覚えがあります!昔ここで遊んでました」

「ふーん、誰と?」

ん?そうだ誰と遊んでいたんだろう。
確かにこの2本の木に結んであるブランコは見覚えがある。このブランコで遊ぶ為に所有地へと入り伯爵に見つかり怒られたのだ。

「多分お友達だと思います。昔この近くで一時期遊んでいた子が居たんですが…その、どうやら事故にあって頭を打ったらしく相手の顔は覚えてないんです。それにその子のことは誰も知らないし、その後一回も会った事がなくって」

でも何故殿下がその事を聞いてくるのだろう。

「あの、もしかして殿下は何か知ってるんですか?」












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