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第二章

アリアローズの休日

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今日は休日、アリアローズはセリーヌとリリアンヌと共に学園に申請を出し王都から少し離れたロクサスの町へピクニックに来ていた。

「気持ちいいー!!ここすっごく空気が澄んでるね」

「でしょう。私も昔からルブと良くピクニックに来ていたの、王都からも近いし良いところですわよね」

侍女が用意してくれたシートに座りキャッキャと転がり遊んでいる可愛らしいヒロインを眺めて思う。なんて平和で素敵な休日なんだ。


「ふう、久しぶりの自然に癒されましたーセリーヌ様お茶下さい!」

「ふふ、リリアンヌ様は私よりお姉様な筈なのに如何してでしょう妹の様に思えますわね」

それには納得してしまう。
確かにリリアンヌは妹キャラの王道をいくタイプだ。アリアローズからしても世話を焼きたくなる妹の様だったが意外としっかりしている所もあり諭される時もあったりなかったり…
画して始まった女の子だけのピクニックの内容はやはり決まっていた。

「さて、アリア様ここは女子だけですし是非お聞かせください!!ズバリ、カインザーク殿下とはどんなかんじですか?」

ど、どんな感じ?
と言われても特に何もないけど…

「うーん、強いて言えばお茶をご一緒して下さいと一年の夜会でお願いしたくら、い…って、わっ私の事はいいのでリリー様の方を聞かせてください!!攻略…いえ、殿下との進展は如何ですか」

自分の事を話すのはなんだか気恥ずかしくて話を逸らした。
とは言え、セリーヌにはここはゲームの世界だと話てはいない。それはリリアンヌにも伝えていたので濁して話をしてくれるだろうが、この話を振ったはいいがセリーヌは婚約者のいる相手との恋バナはどうなのだろう。アリアローズはここがゲームの中と知っているから余り気に留めないが、セリーヌからしたら婚約者のいるニースベル殿下と恋仲になるとか普通に考えれば常識や礼儀知らずと思われるだろう…

「ねぇセリーヌはリリー様の事どう思います?」

「あら、アリア直球ね」

「いや違うの、その…」

「分かっていますわ。殿下との恋のお話ですものね。そうね、初めは良くは思わなかったですね、貴族としての礼儀もまだまだですのに婚約者のいる殿方が相手ですし、しかも男爵令嬢と王族では身分差があり過ぎますから殿下とのそういう仲と言われればこちらも少なからず警戒致しますわ」

やっぱり普通はそう思いますよね。
アリアローズですら前世の記憶があったとしてもこの世界の常識が無いわけではないので良いのか悪いのか悶々としてた頃もあったがこれはゲームだ!と割り切る様になっていた。

「でも、今は違いますわ。リリアンヌ様は努力家ですよね?令嬢としての作法だけでなく、光魔法も使いこなそうと必死で努力されてるのを聞いていますわ、それに…」

それに?
一瞬口を詰むんだが意を決めた様に話し始めた。

「現婚約者様が王妃になる事は賛成出来ませんからね」

「セリーヌ様!わあーん大好きですー」

ガバッとリリアンヌはセリーヌに抱きつくと頭をよしよしと撫でられていた。

確かにアリアローズも色々と裏で画策しているリザベラが王妃になると思うと絶対に阻止したいが、口にはまだ出した事がない。
それは公爵令嬢に意を唱えていると明確に示してしまうからだ。だが、セリーヌは口に出して伝えてくれた。それだけアリアローズやリリアンヌを信用しているからだろう。

「そうですね、確かしに私も現婚約者様は時期王妃には相応しくないかと思います。ふふ、皆んな一緒ですね」

アリアローズも意を唱えれば後に訴えられたとしても3人とも一蓮托生だ。

「アリア様、セリーヌ様ー!!リリアは嬉し過ぎてこの思いを伝えたいです!!是非あげたい物がありますので…えっとこっち、こっちに来てください」

そう言って示した方には木々が生い茂る森があり、直ぐそばには林道の様な獣道の様なものはあるがとても令嬢が入っていく様な所ではなかった。

「えっと、ここ行くんです?」

ええ、と笑うとそのままリリアンヌは2人の手を引いて森へと入っていった。
遠くで様子を見守っていた侍女は3人がいきなり茂みに入って行ったので何事かと駆け寄って来たがセリーヌに大丈夫と諭されてその場で待機した。

「リリー様どこまで行くんですか?確か、この森って…」

「ええ、だいぶ先ですが隣国セクタールに続いてますわね」

セクタール…魔物の事件以来あまり良い印象がない。勿論悪い人ばかりではないとは思うが名前を聞くと少しばかり警戒してしまう。

「さて、ここで良いですかね。お二人とも見てて下さい!」

そう言うとリリアンヌは近くにあった石を二つ手に拾うと呪文を唱えた。
すると只の石ころが光に包まれてキラキラ光り、魔法石へと姿を変えたのだ。

「リリー様、こ、これは?」

驚きのあまり瞼をぱちぱちとするとリリアンヌと魔法石を交互に見てしまう。

「見ての通り魔法石です!!それも光の加護つきです」

光の加護付きの魔法石なんて見た事ないがとても値段の付けれるものではないのはアリアローズでも分かる。

「最近作れる様になったんです!ニースベル様も持ってますがお二人にも持っていて貰いたくて!!これがあれば魔物の被害から一回だけですが守ってくれます。用は結界の様な物だと思って下さい」

「リリー様、凄いです…ここまでレベル上げ、ではなくてご自身を磨かれていたのですね」

光の魔法石は上級魔法だ。どうやら魔物に遭遇した時に勉強不足を感じたらしくあれからレベル上げに勤しんだそうだ。

「流石に人目がある所ではお渡し出来ませんのでこんな所に連れてきてしまいごめんなさい。でも、お2人ともこれからもずっとリリアと仲良くして下さいね」

何とも言えぬ愛らしい笑顔で笑いかけられると攻略対象者ではないが惚れてしまいそうだ。
リリアンヌが渡すものは渡しました。と3人で森を出ようとするとガサガサと後ろの茂みで音がした。
またこのパターンかと思ったが取り敢えず警戒しながら振り向いてみるとそこには傭兵姿の男性がおり、こちらに気づくとそのまま近づいてきた。

「すみません。あ、怪しいものじゃないです!その、この近くに薬屋は知りませんか!主人が体調を崩して動けなくなってしまって一刻も早く回復薬を持って行かないとなのです!!」

少し話を聞くと、今動けなくなっている主人がいる所から回復薬が売っている町はこのロクサスが1番近いらしく傭兵は近道の為森を突っ切ってきたと言うのだ。

「ここからロクサスの薬屋まではまだ距離がありますわね、薬屋があるのは町の反対側ですから…」

「そうですか、なら急ぎますので失礼します」

確かにロクサスの薬屋は今いる場所から反対側にある。アリアローズ達もここにくる前に虫除け剤を買う為に寄ってきたのだから…

「あっ、待って下さい!回復薬って一つで良いんですか?なら私持ってます」

先程薬屋に寄った際に回復薬を一つ購入し、後でレネティシス印の栄養剤と比べようと思っていたのだ。

「ほ、本当ですか!!我が君の為それをお売り頂けませんか」

わかりました、と一度丘に出て鞄から回復薬を持ってくると傭兵へと手渡した。
回復薬ならまた買えば良いし、それに急いで買いに行くくらいだ早くその主人に薬を届けてあげた方がいいだろう。
傭兵はありがとうございます。と何度も頭を下げながら元来た道を足速に帰って行った。

「あの人のご主人良くなるといいですね」

「ええ、でもアリア良かったの?」

「まぁ、回復薬ならまた買えば良いからねー」

「いえ、そうでなくて…アリアが渡したのレネティシス印の栄養剤でしたわよ?」

!!!!

嘘だ、確かに回復薬を手に取ったはず…

急いで丘に出るとアリアローズは鞄を確認するとガクっと肩を落として青ざめた。

「うわ、やっちゃった…」

セリーヌの言った通り鞄には先程買った回復薬が残っており一緒に入れていたレネティシス印の栄養剤が無くなっていた。

「ど、どうしよセリーヌ!!もし、もしご主人って人に効かなくてレネティシス領が訴えられたらどーしよー!!」

「まあまあ、落ち着いてアリア。あの栄養剤の効果は殿下達も認めてるからそれはないでしょう」

そうだと良いけど、いやそうであると信じたい。
お父様、もしもーし訴えられたらその時は私がたっくさん稼いで賠償致します!!

アリアローズが明後日の方向に決意を決めているとリリアンヌがどうどうと宥めてくれた。

「まぁアリア様、そんな時もあります!気持ち切り替えてピクニックの続きしちゃいましょう」

うう…そうよね、済んだものは仕方ない。
折角セリーヌとリリー様とピクニックに来てるのだし、なる様にしかならないのなら…よし楽しまないと損だ。

「そうですね、リリー様の言う通りですね。ピクニック再会しましょー!!」

「ふふ、アリアの切り替えの速さは天下一ですね」

その後3人は夕方までピクニックを楽しみ宿舎へと帰宅した。

その数日後、リリアンヌを含め主役達は高等部へと進学したのだった。

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