モブの筈がモブじゃない〜乙女ゲームの世界ではモブだったはずなのに全然モブじゃありません〜

あかとんぼ

文字の大きさ
上 下
53 / 83
第二章

麻酔薬

しおりを挟む
机の上に置かれたマリーゴールドの模様の入った瓶をおもむろにアリアローズは手に取った。

「セリーヌこの中身嗅いでも良いですか?」

万が一液体を嗅いで反応が出たり誤って飲んだりしてもアリアローズであれば毒無効化スキルがある。痺れたり麻痺は一時的にするかも知れないが時間が経てば無効化されるから問題ないだろう。

蓋を開けて匂いを嗅いでみる。
うん、やっぱりこの匂いは昨日買ってもらった麻酔薬とほぼ同じ原材料だ。一つ違いがあるとすれば…

「これ、ババロン樹木の根っこが入ってますね」

「何だと!ババロンの根だと?!」

ババロン樹木の根っこはどの国でも毒物指定になっている程強い神経麻痺作用が含まれている。なのでその根っこを使っての生成は禁止されており勿論犯罪だ。

「カブレラ嬢、これはどこで手に入れたのですか?」

確かに、セリーヌはどこから入手したのだろうか。そこから足がつけば生成した犯罪者を捕まえられると考えたのだろう。
だが、残念ながらセリーヌも正確な入手経路はわからないらしい。ならこの瓶は何処から持ってきたのか尋ねるとハウズ伯爵邸の隠し部屋で見つけたそうだ。
何故伯爵邸の隠し部屋などに入れたのかはあえて聞かない事にしよう…

「はぁ、そこまで調べられるとは流石カブレラ侯爵家ですね。今でもその情報力は健在しているとは王家としては心強いですね」

恐れ入りますとニースベルの言葉にセリーヌは頭を下げる。
きっとカブレラ家には特別な何かがあるのだろうが聞いて良いのか分からないし今は黙っておく事にしよう。

「ところでアリア嬢体調は?問題ないのか」

そう言われれば、特に変わった事はない。
効果も知らなければ解決策もない、なら飲んでみよう。

「馬鹿っ、何してる!!」

瓶を口に近づけようとしたが流石にカインザークに怒られて止められた。
少しくらいなら体内に入っても大丈夫だと思うのに、そんなに怒らなくても良いではないか…

「まあまあ、今のはアリアローズ嬢が悪いかな。毒無効化があるとはいえ自分を実験台にするのはいけないよ。治癒魔法が自分に効かないのと同じで何が適用されないか分からないからね」

「アリア治癒魔法は自分に効かないのですか!?いえ、今は違いますね。後で聞かせてください。それで皆様、こんな時の為にコレを用意しました」

セリーヌの一声で連れてこられたのは幼鳥のフィヨルバードだった。
以前授業で使ったのを1匹借りてきたらしい。
そして、注射器に麻酔薬を入れると幼鳥に投薬した。

「変わりありませんね」

特に見た目変化してはしていない様だ。

「アリアこのフィヨルバードに生成した葉っぱでもいいのでぶつけて見て下さい」

わかったと言われた通りに葉っぱを生成しフィヨルバード目掛けて投げた。
アリアローズの投げた葉っぱはフィヨルバードにばさっと被さり幼鳥はそのまま葉の下でバサバサともがいていた。

「葉っぱが…無効化されないですね」

「これが麻酔薬の効果か…」

どうやらこの麻酔薬は神経麻痺を引き起こし魔力を感じる器官が狂うようだ。

「そう、ミュゼリア様はこの麻酔薬を打ったフィヨルバードを手引きしたそうです。そしてこれを入手した場所は…セクタールだと伯爵が話していたのを聞いたと言う事ですわ」

「ふむ、これは調べてみないとですね」

真剣な表情でランティスが瓶を保管する為に回収した。

確かに、この麻酔薬は脳や感覚に麻痺を引き起こす様だ。麻痺作用により服用すれば嫌なことを忘れたり快楽を得たり出来るだろうが効果が切れた時にまたその感覚が欲しくなり手を出さずにはいられ無い。そしてそれを繰り返せばいずれババロンの多量摂取により死に至るだろう。まさに麻薬そのものだ。

アリアローズからしたら麻薬も毒と同じだから効かないとは思うが万が一無効化されなかったらと思うと飲まなくて良かったとも思う。

「皆、今日ここで話した内容は当たり前だが他言無用だ。そして、一時国に出回ってる麻酔薬も全て回収し今一度検閲しよう。あ、アリアローズ嬢。昨日の麻酔薬も没収ねっ」


「ええぇ、ニースベル殿下嘘ですよね!!まだ使って無いのに…ひ、酷いですー」

折角カインザークに買ってもらったのに使う前に没収とは…効力を試す為に昨日使っておくべきだったかと後悔するが既に遅かった。

「気になったのですが、この麻痺薬は毒として無効化されるならアリアの持っているという麻痺薬も毒として無効化されませんの?」

セリーヌが思った事はどうやらこの場にいる全員も思ったらしくうんうんと相槌を打っていた。

「あぁ、それは多分大丈夫かと。原理は分からないけど薬としての成分は効果あるみたいで、昔草むしり中にキラービーに刺された時があってその時に麻痺直しを使ったんですがちゃんと効果ありましたから」



あれ?何故皆んな無言なのだろう

「令嬢が草むしり…」

「アリア貴方って…」

「ははっ、アリア嬢は期待を裏切ら無いなっ」

1人は笑を堪えているが、他の3人のアリアローズを見る目が生暖かい…


「もぉ何ですか皆さんして!!仕方ないんですよ、昔は今より貧困してましたし令嬢も草むしりくらいするんですー」

カインザークは憤慨したアリアローズを見て遂に笑いを堪えなくなり吹き出している。
全く皆んなして失礼しちゃいますね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

魔術師の妻は夫に会えない

山河 枝
ファンタジー
 稀代の天才魔術師ウィルブローズに見初められ、求婚された孤児のニニ。こんな機会はもうないと、二つ返事で承諾した。  式を済ませ、住み慣れた孤児院から彼の屋敷へと移ったものの、夫はまったく姿を見せない。  大切にされていることを感じながらも、会えないことを訝しむニニは、一風変わった使用人たちから夫の行方を聞き出そうとする。 ★シリアス:コミカル=2:8

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...