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第二章
麻酔薬
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机の上に置かれたマリーゴールドの模様の入った瓶をおもむろにアリアローズは手に取った。
「セリーヌこの中身嗅いでも良いですか?」
万が一液体を嗅いで反応が出たり誤って飲んだりしてもアリアローズであれば毒無効化スキルがある。痺れたり麻痺は一時的にするかも知れないが時間が経てば無効化されるから問題ないだろう。
蓋を開けて匂いを嗅いでみる。
うん、やっぱりこの匂いは昨日買ってもらった麻酔薬とほぼ同じ原材料だ。一つ違いがあるとすれば…
「これ、ババロン樹木の根っこが入ってますね」
「何だと!ババロンの根だと?!」
ババロン樹木の根っこはどの国でも毒物指定になっている程強い神経麻痺作用が含まれている。なのでその根っこを使っての生成は禁止されており勿論犯罪だ。
「カブレラ嬢、これはどこで手に入れたのですか?」
確かに、セリーヌはどこから入手したのだろうか。そこから足がつけば生成した犯罪者を捕まえられると考えたのだろう。
だが、残念ながらセリーヌも正確な入手経路はわからないらしい。ならこの瓶は何処から持ってきたのか尋ねるとハウズ伯爵邸の隠し部屋で見つけたそうだ。
何故伯爵邸の隠し部屋などに入れたのかはあえて聞かない事にしよう…
「はぁ、そこまで調べられるとは流石カブレラ侯爵家ですね。今でもその情報力は健在しているとは王家としては心強いですね」
恐れ入りますとニースベルの言葉にセリーヌは頭を下げる。
きっとカブレラ家には特別な何かがあるのだろうが聞いて良いのか分からないし今は黙っておく事にしよう。
「ところでアリア嬢体調は?問題ないのか」
そう言われれば、特に変わった事はない。
効果も知らなければ解決策もない、なら飲んでみよう。
「馬鹿っ、何してる!!」
瓶を口に近づけようとしたが流石にカインザークに怒られて止められた。
少しくらいなら体内に入っても大丈夫だと思うのに、そんなに怒らなくても良いではないか…
「まあまあ、今のはアリアローズ嬢が悪いかな。毒無効化があるとはいえ自分を実験台にするのはいけないよ。治癒魔法が自分に効かないのと同じで何が適用されないか分からないからね」
「アリア治癒魔法は自分に効かないのですか!?いえ、今は違いますね。後で聞かせてください。それで皆様、こんな時の為にコレを用意しました」
セリーヌの一声で連れてこられたのは幼鳥のフィヨルバードだった。
以前授業で使ったのを1匹借りてきたらしい。
そして、注射器に麻酔薬を入れると幼鳥に投薬した。
「変わりありませんね」
特に見た目変化してはしていない様だ。
「アリアこのフィヨルバードに生成した葉っぱでもいいのでぶつけて見て下さい」
わかったと言われた通りに葉っぱを生成しフィヨルバード目掛けて投げた。
アリアローズの投げた葉っぱはフィヨルバードにばさっと被さり幼鳥はそのまま葉の下でバサバサともがいていた。
「葉っぱが…無効化されないですね」
「これが麻酔薬の効果か…」
どうやらこの麻酔薬は神経麻痺を引き起こし魔力を感じる器官が狂うようだ。
「そう、ミュゼリア様はこの麻酔薬を打ったフィヨルバードを手引きしたそうです。そしてこれを入手した場所は…セクタールだと伯爵が話していたのを聞いたと言う事ですわ」
「ふむ、これは調べてみないとですね」
真剣な表情でランティスが瓶を保管する為に回収した。
確かに、この麻酔薬は脳や感覚に麻痺を引き起こす様だ。麻痺作用により服用すれば嫌なことを忘れたり快楽を得たり出来るだろうが効果が切れた時にまたその感覚が欲しくなり手を出さずにはいられ無い。そしてそれを繰り返せばいずれババロンの多量摂取により死に至るだろう。まさに麻薬そのものだ。
アリアローズからしたら麻薬も毒と同じだから効かないとは思うが万が一無効化されなかったらと思うと飲まなくて良かったとも思う。
「皆、今日ここで話した内容は当たり前だが他言無用だ。そして、一時国に出回ってる麻酔薬も全て回収し今一度検閲しよう。あ、アリアローズ嬢。昨日の麻酔薬も没収ねっ」
「ええぇ、ニースベル殿下嘘ですよね!!まだ使って無いのに…ひ、酷いですー」
折角カインザークに買ってもらったのに使う前に没収とは…効力を試す為に昨日使っておくべきだったかと後悔するが既に遅かった。
「気になったのですが、この麻痺薬は毒として無効化されるならアリアの持っているという麻痺薬も毒として無効化されませんの?」
セリーヌが思った事はどうやらこの場にいる全員も思ったらしくうんうんと相槌を打っていた。
「あぁ、それは多分大丈夫かと。原理は分からないけど薬としての成分は効果あるみたいで、昔草むしり中にキラービーに刺された時があってその時に麻痺直しを使ったんですがちゃんと効果ありましたから」
…
あれ?何故皆んな無言なのだろう
「令嬢が草むしり…」
「アリア貴方って…」
「ははっ、アリア嬢は期待を裏切ら無いなっ」
1人は笑を堪えているが、他の3人のアリアローズを見る目が生暖かい…
「もぉ何ですか皆さんして!!仕方ないんですよ、昔は今より貧困してましたし令嬢も草むしりくらいするんですー」
カインザークは憤慨したアリアローズを見て遂に笑いを堪えなくなり吹き出している。
全く皆んなして失礼しちゃいますね。
「セリーヌこの中身嗅いでも良いですか?」
万が一液体を嗅いで反応が出たり誤って飲んだりしてもアリアローズであれば毒無効化スキルがある。痺れたり麻痺は一時的にするかも知れないが時間が経てば無効化されるから問題ないだろう。
蓋を開けて匂いを嗅いでみる。
うん、やっぱりこの匂いは昨日買ってもらった麻酔薬とほぼ同じ原材料だ。一つ違いがあるとすれば…
「これ、ババロン樹木の根っこが入ってますね」
「何だと!ババロンの根だと?!」
ババロン樹木の根っこはどの国でも毒物指定になっている程強い神経麻痺作用が含まれている。なのでその根っこを使っての生成は禁止されており勿論犯罪だ。
「カブレラ嬢、これはどこで手に入れたのですか?」
確かに、セリーヌはどこから入手したのだろうか。そこから足がつけば生成した犯罪者を捕まえられると考えたのだろう。
だが、残念ながらセリーヌも正確な入手経路はわからないらしい。ならこの瓶は何処から持ってきたのか尋ねるとハウズ伯爵邸の隠し部屋で見つけたそうだ。
何故伯爵邸の隠し部屋などに入れたのかはあえて聞かない事にしよう…
「はぁ、そこまで調べられるとは流石カブレラ侯爵家ですね。今でもその情報力は健在しているとは王家としては心強いですね」
恐れ入りますとニースベルの言葉にセリーヌは頭を下げる。
きっとカブレラ家には特別な何かがあるのだろうが聞いて良いのか分からないし今は黙っておく事にしよう。
「ところでアリア嬢体調は?問題ないのか」
そう言われれば、特に変わった事はない。
効果も知らなければ解決策もない、なら飲んでみよう。
「馬鹿っ、何してる!!」
瓶を口に近づけようとしたが流石にカインザークに怒られて止められた。
少しくらいなら体内に入っても大丈夫だと思うのに、そんなに怒らなくても良いではないか…
「まあまあ、今のはアリアローズ嬢が悪いかな。毒無効化があるとはいえ自分を実験台にするのはいけないよ。治癒魔法が自分に効かないのと同じで何が適用されないか分からないからね」
「アリア治癒魔法は自分に効かないのですか!?いえ、今は違いますね。後で聞かせてください。それで皆様、こんな時の為にコレを用意しました」
セリーヌの一声で連れてこられたのは幼鳥のフィヨルバードだった。
以前授業で使ったのを1匹借りてきたらしい。
そして、注射器に麻酔薬を入れると幼鳥に投薬した。
「変わりありませんね」
特に見た目変化してはしていない様だ。
「アリアこのフィヨルバードに生成した葉っぱでもいいのでぶつけて見て下さい」
わかったと言われた通りに葉っぱを生成しフィヨルバード目掛けて投げた。
アリアローズの投げた葉っぱはフィヨルバードにばさっと被さり幼鳥はそのまま葉の下でバサバサともがいていた。
「葉っぱが…無効化されないですね」
「これが麻酔薬の効果か…」
どうやらこの麻酔薬は神経麻痺を引き起こし魔力を感じる器官が狂うようだ。
「そう、ミュゼリア様はこの麻酔薬を打ったフィヨルバードを手引きしたそうです。そしてこれを入手した場所は…セクタールだと伯爵が話していたのを聞いたと言う事ですわ」
「ふむ、これは調べてみないとですね」
真剣な表情でランティスが瓶を保管する為に回収した。
確かに、この麻酔薬は脳や感覚に麻痺を引き起こす様だ。麻痺作用により服用すれば嫌なことを忘れたり快楽を得たり出来るだろうが効果が切れた時にまたその感覚が欲しくなり手を出さずにはいられ無い。そしてそれを繰り返せばいずれババロンの多量摂取により死に至るだろう。まさに麻薬そのものだ。
アリアローズからしたら麻薬も毒と同じだから効かないとは思うが万が一無効化されなかったらと思うと飲まなくて良かったとも思う。
「皆、今日ここで話した内容は当たり前だが他言無用だ。そして、一時国に出回ってる麻酔薬も全て回収し今一度検閲しよう。あ、アリアローズ嬢。昨日の麻酔薬も没収ねっ」
「ええぇ、ニースベル殿下嘘ですよね!!まだ使って無いのに…ひ、酷いですー」
折角カインザークに買ってもらったのに使う前に没収とは…効力を試す為に昨日使っておくべきだったかと後悔するが既に遅かった。
「気になったのですが、この麻痺薬は毒として無効化されるならアリアの持っているという麻痺薬も毒として無効化されませんの?」
セリーヌが思った事はどうやらこの場にいる全員も思ったらしくうんうんと相槌を打っていた。
「あぁ、それは多分大丈夫かと。原理は分からないけど薬としての成分は効果あるみたいで、昔草むしり中にキラービーに刺された時があってその時に麻痺直しを使ったんですがちゃんと効果ありましたから」
…
あれ?何故皆んな無言なのだろう
「令嬢が草むしり…」
「アリア貴方って…」
「ははっ、アリア嬢は期待を裏切ら無いなっ」
1人は笑を堪えているが、他の3人のアリアローズを見る目が生暖かい…
「もぉ何ですか皆さんして!!仕方ないんですよ、昔は今より貧困してましたし令嬢も草むしりくらいするんですー」
カインザークは憤慨したアリアローズを見て遂に笑いを堪えなくなり吹き出している。
全く皆んなして失礼しちゃいますね。
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