モブの筈がモブじゃない〜乙女ゲームの世界ではモブだったはずなのに全然モブじゃありません〜

第二章

一時帰宅

「アリア、無事進級おめでとう。色々あったらしいね。僕がいない間大丈夫だったかい？まさか僕の出番がないとは思わなかったけどねー」

あはは。と空笑いをする兄のレイモンドと一緒に馬車に揺られ帰宅途中であった。

「ほ、本当にお兄様の存在を忘れていました…いつお帰りになったんですかー？」

あはは、とアリアローズも空笑いで答える。

あれだけ入学前は助けて貰おうと思っていたのに実際に学園ではほとんど合うことはなかった。
何故なら兄は初めの数日は初等部で過ごしていたが、学園の優秀者として留学という形で国外へ勉強に出ていたからだ。勿論兄も希望したので直ぐに出発した為アリアローズは挨拶程度しか出来ていなかった。

「昨日帰宅してね。疲れてたから夜会には出ずに寝てしまったよ。アリアはどうやら活躍したようだね…でも！」

口調が急に強まりじろっと睨んできた。
あー、これ怒ってるやつだ…

「毒を飲むなんて無茶はいけない！！いくらあの力のお陰で毒無効化能力があるとはいえ毒でなかったら死んでたかもしれないだろ！それにその力がばれたりしたらどうするんだ！」

「う、それはごめんなさいお兄様。私の不注意でした。それと、あの、、実は…」

本気で心配してくれてる兄には申し訳ないと思うが、アリアローズは治癒魔法が両殿下と友達のセリーヌにばれてしまっている事などを掻い摘んで話した。

「はあ、全く何て不注意なのか…僕が側にいたら違ったのかもしれない…あーやっぱり留学しなければよかったー！！」

そ、そんな事ないとは言えない雰囲気にアリアローズはそっと兄に障らない様に窓の外に目をやった。



「「お帰りなさいレイモンド様アリアローズ様」」」

2人のみのレネティシス家の執事とメイドが出迎えてくれた。
やっと帰ってきた我が家。一年離れていただけなのになんだかとっても懐かしい。

「お帰りなさい。さあ、部屋で身支度を整えてサロンへいらっしゃい。留学や学園でのお話を聞かせて頂戴」

母は待ってましたとばかりに急かしてくる。
何かおかしい…

簡単に身支度を整えサロンへ向かうと既に兄は座って父と母に他国について色々説明しているようだった。
そろっと入り兄の隣へ腰かけると目の前にティーカップが置かれる。
いつも通りレネティシス家で飲んでいたお茶にやっと帰ってきた実感が湧いてきた。
お茶に舌鼓を打っていると兄の話が終わったのかアリアローズへと話が振られた。

「アリアもお帰り。学園では、、色々あったそうだな…」

あれ？これデジャブかな…
さっき馬車の中でもあったよう気がする…

思ったのも束の間、父に兄と同じ内容で怒られた。

「す、すみません。お父様と約束したのに破ってしまいました」

しゅんと下を向くと大丈夫と兄に頭を撫でられた。さっきは貴方が同じ事で怒ったくせにーとは言えない。

「それで。お父様どうやらアリアの力を両殿下とカブレラ侯爵令嬢が知ってしまった様です」

アリアは思わず顔を上げた。
それ今言ったら余計怒られるやつですよ！そしてそれをお兄様が伝えては駄目では？！

「ああ、そういう事か…」

そういう事とは？そして怒られない！！

父は執事のバトラーに目配せをすると一通の手紙を持ってきた。手紙を手に取り皆んなに見えるように封蝋をこちらに向ける。
その封蝋は誰もが知っている2匹の獅子に太陽の紋様。間違いない王家の紋様だ。

「王妃様からお茶会の誘いだ。アリアローズ宛にな」