モブの筈がモブじゃない〜乙女ゲームの世界ではモブだったはずなのに全然モブじゃありません〜

あかとんぼ

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第1章

令嬢は必死です

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その後の学園はなんとも殺気だっていたような気がした、特に女子生徒だけだが。

教師や生徒会へのアピール、家格のアピール、いかに優れた令嬢なのかやらやら。
特に乙女決定戦レディーディバイバルに興味のないアリアローズからしたら皆んな頑張ってるなぁと思うくらいだった。
それにいつもならティータイムにちゃっかり参加しているカインザーク殿下もこの時ばかりは御令嬢に捕まり対応している為とても平和なティータイムをセリーヌと過ごしている。
それにしても

「本当皆さん必死ですね」

「それはそうよ、爵位の低い方々からしたら殿下とお近づきになれる絶好のチャンスなのですから。貴方くらいよ、興味のない男爵令嬢なんて。それに…」

「それに?」

「聖ランドネルに選ばれることが出来れば家名をあげるチャンスですわ」

何!?
それは盲点でした!家名をあげれるのなら全力でやらないと!!

「セリーヌ本当に家名をあげれるのね!?」

「ええ、殿下の妃候補にもなれますし溢れたとしても高爵位の方から縁談も頂けるそうですよ」

含み気に笑うセリーヌを前にアリアローズは野心で心を躍らせていた。

そうよね、選出は決まっているのだし優勝しないでも人目にはつくのよね。
それならいいわやってやる!!そして未来の高待遇旦那様を見つけて見せる!!

メラメラと闘志を燃やすアリアローズを穏やかな笑顔で眺めるセリーヌだった。



「貴方!この様な場所でなんてはしたないのかしら!!その汚らしい物をわたくしの前に持ち込まないで!」

また始まった。
パンドラ乙女の悪役令嬢は今日も絶好調の様だ。そしてこのスチルは見た事がある。

リリアンヌが手作りクッキーをティータイムに持ち込んでいるのを目障りと言ってリザベラが虐めるのよね。
でもそのクッキーは実はニースベル殿下から頂いたクッキーで結局リザベラの方がニースベル殿下からの好感度を下げる事になるんだったかしら。
まぁ、私から言わせれば婚約者以外の女性にクッキーをあげている事自体どうかと思うが其処は乙女ゲーム。

「また始まりましたわね」

何も知らないセリーヌはティーカップに口をつけると横目で見ながら呆れた様に話す。
こう見えて侯爵令嬢であるセリーヌは余り権力に興味がない。誰が誰と関わろうが自分の家に関係が無ければ一切気にしないのだ。それがまたアリアローズには嬉しい所だった、でなければ男爵令嬢とこうしてティータイムを過ごしたり対等に話している事すら無かっただろう。

「あっ、もうそろそろ終わりそうですよ。ほらニースベル殿下が終息させてます」

丁度クッキーの件を話している所かな、リザベラ嬢が青い顔をして頭を下げているのが見える。
ふむ、やっぱり好感度はニースベル殿下が一番高いようね。でも他の攻略者の方々も周りにいるからいい感じに逆ハールートに進んでいるのかしら?

まっ、私には関係ないからね。
テーブルに向き直しお菓子を口にしようとするとスッっとお菓子がテーブルから消えた。
あれ?と思いお菓子を追うとそこにはリリアンヌがにっこり笑いながらお皿を持っていた。

「ご機嫌ようアリアローズ様、お席ご一緒しても?」

「リリアンヌ様ご機嫌よう。えっと…」

チラッとセリーヌを見てどうしようかと悩んだが、リリアンヌはカタンと皿をテーブルに置きセリーヌが居るのを素知らぬ顔で横に着席してきた。


「アリアローズ様以前話した事覚えてらっしゃいますか?あれからカインザーク殿下とお変わりないようですが?」

「カインザーク殿下とですか…そうですね、確かに変わりありませんね」

余りに唐突だったので少し冗談混じりに答えてみる。

「そうですか、なら余りカインザーク殿下に思わせぶりな態度はお辞めになって下さい。カインザーク殿下も困っておりましたわ」

ん?思わせぶりな態度ですか?それは…

「口を挟む様ですけど、殿下が困っているのなら来なければ良いだけの話し。リリアンヌ様がお伝えする様な事ではありませんわ」

沈黙を保っていたセリーヌが漸く口を開いたかと思ったら思いっきり牽制だった。

そうよね、セリーヌは知らないけれどもリリアンヌからしたらカインザーク殿下が居なければ逆ハールートには進めないし結構重要な所よね。

「リリアンヌ様、私とカインザーク殿下はお気にする様な関係ではございません。以前もお話しましたが入学当初に少し殿下のお怪我を治療した事に御恩を感じているのかと思います。殿下にももう気にしないで頂ければとお伝え下さい」

「ふーん、そうですか、分かりました殿下にはその様にお伝え致します。では私は失礼しますね」

何だか腑に落ちない様子だったがリリアンヌは席を立ちその場を後にした。


その後セリーヌは怒り奮闘だったがリリアンヌからしたら重要な確認だったし、肩を持つ訳ではないが一応セリーヌをなだめてその日は宿舎に帰宅した。
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