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第1章

迷子その後

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「あの、ニース兄様?このお姉ちゃんの魔法って何か良くない事なんですか?」

レントはアリアローズの方をチラッと見て真剣な顔をしてニースベルに尋ねる。

「いや、良くない訳ではないんだよ。そうだね、例えば瘴気や魔物から国を守ることの出来る光魔法が使える人を聖王や聖女とこの国では呼んで大切にしているんだけど、他国では光魔法より怪我や病気を治す魔法を重要視する国もあるんだ。アリアローズ嬢の魔法は怪我を治す事が出来るからまさに他国にとっては喉から手が出るほど欲しい力になりえるんだよ」

「そうなんですか。あっ、ならお姉ちゃんも聖女と同じように国に要人として扱って貰えばいいんじゃないですか?!」

「うーん、それは出来ないかな。いやしない方が彼女の為かもしれないね。何せ我が国で治癒魔法が使える人間は今だかつて一人としていなかったんだ。もし彼女が名乗り出て国が保護するとしたら国民にこの魔法を周知しなくてはいけない。そうなれば彼女はその力を国の為に使い、最悪他国へと力が知れ渡れば略奪だってあるかも知れないんだ。酷かも知れないがこのままアリアローズ嬢には力を隠し通して貰いたい訳さ」

「そうですか。その事はお姉ちゃんも知ってるんですか?」

「どうだろうね、、」

多分、いや絶対アリアローズ嬢は知らないだろう。治癒魔法がいかに貴重で問題なのかを…





カーンカーンカーンと本日の帰宅時刻を知らせる鐘がなる。

「わっ、もうこんな時間!!すみません殿下方、私先に失礼させて頂きます」

忘れてた。今日は宿舎に戻ったらセリーヌと待ち合わせをしているんだった。
何やら話があるって…何だろう?

ぺこっと頭を下げてアリアローズは宿舎へと帰ろうとした。

「あ、お姉ちゃん、ううん、アリア今日はありがとう!力の事は絶対秘密にするから!アリアも無闇に使っちゃダメだからねー!」

レントが片手をブンブン振りながらこちらを見送っている。王族にあるまじき挨拶の仕方だがそこはまだ子どもだから許されるのだろう。それに、ニッコリと笑いながら手を振る姿は誰もが許してしまうくらい可愛い姿だった。勿論アリア呼びも許しちゃう!

「レント殿下もまたお会いしましょうー」

思わずレント殿下につられて手を振りそうになってしまい恥ずかしそうに手を握って会釈した。
流石に淑女を目指そうとしてるのに手を振ったらダメよね…でもレント殿下が可愛すぎて思わず振り返してあげたくなっちゃったのよ!!

もう少しレント殿下の見送りを見ていたいけれどセリーヌとの約束もあるしそろそろ行かないと。
後ろ髪を引かれながらアリアローズは先に宿舎へと戻った。


「カイン、アリアローズ嬢の治癒魔法の事はいつから知っていたの?」

カインが下級貴族の御令嬢とティータイムを楽しんでるという事は皆が知っている。
それがアリアローズ嬢だと言うことも

「あぁ、入学式の辺りからかな。黙っていてすまなかった」

「と言う事はもしかして彼女が?」

「ああ、やっと見つけた。彼女に間違いない」

「そっか、、あの子が」

夕焼けにカインが照らされ頬を赤らめているかのように赤く映った。
2人はアリアローズが去った方を暫く見つめていた。

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