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第1章
はじまりは…
しおりを挟むしっかりするのよ、お願い目を開けて…
(お母様の声がする。
そうだ私起きないと…でも頭の中でもう1人の私が見える。
あれは…前の私…
そうだ、以前の私は突然の病気で19歳になる前に死んでしまったんだった。そして今は…)
「ア、アリアローズ!!良かった。目が覚めたのね」
「お母様私いったいどうしたんでしょうか?」
ここは、、私の部屋。見慣れたはずなのに何故か違和感を覚えるのは記憶を思い出したからだろうか。
「貴女覚えてないの?お友達を助けるために馬車の前に飛び出してそのまま気を失っていたのよ!!もう、本当に心配させないで…」
友達を助けた?
「ごめんなさいお母様。でも心配しないで、私はほら、元気ですよ」
元気元気と腕を上げてポーズをとってみた。
「アリア!!目を覚ましたのか!?」
勢いよく扉が開き父と兄が部屋に雪崩れ込んできた。
「お父様まで!!はい。この通り大丈夫です」
この時期は仕事が忙しく父と顔を合わせる事が少なかったのだが余程心配してくれたのだろう。
「お父様仕事がまだ途中ですし、アリアが心配なのは私も同じですが無事も確認出来ましたし、もう一度戻りましょう。」
どうやら目が覚めたと聞いて仕事も途中で来てくれたらしい。因みに、少し冷たい様だがこの兄レイモンドはアリアローズの事をとても大切に思っているのを知っているので突き放す様な言い方だが少しも気にならない。
よほど急ぎの用事があるのだろう。
「アリア、無事で何よりです。本当はもう少し様子を見たい所ですがお父様と領地の収穫高を確認に行かなくては行けませんし…とても名残惜しいですが、アリアはゆっくりと休んでいるんですよ。けっして無理はしたら駄目ですよ!」
さぁ、行きましょう。とレイモンドは離れ難そうにしている父を引き剥がし仕事へと向かった。
二人が出て行くとふと疑問に思う。
「あの、お母様…私お友達を助けたと言ってましたよね?その子は…どうなったのでしょうか?」
アリアローズは頭を打った衝撃で倒れたらしい。その時の事を余り覚えてない。
でも、私が怪我をしたと言うことはその子も何かしらの怪我をしたのかもしれない。
「それが、駆けつけた時には既にアリア1人だったのよ。でも、御者の言うにはお友達を庇ったって言ってたから…
そうね、人助けは立派だけどもう危ない事はしない事。いいわね!!」
普段優しい母の凄みはある意味怖い…
「はい…すみませんでした。
あのもう一つ聞いても?その、何故助けた人がお友達と思われたのでしょうか?」
「あぁそれね、御者が言うにはアリアが相手の子の名前を呼んで助けたらしいからお友達だと思ったそうよ」
一体誰だったのだろう?
その辺の記憶がハッキリと思い出せない。誰と居たのか、そしてその場所は何処なのかも…
きっと前世の記憶を思い出したせいで曖昧になってしまったのだろうと思いながらアリアローズは再び目を閉じた。
今の私はアリアローズ・レネティシス。親しい人からはアリアと呼ばれていて、家は建国当初より爵位を賜った由緒正しい家柄だが、領地の場所や商才の無さによりどんどん没落し今では男爵位でも下の下ら辺を彷徨っている。
家族は父と母、それに3歳年上の兄の4人家族。そして、執事のバトラーとメイドのクララ、それと料理人のジフの7人で暮らしている。
アリアの父と母は中々子供に恵まれなかった様で私たち兄妹をとても大切にしてくれている。
そして、兄は父の爵位を継ぐために今から父について領地の収め方を学ぶために忙しそうにしており素っ気ない態度だが、顔を合わせれば私の事をとても可愛がってくれる素敵な家族である。
「さあ、もう少し休みなさい。お父様達が帰ってきたらご飯にしましょう」
母はうとうとしているアリアローズに布団をかけ直すと部屋を後にした。
前世を思い出したからって何も変わらないけど…
私はこの家族を大切にしたい。
大人になったら貴族の定めによって結婚しなくてはいけないけれど、結婚相手は絶対にレネティシス家にとって有意な相手でないと!
せめてこれ以上貧困しない為にもと。
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